ラストチャンスで覇権握れるか ファーウェイ排除を追い風に

ラストチャンスで覇権握れるか ファーウェイ排除を追い風に
高速・大容量の5Gや、その次の世代の通信規格を見据えた動きが相次いでいる。背景にあるのが、これまで日本が大きく出遅れた通信インフラをめぐる国際的な覇権争いだ。車や家電、工場など、あらゆるものがネットワークにつながっていることを前提とした社会。やがて来るそうした社会に向けて通信インフラの覇権を握るためには、今が「最後の機会」だというのだ。(経済部記者 早川俊太郎 茂木里美)

NTTとNECが資本業務提携

6月25日、NTTの澤田純社長とNECの新野隆社長がそろって会見し、資本・業務提携を発表した。NTTがNECに640億円(約4.8%)を出資し、第3位の株主となる。そのうえで、高速・大容量の新たな通信規格である5Gや、その次の世代の通信技術の研究開発に共同であたるという。

NTTが「IOWN(あいおん)」と呼ぶ、光技術を活用した次世代ネットワークづくりでも協力する。資本提携にまで踏み込んだのには、中長期的な技術開発に腰をすえて両社で取り組むという、いわば「覚悟」を示す意味がある。

両社が掲げた戦略のカギは「オープン化」だ。1社がすべての機器を開発する主流の「垂直統合型」ではなく、幅広い企業と連携して最適な機器や通信網を作り上げていく考え方で、「水平分業型」とも呼ばれる。記者会見で両首脳からは、「世界」を強く意識した発言が相次いだ。
澤田社長
「信頼できるパートナーとともに、信頼される新しいメイド・イン・ジャパンを作り上げたい。日本発の技術を強化し、オープンな連携をもとにグローバルに提供していきたい」
新野社長
「国際競争力のある基地局を開発し、世界でオープン化の基地局の20%程度のシェアを確保してトップシェアを取りたい。今回が世界に出て行ける最後の機会かもしれない」

背景にある危機感

提携の背景にあるのが、5G分野で大きく出遅れた日本勢の現状への危機感だ。
イギリスの調査団体「オムディア」によると、5Gの通信インフラの世界シェアは(2019年)、トップが中国のファーウェイ、2位がスウェーデンのエリクソン、3位が韓国のサムスン。

日本勢はというと、NECや富士通を合わせても2%余りにすぎない。世界中の膨大なインフラ需要の争奪戦を、指をくわえて見ている状態なのだ。

転機になった米中対立

しかし、ここにきてその覇権争いが大きな転機を迎えている。きっかけは、アメリカと中国との対立だ。

ファーウェイとの取り引きを禁じる措置を取ってきたトランプ政権は、6月30日には、米国内の通信会社が中国のファーウェイとZTEの2社から通信機器を新たに購入することを禁じると発表。すでに導入済みの機器の使用も禁じた。

安全保障上の脅威になるというのが理由で、“締め出し”を一段と強化する姿勢を鮮明にした。
ファーウェイの5G製品を「容認する」としてきたイギリスもアメリカの警告を受けてジョンソン首相が今月中に方針を転換すると伝えられる。ファーウェイ排除の動きはアメリカの同盟国を中心に広がっている。

NTTとNECにとって、この機会こそ「オープンなメイド・イン・ジャパン」が世界で巻き返しを図る最後のチャンスになるととらえているのだ。

5Gやその先へ、国も後押し

中国勢への対抗に向けて、日本政府も動きを強めている。6月29日には、NEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構の基金を活用し、5Gやその進化版の技術開発の支援を決めた。支援先として選ばれたのは、NECや富士通、楽天モバイルなど。

各社は政府からの委託を受け、高速で安定的な通信ができる光ファイバー網や、国際的な規格づくりを念頭に次世代型の基地局の開発などに取り組むことになる。関係者によると、支援の総額は約700億円に上るという。

さらに、2030年ごろの導入が見込まれる6G(「ビヨンド5G」とも呼ばれる)に向けても、総務省の有識者会議が国の戦略について提言をまとめた。
大阪・関西万博が開かれる2025年までに集中的に開発に取り組み、「未来の社会像」を世界に示すことなどが盛り込まれた。5Gで日本が遅れをとっていることへの危機感から、次の通信規格では安全な通信網として日本が世界をリードすることを最重要項目と位置づける。

「従来の『まず国内を固め、その後に海外へ』という発想から脱却し、最初から世界で活用されることを前提とした取り組みを行うこととする」との文言に、その意気込みが表れている。

生かせるかラストチャンス

NTTとNECが、中長期的な視野で次世代通信インフラの世界的な覇権争いに参戦する方針を打ち出したことは、KDDIや富士通など、国内の他社の戦略にも影響を及ぼす可能性がある。競うべきは競い、協力すべきは協力しながら世界での存在感が高まれば、日本の通信インフラの安全保障の面でもプラスになる。

もっとも、ライバルの壁は高い。ファーウェイは毎年1兆円を超える巨額の研究開発費を投じて安価な製品を生み出し、米中対立が深まる中でも、アフリカなどでシェアを伸ばしている。
かつて日本の携帯電話は、iモードやお財布ケータイ、ワンセグのテレビ機能など、独自の進化を遂げながらほかには広がらず「ガラパゴス化」とやゆされた。

次世代通信インフラでは、官民を挙げた「オープン化」戦略でガラパゴス化に陥るのを避け、巻き返しを図れるか。実現のためには、少しの時間もむだにできない。
経済部記者
早川 俊太郎
平成22年入局
横浜局、岐阜局、名古屋局を経て現所属
電機業界を担当
経済部記者
茂木 里美
フリーペーパーの編集者を経てNHKに入局。
さいたま局、盛岡局を経て平成29年から経済部