ウィズコロナのスポーツ大会 感染防止で試行錯誤続く

ウィズコロナのスポーツ大会 感染防止で試行錯誤続く
新型コロナウイルスによる影響が続く中、各スポーツの現場では感染の拡大を防ぐためさまざまな対策が行われています。

陸上大会 徹底した感染防止の呼びかけ

今月、およそ3か月ぶりに再開された陸上の大会では、オリンピック本番に向けた大会のモデルケースになり得るとしてさまざまな感染対策の試行錯誤が行われました。

舞台となったのは、北海道の各地で今月4回にわたって行われた中長距離の大会です。東京オリンピックのマラソン代表の内定選手などトップ選手が出場しました。

コロナ対策を担当した日本陸上競技連盟の河野匡長距離・マラソンディレクターたちが試みたのは、選手や観客の密集を徹底して避ける工夫です。

その手始めが出場選手の数を絞り込むこと。これまで1つのレースに多い時には40人ほどの選手が出場していましたが、今回は25人以内に制限し、1つの大会全体でも上限を300人に絞りました。

また、レースでは通常、スタート前に選手を1か所に一斉に集める「招集」をとりやめ、スタートの5分前までに順次、自主的に集まるよう呼びかけました。

そして、フィニッシュの直後にとられた対策は、選手たちにとっては過酷なものとなりました。

最長で10000メートルを走り切り、フィニッシュラインを全力で駆け抜けた選手たちを待ち受けていたのは、歓喜の声ではなく河野さんたち競技役員の厳しい声でした。
「止まらないで歩く!」
「密にならないように近づかないで!」
「向こうの看板から出てここには残らないで!」

息を切らした選手たちの感染を防止するため、選手どうしが近づきすぎないよう徹底した注意の呼びかけが行われたのです。

選手たちは倒れ込みそうになりながらも、係員から手助けを受けることもできず、顔をゆがめ、脇腹を押さえながら懸命にレーンの外まで歩いていました。

選手の取材対応も前例のないかたちがとられました。通常はレースのあとミックスゾーンと呼ばれる取材エリアで大勢の記者やカメラマンが選手を取り囲んでインタビューが行われます。

しかし、今回、取材エリアで目についたのは1台のパソコンでした。

レースを終えた選手たちは代表取材に応じた後、パソコンの前に座り自分でイヤホンを耳につけます。そして、競技場の別の場所にいる各社の記者からパソコンの画面を通してオンラインで質問を受けました。

それでも許された取材時間はわずか5分。選手が同じ場所にとどまる時間を少しでも減らそうというのです。

さらに観客の感染対策も試みられました。後半2回の大会は観客を入れて行われましたが、入場が認められたのは北海道在住の人のみで最大300人。観客にはマスクの着用を義務づけ、入場前は2メートルの間隔を空けて待つことが求められました。

芝生席には2メートル四方のますが描かれ、その中に1人だけが入って観戦するよう求め、声を出す応援が禁止され、拍手だけが認められました。

日本陸連の河野ディレクターは「開催にこぎつけるのは並大抵の準備ではできなかった。勇気あるチャレンジだと思っていたが、選手が生き生きと走っている姿を見て本当にやってよかったと率直に思っている」と振り返りました。

そのうえで「ウイルス対策に100点はなくどこまでやっても万全はないのでそのつど、そのつど、考え得るべき手は打ってきた。今後も基本的なことだが3密を避けるために大会に関わるすべての人に感染はなぜ起きるのかを知ってもらい行動してもらうことが大切で、開催する側はその環境をしっかり作っていくことに尽きる」と話していました。

「3密」リスクをどう減らすか 競泳大会では

新型コロナウイルスによる影響が続く中、徐々に再開されている各競技の競技会や大会で最も重視されている対策がいわゆる「3密」になるリスクをどのように減らすかです。

今月12日に静岡県で行われた小学生から高校生が参加した競泳の記録会は、開催場所を静岡市と浜松市に分散することで選手や運営スタッフが会場に密集することを避ける対策が取られました。

それぞれの会場では午前に女子のレース、午後に男子のレースと競技の時間帯も分けたことで、記録会を主催した静岡県スイミングクラブ協会によると、一度に会場にいる選手の数を通常の4分の1程度となるおよそ200人に抑えられたということです。

ただ、選手どうしが密集することを避けるため男子は更衣室の利用が禁止され、選手たちはプールサイドや観客席に設けられたスペースでの着替えを余儀なくされました。

また、湿度の高い屋内プールにもかかわらず、泳ぐとき以外は極力マスクを着用するように指示があったため、選手がマスクをつけた状態でレース直前の招集所に集まるなどふだんの大会にはない様子も見られました。

高校2年生の男子選手は「マスクはすごく暑かったし、消毒なども含めて競技以外に注意を払わないといけなかった。これまではレースだけに集中できていたが、全然違う感じがした」と話していました。

記録会に参加した静岡市内のスイミングクラブでは選手の送迎の際にも密にならないように換気のためにバスの窓を開けたうえで、選手どうしを間隔をあけて着席させるなどの配慮をしていました。

このスイミングクラブでは今回は男女の競技の時間が分かれていたため2台のバスで所属する選手を送迎することができましたが、スイミングクラブのコーチからは「今後も選手が座席をあけて座るのであればバスの台数を増やさざるを得なくなると思う」と新たな対応が必要となることを懸念する声が聞かれました。

静岡県スイミングクラブ協会の清渉安全水泳委員長は「プールの中はそれほど不安はなかったが、陸上の部分については神経を使った。試行錯誤の中で何が正解かわからないところもあって、とにかく無事に終えることだけを考えた」と話していました。