発熱目安は37度5分以上?専門家「数値挙げるのは控えるべき」

発熱目安は37度5分以上?専門家「数値挙げるのは控えるべき」
新型コロナウイルス対策として150余りの業界がそれぞれ作成している感染予防のガイドラインで、発熱の目安として「37度5分以上」などと具体的な数値を示している業界が27に上ることがわかりました。専門家は「医学的には発熱の目安に根拠はないので数値を挙げるのは控えるべきではないか」と指摘しています。
新型コロナウイルス対策をめぐっては、感染を防ぎながら社会経済活動を維持するために、国は業界団体ごとに作成したガイドラインに沿って対策を徹底するよう求めています。

NHKが内閣官房のウェブサイトに一覧として掲載されている151の業界のガイドラインの内容を調べたところ、スタッフが自宅待機や出勤停止をする発熱の目安として「37度5分以上」などと具体的な数値を示していたのは、劇場やスポーツ施設など27の業界のガイドラインでした。

このうち5つでは、平熱より1度を超える場合などの別の目安を併記していたり、平熱より0.5度以上という目安を記載していたりしていました。

一方で、多くのガイドラインでは具体的な数値は挙げず、発熱があれば自宅待機するよう求めていました。

新型コロナウイルスの発熱をめぐっては当初、厚生労働省は相談や受診の目安として「37度5分以上」としていましたが、必要な条件のようにとらえられ受診の抑制につながりかねないことなどから、5月以降は数値を示すのを取りやめています。

感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「医学的には発熱の目安に根拠はないので数値を入れるのは控えたほうがよいと思う。新型コロナウイルスは1日単位でも新しいことがわかってくる状況であり、ガイドラインも定期的に更新する必要がある」と指摘しています。

集団感染の劇場でも ガイドライン目安満たさず出演

東京 新宿で行われた舞台公演で集団感染が発生した問題では、出演者に発熱があった際に業界のガイドラインの目安に満たなかったことなどから、公演を続けていたことがわかっています。

この公演の主催者によりますと、ガイドラインに従って出演者やスタッフに37度5分以上の熱が出たり体調不良を感じたりした場合に申告するよう求めていたということです。

そして出演者の1人から申告がありましたが、検温の結果37度5分よりは低かったことや、抗体検査で陰性だったことから出演することになったということです。

「37度5分」掲載やめた団体は…

NPO法人日本ネイリスト協会では、政府の方針や専門家の意見など最新の情報に基づいてこれまでに2度ガイドラインの改定を行い、その際に発熱の目安について具体的な数値を挙げるのを取りやめたということです。

日本ネイリスト協会は全国のサロンやスクールを運営するおよそ7000の個人と団体が所属していて、ことし3月にガイドラインを作成し、その後感染拡大の状況などを踏まえて4月と5月にそれぞれ改定を行ったということです。

当初のガイドラインではスタッフを自宅待機させたり客の予約を断ったりする目安として「37度5分以上」の発熱を挙げていましたが、5月に厚生労働省の受診や相談の目安で「37度5分以上」という記載が無くなったことから、具体的な数値を挙げるのを取りやめ、単に「発熱」などとするように改定したということです。

NPO法人日本ネイリスト協会の萩原直見理事は「未知のウイルスだということで専門家の意見や最新の知見をガイドラインに落とし込んできた。お客様と従業員、それにサロンを守るために、今後もガイドラインをブラッシュアップしたい」と話しています。