エディオン 白い靴下で家電を売る

エディオン 白い靴下で家電を売る
大阪市に本社がある家電量販店「エディオン」。西日本ではおなじみですが、全国で443の店舗を展開し、売り上げは1位のヤマダ電機、2位のビックカメラに次いで全国第3位を誇ります。ライバル店との統合を繰り返し、業績を拡大させてきましたが、実は地域密着・顧客第一主義が売りの熱い会社です。久保允誉社長に話を聞き、顧客を獲得する秘けつやこれからの家電量販店について話を聞きました。(大阪放送局記者 太田朗)

白い靴下が社内規則?

家電を配達するため顧客の自宅を訪れるエディオンの従業員。室内にあがるとき、彼らが必ず行うことがあります。それは白い靴下を履くこと。自分の靴下の上から白い靴下を履いたうえであがる、これが立派な社内規則です。しかも毎回、新品というから驚きです。きっかけは顧客から久保社長が直接受けた苦情でした。
久保社長
「新築の家を訪れたときに『社長さん、ちょうどいいときに来てくれた。午前中に冷蔵庫を配達してもらったのはいいんだけれども、これを見てください、廊下にこんなあぶら足の跡がある、どうしてくれるんですか』ということでえらい叱られまして。すぐにサービスセンターの所長に電話をして、『あすから白い靴下を2足サービスマンと配達マンに持たすようにしてくれ』と伝えました。当時、本社があった広島の靴下店の白い靴下が全部なくなったというぐらい(笑)」
エディオンという会社が誕生した2002年以降、18年にわたってトップを務めているのが久保充誉社長です。

多地域企業 エディオンとは

エディオンは少し複雑な会社です。広島、名古屋、大阪の家電量販店が次々と統合したことで今の姿になりました。広島の「デオデオ」と名古屋の「エイデン」が2002年に経営統合して「エディオン」に。その後、大阪の「ミドリ電化」の統合で、本社が大阪に移りました。さらに福井の「100満ボルト」や東京の「石丸電気」も加わり、“多国籍企業”ならぬ“多地域企業”なのです。
久保社長は「デオデオ」の前身の会社で父親を継いだ2代目の社長として、1992年に就任。ところが就任早々、困ったことが起きます。社員たちは創業者である父親のほうばかりを向いて、自分の言うことを聞いてくれなかったというのです。
久保社長
「役員会をやっても(役員たちは)お手並み拝見という感じで、私の意見を全然聞いてくれない。何か私が意見を言うと、『そういうことはもう少し状況が分かってから言ったほうがいい』とか、結構厳しいことを言うんですよ。これは私がいくら意見を言ってもだめだ、お店を回ってお客様の声として話をしよう、お客様の声を私のことばに変えて話をしました」

お客様が最高のコンサルタント

社長でありながら、久保さんは半年間で顧客の家を500軒訪問し、生の声を聞き続けました。そこから生まれたアイデアの1つが、“白い靴下戦略”だったのです。顧客からの声をもとに指針をつくり、各店舗を回って「こういう店が望まれている」と具体例を出して改善を求めたところ、業績が向上していったといいます。久保さんは「お客様が最高のコンサルタントであると思いましたね」と当時を振り返ります。

アメリカにならった店舗戦略

店舗づくりで参考にしたのは、アメリカの小売業です。

久保社長が就任した1990年代前半は、法律で大規模な店舗の出店が規制されていた時代。しかし、いずれは外資の小売店も上陸し、大型店舗が主流になると予測した久保社長。将来を見据えていち早く海外の先進的な店舗戦略を取り入れようと考えました。
久保社長
「『ウォルマート』や『ベスト・バイ』、『ターゲット』の店舗を視察してきました。われわれにない商品の見せ方や売り場づくりというのを学んできたんです。当時の日本の店舗では店内で展示している商品の下に在庫を置いていなかったんです。ほとんどは別の場所にある倉庫に置いてあって、お客さんから頼まれたら走って行って取ってくるやり方でした。アメリカの家電の専門店は、その当時から店内に在庫を置く手法を取り入れていました。利用客の利便性が上がることに加えて、従業員の人数を減らして効率的な店舗運営も可能になるわけです」
アメリカ型の利便性と効率性の追求という店舗戦略は今につながっています。

郊外型が主力

また、アメリカでの視察で久保さんの目に印象深く映ったのが、郊外の幹線道路沿いにあるショッピングモールでした。地域で暮らす家族連れが車で訪れ、家電だけでなく、インテリア雑貨や衣類を買っていく。家族の幸せと地域密着が脳裏に焼き付いたといいます。
この影響を色濃く受け、久保さんは郊外型の店舗展開に一層力を入れていきました。売り上げが業界3位の大手となった現在も、都心部でライバル店との価格競争を繰り広げて消耗するのではなく、サービスの質を売りに地域の顧客との長いつきあいを重視する戦略をとっています。

家電を軸にリフォーム事業へ

顧客の自宅に赴き耳を傾けることを重視してきた久保さん。今、力を入れているのは住宅リフォーム事業です。
久保社長
「われわれは冷蔵庫を販売したりとか、洗濯機を販売する中でお客様にいろいろな次の新しい提案ができます。だからリフォーム事業は家電にとってみたら大きなビジネスチャンスになるんじゃないかと思います。人口減少社会で家電の市場は縮小していきますが、互いに相乗効果がある事業に力を入れて拡大していきたい」
今、リフォームの売り上げランキングでは専業の会社に割って入り、全国トップ10に食い込むほどに成長しました。

基本を続けることの大切さ

久保さんは修行を積んだ僧侶から贈られたことばを今も大切にしています。世の中でいちばん難しいことは何かと尋ねたら「毎朝同じ時間に草花に水をやり続けることだ」と説かれたそうです。基本的なことを毎日やり続けることの重要さと難しさ。顧客目線という基本を忘れないよう、久保さんの大切なことばになっています。

新型コロナウイルスの影響で人々の生活が大きく変化するなか、家電量販店はどうあるべきか。顧客の声と向き合い続けています。
大阪放送局記者
太田 朗
平成24年入局
神戸局を経て大阪局で経済担当流通・小売り業界など幅広く取材