尖閣諸島沖合 中国海警局の船が100日連続航行 最長に

尖閣諸島沖合 中国海警局の船が100日連続航行 最長に
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沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船が日本の領海のすぐ外側の接続水域を航行していて、接続水域内の航行は、22日で100日連続となりました。これは日本政府が尖閣諸島を国有化して以降、最も長く、海上保安本部が警戒を続けています。
第11管区海上保安本部によりますと、沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船4隻が日本の領海のすぐ外側にある接続水域を航行しています。

4隻は、22日午後3時現在、尖閣諸島の久場島の北東およそ39キロから東北東およそ41キロを航行しているということです。

尖閣諸島の沖合では、中国海警局の船がことし4月14日以降、22日で100日連続で接続水域内を航行していて、これは日本政府が8年前に尖閣諸島を国有化して以降、最も長くなっています。

また、この間には、領海に侵入して操業中の日本の漁船に接近する動きを繰り返すなどしていて、海上保安本部が領海に近づかないよう警告と監視を続けています。

官房長官「極めて深刻 きぜんとした態度で冷静に対応」

菅官房長官は、午前の記者会見で、「中国側による活動が継続していることは極めて深刻に考えており、中国側に対し、現場海域での海上保安庁の巡視船による警告のほか、外交ルートを通じて繰り返し厳重抗議をしている」と述べました。

そのうえで、「政府としては、領土、領海、領空は断固として守るという方針のもとに、引き続き、緊張感をもって、関係省庁と連携して情報収集に努めつつ、尖閣諸島周辺の警戒に万全を尽くしていきたい。同時に、中国側に対しては、引き続き、きぜんとした態度で冷静に対応していきたい」と述べました。

米国務省「尖閣諸島は日本の施政下」

アメリカ国務省の報道担当者は21日、NHKの取材に対し、「われわれの立場は変わらない。アメリカは尖閣諸島が日本の施政下にあり、日米安全保障条約第5条が日本の施政下にある領域に適用されると認識している」として、アメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用範囲だという立場は変わらないと強調しました。

日本政府 領有権の問題はそもそも存在しない

日本政府は沖縄県の尖閣諸島について、歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、現に日本はこれを有効に支配しているとして、尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないとしています。

尖閣諸島の周辺海域で中国海警局の船が日本の接続水域を航行した場合には、そのつど外交ルートを通じて申し入れを行い、領海に侵入した場合は、中国による一方的な現状変更の試みに厳重に抗議するとして、繰り返し退去要求を行っています。

そのうえで、日本政府は「東シナ海の安定なくして日中関係の真の改善はない」と、外交当局間などの協議を通じて日本の立場を主張するとともに、信頼醸成に向けて意思疎通を続けています。

軍の影響力を増す「中国海警局」

沖縄県の尖閣諸島の周辺海域で活動を活発化させている「中国海警局」は、ここ数年、機構改革などを重ねて軍の影響力を増し、体制を強化しています。

「中国海警局」は2013年の機構改革で、それまで複数の省庁に分散して行ってきた、海上での巡視活動にあたる組織を統合する形で誕生し、「国家海洋局」という政府組織に属していました。

その後、おととしの機構改革で、政府組織から軍の指揮下にある「武装警察」に編入され、トップに軍の出身者が就任したほか、人員や装備も増強したものとみられています。

さらに、先月の法改正では有事の際、軍の最高指導機関である「中央軍事委員会」か、その下部組織の「戦区」の指揮を受けると定められ、軍と同じ指揮系統のもとで一体的に運用することを明確化しました。

一連の機構改革などによって、中国海警局は軍との統合作戦運用能力を高め、軍隊に匹敵する性格を帯びるようになっています。

活動は長期的な国家戦略も

沖縄県の尖閣諸島周辺での中国の公船などの活動は、習近平指導部が描く長期的な国家戦略に基づいて進められているという見方もあります。

習近平国家主席は2017年の共産党大会で、来年の中国共産党創立100年を経て、中華人民共和国建国から100年となる2049年には「社会主義の現代化強国を築く」という目標を掲げました。

さらに「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を作り上げる」としていて、軍事力を含む国力を高め、アメリカを超える世界一の強国を目指しているとみられます。

同時に、海洋権益の確保やシーレーン=海上交通路の確保などを目的に「海洋強国」の建設を掲げ、海軍や空軍の装備を増強して遠方での展開能力の向上を図っています。

尖閣諸島は、中国が防衛ラインとみなし、太平洋と東シナ海を隔てる「第1列島線」のそばに位置することから、中国としては戦略的な観点からも、この海域での影響力を誇示し、領有権の主張を強めていくものとみられます。

中国 日本の実効支配を突き崩すねらいか

中国政府は沖縄県の尖閣諸島について「中国固有の領土だ」と主張し、日本政府が国有化した2012年9月以降、周辺海域での公船の活動を一気に活発化させ、接続水域での航行だけでなく、日本の領海への侵入を繰り返しています。

