都内の感染 “最も深刻”を継続 医療現場の状況に強い危機感

都内の感染 “最も深刻”を継続 医療現場の状況に強い危機感
東京都は、新型コロナウイルスの感染状況などについて分析・評価する会議を開き、現在の都内の感染状況について、「感染が拡大していると思われる」として、先週に続き、4段階ある警戒のレベルのうち最も深刻な表現としました。また、専門家は都内の医療現場について、「対応の長期化でひっ迫している」などとして強い危機感を示しました。
東京都は22日午後、都内の感染状況と医療提供体制を分析・評価する「モニタリング会議」を開きました。

この中で、21日までの1週間の平均で
▽新たな感染の確認が前の週のおよそ1.4倍の232.4人となり、緊急事態宣言が出されていた期間中の最大値を超えたほか、
▽感染経路がわからない人も122.3人で、前の週の1.6倍近くに増えていることなどが報告されました。

こうした状況を踏まえ、都内の感染状況について「感染が拡大していると思われる」として、先週に続き、4段階あるレベルのうち最も深刻な表現としました。

専門家からは、感染が中高年層にも広がっているほか、感染経路も夜の繁華街の関係者にとどまらず、施設や家庭、職場内など多岐にわたっていると指摘されました。
一方、「医療提供体制」については、21日の時点で
▽入院患者が949人と先週のおよそ1.4倍に増えたほか、
▽重症の患者は14人と先週から倍増し、増加の兆しがみられると報告されました。

そして、4段階あるレベルのうち先週に続いて上から2番目の「体制強化が必要であると思われる」となりました。

専門家は「何とか上から2番目でふんばっている状況だが、対応の長期化で医療現場はひっ迫している。医療提供体制が大丈夫だから遊びましょう、旅をしましょうという根拠に使われないことをせつに願う」と述べ、強い危機感を示しました。

また、小池知事は「高齢者に拡大させないために、戦略的な対応が必要だと改めて痛感した。厳しい局面ではあるが、この連休中は医療現場が厳しい状況にあることを踏まえてしっかり対応したい」と述べました。

感染状況について

都内の感染状況について、先週に引き続き4段階ある警戒レベルのうち、最も深刻な表現とした理由について、専門家は新たな感染の確認と感染経路が分からない人が増えていることなどをあげました。

このうち、新たな感染の確認は、21日までの1週間の平均で232.4人となり、前の週のおよそ1.4倍となりました。

年齢別では、20日までの1週間で20代が45.5%、30代が21.7%で、合わせて7割近くを占める一方、40代以上は前の週から3ポイントほど増えて28.5%となり、中高年層に感染が広がっていると指摘されました。

また感染経路は、近い距離での接客を伴い夜間、営業する飲食店だけでなく、高齢者などの福祉施設、同居する家族や職場、会食など多岐にわたっていると説明されました。

さらに最近は、家族内で高齢者に感染させているケースもあると指摘されました。

地域ごとの感染状況では、23区内の新宿区や世田谷区などが多い一方で、隣接する区や多摩地域にも広がっていると説明されました。

また、感染経路が分からない人は、21日までの1週間の平均で122.3人で前の週の1.6倍近くに増え、このままのペースで4週間増え続けると、今のおよそ5倍の1日当たり610人程度となり、さらに4週間続くと現在のおよそ25倍になると指摘しています。

医療提供体制について

都内の医療提供体制について、専門家は、重症患者の数に増加の兆しが見られるなどと指摘しました。

医療提供体制のうち、検査における陽性率は、このところ緩やかに増加していて、21日までの1週間の平均は6.5%と、前の週より0.4ポイント上昇しています。

入院患者は21日の時点で949人で、1週間前のおよそ1.4倍に増えています。

保健所が入院患者の受け入れの調整をするにあたり、管内の病院で受け入れ先が見つからず、都に調整を依頼する件数は、20日までの1週間のうち、最も多い日で100件となり、前の週の最も多い日の2倍になりました。

専門家は、入院の調整に「非常に困難が生じている」と指摘しました。

また、20日までの1週間で感染が確認された人のうち無症状の人が全体の15%程度を占めていて、引き続き、早急かつ大規模に宿泊療養施設の確保が必要だと説明しました。

重症の患者は14人と先週から倍増し、増加の兆しがみられると報告され、リスクの高い高齢者のほか40代や50代の患者もいるとして、今後の推移に警戒が必要だとしています。

出席した専門家「医療は本当にひっ迫し 疲弊している」

都のモニタリング会議に専門家として出席した杏林大学医学部の山口芳裕教授は、現在の都内の医療現場の状況について「対応の長期化で医療は本当にひっ迫し、疲弊している」と指摘して、強い危機感を示しました。

この中で山口教授は、新型コロナウイルスに感染した患者用の病床の確保について「すでに入院している患者を移動させるなど病床のレイアウトの変更や、医療従事者のシフトの組み替え、院内の感染防護対策の徹底など受け入れの体制を整えることは大変な作業だ。病床を確保するために2週間以上の時間が必要だ」と述べました。

さらに「病床が確保されているということが、患者が入院できるということではない。新型コロナの患者の入院や退院には通常の患者よりも多くの手間とマンパワーが必要である。対応の長期化で医療は本当にひっ迫し、疲弊している」と指摘して、強い危機感を示しました。

そのうえで「国のリーダーが言っている『東京の医療はひっ迫していない』というのは誤りだ。医療体制がひっ迫していないから遊びましょう、旅をしましょうと言うことがこれだけ疲弊している現場の医療従事者にどういうふうに響くか、想像力を持っていただきたい」と指摘しました。

さらに「医療従事者は、給料が減ったり、ボーナスが未払いになったり、いろんな思いを抱えながらもなんとかしようと努力している。都民もできるだけ感染者を出さないようにしていただき、お互いの信頼関係があってこそこの波を乗り越えられると思う」と述べました。

現在の状況は「第2波」なのか

モニタリング会議では、都の幹部から専門家に対して、現在の状況が「第2波」という認識かどうか、見解を聞く質問が出ました。

これに対して国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「現状で第2波と言われるような患者の爆発的な増加が起きているかどうか非常に判断が難しいが、患者が減っていると言える要素はない。いまが第2波だとしても対応できているという構えや、そのための準備が必要だ」と述べました。

一方、杏林大学医学部の山口芳裕教授は「第2波かどうかわからないが、今は少なくともそういう心構えで、皆で乗り切ろうという姿勢を発信してもらいたいと現場は思っている」と述べました。