新型コロナ患者対応の医療従事者 3割近くがうつ状態

新型コロナ患者対応の医療従事者 3割近くがうつ状態
新型コロナウイルスの患者の対応にあたった医療従事者の精神面への影響について、日本赤十字社医療センターが調べたところ、3割近くが、うつ状態になっていたことがわかりました。調査を行った医師は「無症状でも感染させてしまうウイルスの特徴もあって、不安が増している。医療者を精神面で支える対策が必要だ」と指摘しています。
調査は、日本赤十字社医療センターが、感染が拡大していたことし4月から5月にかけて、およそ2000人の職員全員を対象に行いました。

調査では、抑うつの気分や不眠、食欲低下があったかなど、アンケート形式で尋ね、医師や看護師のほか、事務職員など848人から回答を得ました。

その結果、27.9%にあたる237人が「うつ状態」となっていることがわかったということです。

病院では、感染の疑いがある人を含めて先月末までに218人を受け入れ、このうち76人については感染が確認されたということで、うつの傾向は、患者の治療やケアにあたる医師や看護師だけでなく、受付などの職員でも見られたということです。

対策本部で調査を行った出雲雄大医師は、未知のウイルスであることや自覚のないまま感染し、患者や家族、それに同僚などに感染させる可能性があること、また家族に感染させないよう、1人でホテルに宿泊するといった対応が影響したのではないかとしており、病院では精神的なケアを行うチームを作って対応しています。

出雲医師は「うつ傾向にある人が予想より多く驚いた。長期戦が予想されるなか、孤立させないケアを行ったり、リフレッシュするために交代勤務にするなど、医療者を精神面で支える対策が必要だ」と話しています。

長期化に備え対策強化の重要性訴え

日本赤十字社医療センターでは、職員の精神的な負担を軽減しようと、ことし4月に臨床心理士や看護師などが支援するチームを立ち上げて対策を進めてきました。

チームは、患者を受け入れている病棟の医師や看護師だけではなく、マスクや医療用ガウンなど物資の手配を行う部署や受付業務を担当する部署など、およそ2週間に1回のペースですべての部署の職員のもとを回っています。

そして、現場で困っていることや不安がないか確認するとともに、希望者には個別に面談も行ってストレスへの対処方法などについて具体的にアドバイスを行っています。

この活動を行ってきた、臨床心理士の秋山恵子さんは「病院全体であなたたちのことを気にかけている、力になりたいと思っているというメッセージを伝えようと活動している。病院として、職員を守る気概があることを、ことばにして伝えていくことが必要だ」と話しています。

その一方で、感染を防ぐために職員どうしや家族との間でもコミュニケーションが減っていることや、対応が長期に及んでいることによって、負担感は増していると指摘しています。

職員の状態について、「慢性的な疲労感が病院全体に漂っている。当初は、不安だけれども貢献したいという意気込みがあったが、時間がたち、マラソンのゴールが先に延ばされるような、途方に暮れている感じがある」と話しています。

そのうえで、今後について、「慢性的なストレスがさらに続くと燃え尽きる可能性が高まり、より重い抑うつ症状を引き起こしかねない」と話しており、対応がさらに長期化する場合に備えて、医療従事者のストレスを和らげる対策を強める重要性を訴えています。