日中関係が改善に向かう中で、去年6月には、習近平国家主席の国賓としての日本訪問が合意されましたが、外交上の姿勢とは裏腹に尖閣諸島周辺での挑発的な動きを続けています。

ことし5月には、尖閣諸島沖の日本の領海に侵入した中国海警局の船が日本の漁船を追尾したほか、今月にも、一時、日本の漁船に接近しました。

これについて、中国外務省の報道官は「日本の漁船が中国の領海で違法に操業していたため、海域から出るよう求めた」と述べて、みずからの行動を正当化したうえで、逆に日本に対し「新たな争いごとを作り出さないよう求める」と一方的に主張しました。

さらに先月には、尖閣諸島周辺とみられる東シナ海の海底地形、合わせて50か所に名称をつけたと発表し、この中には中国が主張する「釣魚島」という呼称の一部を使った地名も含まれ、日本政府が中国側に強く抗議しています。

中国としては、尖閣諸島周辺での公船の活動を既成事実として積み重ねるとともに、パトロールや取締りと称した活動を繰り返して主権を行使しているかのようにアピールすることで、日本による実効支配を突き崩すねらいがあるものとみられます。

中国は去年、4年ぶりに発表した国防白書でも「島の海域でパトロールを行い主権を行使していく」と明記していて、みずからの領有権の主張については一切妥協しない姿勢を示しています。

中国の海洋進出に対抗する米

アメリカ政府は沖縄県の尖閣諸島について、日本の施政下にあり、アメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用範囲だという立場で一貫しています。

アメリカ政府のこうした立場は、トランプ政権になって以降も日米首脳会談などの場で確認されてきたほか、国務省は今月15日、NHKの取材に対し、尖閣諸島について「日本の施政下にあり、日本の施政下にある領域には日米安全保障条約第5条が適用されると認識している」とコメントしました。

また、エスパー国防長官は21日の講演で「中国の人民解放軍が、日本の施政下にある尖閣諸島の周辺水域に侵入する回数も時間も増えている」と述べ、中国の艦船が沖縄県の尖閣諸島の周辺で活動を活発化させているという認識を示し、警戒感をあらわにしました。

一方、南シナ海をめぐって、トランプ政権は、領有権争いの当事国どうしでの解決を促すとしてきた、これまでの立場を転換しました。

ポンペイオ国務長官は13日、中国が南シナ海のほぼ全域の権益を主張するのは「完全に違法だ」とする声明を発表。中国の違法な領有権の主張に対しては、フィリピンなど相手国の側を支援して対抗していく新たな方針を打ち出したのです。

アメリカが立場を転換した背景には、各国が新型コロナウイルスへの対応に追われるさなかにも、中国が南シナ海や東シナ海での軍事的な活動を活発化させているとの強い危機感があります。

中国海軍が今月上旬、南シナ海と東シナ海、それに黄海の3つの海域で、同じ時期に異例の軍事演習を実施したのに対し、アメリカ海軍も今月上旬、2隻の原子力空母を南シナ海に派遣し、軍事演習を実施。米中が同じ時期に同じ海域で大規模な軍事演習を実施するという異例の事態となりました。

さらに、アメリカ海軍は今月中旬にも再び南シナ海に2隻の原子力空母を派遣して軍事演習を実施しており、中国の海洋進出に対抗する姿勢を鮮明に打ち出しています。

中国船の活動に「執よう」の表現は初 防衛白書

防衛省は、ことしの防衛白書で、中国当局の船が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域で活発に活動している状況を取り上げ「力を背景とした一方的な現状変更の試みを執ように継続しており、事態をエスカレートさせる行動は全く容認できるものではない」としています。

尖閣諸島周辺での中国当局の船の活動をめぐって、防衛白書で「執よう」という表現が用いられたのは、ことしが初めてで、防衛省は「たび重なる抗議にもかかわらず、活動を繰り返している実態を反映させた」としています。

尖閣諸島周辺で主に活動している中国海警局の船には、海上保安庁が対応していますが、過去には中国の潜水艦やフリゲート艦が、領海のすぐ外側の接続水域を航行したこともあります。

一方、中国はことし、空母を沖縄本島と宮古島の間の海域で初めて往復させるなど、太平洋側への進出も強めていて、防衛省は護衛艦や航空機などによる警戒を強化しています。

中国公船のこれまでの動き

尖閣諸島の周辺海域における中国公船の動きをまとめました。

海上保安庁によりますと、日本政府が尖閣諸島を国有化した平成24年9月以降、尖閣諸島の沖合では、中国公船による接続水域での航行や領海侵入が頻繁に確認されています。

中国公船の接続水域での航行を年別に見てみると、平成24年が91日、平成25年は232日、平成26年は243日、平成27年は240日、平成28年は211日、平成29年は171日、平成30年は159日となっていて、平成27年からは減少傾向にありましたが、去年は一転して急増し、282日と過去最多となりました。

