広がる抗議デモ 「差別」を考える

広がる抗議デモ 「差別」を考える
世界に広がっている、人種差別に抗議するデモ。ことし5月、アメリカで、黒人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけに、人種や世代を超えたうねりとなっています。今回は、この「差別」について考えていきます。

問題に挑戦!

今回の問題は、先生と生徒がオリンピックについて話すやり取りの中から出題されています。
「先生:1968年のメキシコシティ大会では、アメリカの黒人選手が表彰台の上で黒手袋をした腕を高く突き上げ、人種差別反対を世界に訴えたこともあった」
これに対して生徒は、
「世界の人々に訴えようとしたのかな?」
「選手生命をかけた抗議だったんだろうね」
などと反応しています。
このやり取りを読んだうえでの問題がこちらです。
問題
「第二次世界大戦後のアメリカで黒人差別とたたかい、最後には暗殺された、『私には夢がある』の演説で有名な人物を次のア~エから1つ選びなさい。」
ア マンデラ
イ キング
ウ ガンジー
エ スーチー
(開成中学校 2018年改題)
この方は、以前このコーナーで紹介したこともあります。わかりますか?
答えは、「イ」の「キング牧師」です。ただこの問題、学習塾の先生によりますと、単に答えの知識だけではなく、その背景を理解して、今の自分と関連づけて考えることができるかどうかが大切だと言います。キング牧師の時代を振り返りながら、考えていきましょう。

キング牧師が生きた時代

時は1963年。アメリカの首都ワシントンでは、全米から25万人が集まったと言われる大規模な集会が開かれました。人々が求めたのは、黒人に対する人種差別の撤廃。当時アメリカでは、黒人が公共の場所で白人と同席することを禁じたり、黒人の投票の権利を制限したりする差別が公然とまかり通っていたのです。
こうした差別撤廃を求める運動の大きなきっかけは、一人の黒人女性の逮捕でした。ローザ・パークスさん。彼女が逮捕された理由は、「白人にバスの席を譲ることを拒否した」というものだったのです。ワシントンでの集会で、キング牧師は、こう語りました。
キング牧師
「私には夢がある。私の幼い子どもたちが肌の色ではなく、人格によって評価される国に暮らすという夢だ」
このキング牧師らの運動によって、アメリカでは公共施設での人種差別を禁じる「公民権法」などが制定されました。しかし、キング牧師は、演説の5年後、白人の男が放った銃弾によって暗殺されました。

黒手袋の拳に込めた思い

問題に出てきたメキシコオリンピックは、実はそのキング牧師が亡くなった年に開催されたものです。陸上男子200メートルで金メダルと銅メダルを獲得したアメリカの2人の選手が、表彰台で、ある行動を取りました。黒い手袋をはめた拳を、高々と、空へ。アメリカで依然として続く人種差別に抗議する行動でした。

差別に気づけるか

学習塾で社会を教える瀬川理さんは、この問題には、歴史をきっかけに、いまの社会問題についても考えてほしいという出題意図があるのではないかと言います。
瀬川さん
「キング牧師を選ぶということだけを切り取れば、この問題はそれほど難しくはないと思われます。知識としては、たぶんきちんとあるのではないか。それがただの知識で終わるのか、自分自身のこと、あるいはいま起こっている時事問題みたいな形で身近にとらえられるのか。差別というのは別に人種差別だけではなくて、例えばLGBTとか男女差別、あるいは職業とか住んでいる場所とか、いろいろなものがあります。つい自分たちと同じ仲間というので線引きしてしまって、その外側にいる人に対して攻撃してしまう。そうではなくて、知的にきちんと頭で理解して、それはよくないんだと認識することが必要です」

相手の立場に立って考える

瀬川さんは、「差別」について考えるうえでの2つのキーワードを教えてくれました。一つは、「シンパシー」=共感すること。もう一つが「エンパシー」。相手の立場に立って考える力です。アメリカの人種差別について、異なる状況に身を置く日本の子どもたちが自分のこととしてシンパシー=「共感」するのは、簡単ではないかもしれません。そこで重要なのが、「エンパシー」だと言うのです。
瀬川さん
「共感できないから拒絶反応するのではなくて、相手の立場に立って考える。そういう知的な行動を伴うという意味が、『エンパシー』にはあるのではないかと思います。相手の置かれてきた立場をまず理解しようと、そのうえで解決策を探っていくことが求められているのではないでしょうか」
「人種差別」の問題だけではなく、私たちの身の回りにあるさまざまな「差別」に気付き、少しでも相手のことを理解しようとする努力を続けることが大事です。
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