エイズ死者減少もコロナ影響で物流に滞り 薬が届かないおそれ

エイズ死者減少もコロナ影響で物流に滞り 薬が届かないおそれ
去年1年間にエイズウイルスに感染した人の数は170万人と1989年以来最も少なくなり、死亡した人の数も減少傾向にあるとする報告書を国連の機関がまとめました。一方で、新型コロナウイルスの影響で物流が滞り、薬などが行き渡らずに命を落とすエイズウイルスの感染者が今後、増えるおそれがあると指摘しています。
国連合同エイズ計画が6日に発表した報告書によりますと、去年1年間にエイズウイルスに新たに感染した人の数は推計で170万人と、1989年以来最も少なくなり、死亡した人の数も69万人で減少傾向にあるとしています。

これはエイズの発症を抑える薬などが普及した影響とみられ、世界で2540万人が治療を受けているとしています。

一方で、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がる中、医療機関がひっ迫し、エイズを含むほかの病気の治療に影響が出ている上、外出制限が始まって以降、物流が滞り、薬や避妊具などが行き渡らなくなっているということです。

国連合同エイズ計画は、こうした状況が半年間続けば、来年末までにサハラ砂漠以南のアフリカだけでさらに50万人を超える人がエイズウイルスによって命を落とすおそれがあると指摘しています。

このため新型コロナウイルスの感染が広がる中でも、エイズの治療の質を落とさないよう各国に呼びかけています。

73か国で在庫不足のおそれ

WHO=世界保健機関は6日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、世界の73か国でエイズウイルスの発症を抑える薬の在庫が不足するおそれがあるとする調査結果を発表しました。

テドロス事務局長は声明で、「新型コロナウイルスのパンデミックによって、エイズウイルスに対応してきた、国際社会のこれまでの努力を無効にしてはならない」と述べ、エイズの治療を必要とする人たちが治療を続けられるように、各国が取り組むべきだと呼びかけました。