また、今回のケースを除くと、これまでの連続航行した日数で最も長かったのは、去年4月から6月にかけて続いた64日でした。

24時間体制で警戒・監視

中国が海洋進出を強める中、海上保安庁は体制を強化して警戒・監視を行っています。

尖閣諸島の周辺海域の警備を巡っては海上保安庁は大型の巡視船12隻を専従としているほか、複数の航空機も運用することで24時間体制で警戒・監視にあたっています。

また、海上保安庁では所有する船や職員も増やしています。

大型の巡視船は平成24年度の51隻から昨年度は67隻に増やしたほか、ことしの定員はおよそ1万4300人で、平成24年と比べると1600人ほど増えています。

中国は尖閣諸島以外でも領有権を主張

中国は沖縄県の尖閣諸島のほかにも、みずからの領有権を主張する動きを強め、周辺国との対立を深めています。

このうち、各国が領有権を争う南シナ海では、「九段線」と呼ぶ独自の境界線をもとに、ほぼ全域の管轄権を主張し、ことし4月には南沙諸島=英語名・スプラトリー諸島と西沙諸島=英語名・パラセル諸島などを、それぞれ管轄する新たな行政区を設置すると、一方的に発表しました。

また、南沙諸島では、岩礁を埋め立てて人工島を造成し、滑走路やレーダー設備など軍事関連の施設を整備するなど、実効支配を強めています。

こうした中、ベトナム政府によりますと、ことし4月から先月にかけてベトナムの漁船が中国海警局の船に沈没させられたり、中国の船に襲撃されたりする被害が相次いで起きているということです。

こうした動きを受けて、アメリカのポンペイオ国務長官は今月13日、声明を出し「中国の南シナ海のほぼ全域における海洋権益の主張は完全に違法だ」として、これまでの当事国どうしでの解決を促す立場から踏み込んで、中国への対抗姿勢を鮮明にしています。

また、これまで経済面での関係を重視して直接的な対立を避けてきたASEANの国々の間でも、中国への不信感から外交姿勢を転換する動きが顕著になっています。

このほか、中国とインドの国境地域にある係争地帯では、先月15日、双方の軍が衝突し、インド軍はインド側の20人が死亡したと発表しています。

中国はさらに、インドが影響力を持つブータンでも、東部にある野生生物保護区の領有権を主張していたことがわかり、周辺国の間で警戒感が強まっています。

台湾外交トップ「中国の現状変更に警戒」

台湾の呉※ショウ燮外交部長は22日、海外メディアを対象に記者会見を開きました。

台湾は、沖縄県の尖閣諸島について領有権を主張していますが、呉部長は、尖閣諸島周辺海域での中国公船の活動について「中国海警局の船が連続で100日間も入ったことは過去になく、もし日本の公船や漁業者が追い払われることになれば現状の変更となり、心配している」と警戒感を示しました。

また、呉部長は、中国軍機が先月、ほぼ連日にわたって台湾の空域に進入していたことを明らかにし、「中国は台湾周辺の現状も変えようとしている」として強い懸念を示しました。

そのうえで、尖閣諸島や台湾の周辺で活発化する中国の活動を念頭に「台湾と日本の運命は緊密に結び付いており、関係を促進しなければならない」と述べました。

※金へんに「りっとう」

中国外務省「島は中国固有の領土」

中国外務省の汪文斌報道官は22日の記者会見で「島は古くから中国固有の領土であり、中国海警局の船が周辺海域のパトロールを行うことは中国固有の権利だ」と述べ、従来の立場を改めて主張しました。

そのうえで、日本政府が繰り返し抗議していることについて「受け入れない」としたうえで、「両国は双方の共通認識にもとづいて、事態をエスカレートさせないようにすべきだ」と述べて、日本側に反論しました。

専門家「中国の最終目標は領有権を日本から奪うこと」

中国の安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の飯田将史主任研究官は「中国としては、尖閣諸島周辺でのプレゼンスを着実に高めるのがねらいだ。最終的な目標は、尖閣諸島の領有権を日本から奪うことであり、そこに向けて着実に一歩一歩ステップを踏んできていて、今回の事態は起こるべくして起きた」と話しています。

そのうえで「中国はアメリカとの関係が悪化する中で、防衛上の観点から西太平洋に軍事力を展開する動きを強めているが、その通り道である東シナ海や南シナ海は戦略的に重要な地域だ。各国が新型コロナウイルスへの対応に追われる中、中国はアメリカ軍や自衛隊、海上保安庁の対応能力が低下しているのではないかと見ている向きもあり、尖閣諸島周辺での活動を通じて、日本やアメリカの出方を探ろうとしているのではないか」と指摘しています。

飯田氏は、中国は公船の大型化や武装化を進めながら、今後も尖閣諸島周辺での活動をエスカレートさせることが考えられると分析したうえで、「中国によるプレゼンスの高まりを止められていないのが現状だが、日本の対応次第では、中国がより強硬な姿勢に出る口実を与えることも懸念される。日本としては『この一線を越えることは許されない』という決意を中国にどのように示すかが問われている。政策面での周到な準備や対応能力の強化を図るとともに、場合によっては法整備なども含め、対応を抜本的に見直していくことが不可欠な状況になりつつある」と話しています。