都内の感染者増加 医療現場 ベッド数は余裕も… 新型コロナ

都内の感染者増加 医療現場 ベッド数は余裕も… 新型コロナ
東京都で新型コロナウイルスの感染者が増加しています。都内の医療現場では今のところ、ベッド数には余裕がありますが、今後、高齢者に感染が広がった場合は医療体制がひっ迫するおそれもあるといいます。
感染症の指定医療機関の1つ、東京 武蔵野市の武蔵野赤十字病院では、これまで新型コロナウイルスの患者を多く受け入れてきました。

第一波の時には急きょ、感染者専用の病棟を設けるなどして対応に当たりましたが、ピーク時の4月には45床あったベッドが常に満床の状態が続きました。

対応に当たる医師や看護師の負担も大きく、ぎりぎりの状態だったといいます。

その後、5月ごろから都内で感染者が減少し、軽症者などが自宅や宿泊施設で療養するようになったことで入院患者は徐々に減少。

現在は、感染の疑いがある患者を含めて新型コロナの入院患者は12人。ベッドには余裕があるといいます。

急きょ感染者専用にした病棟も今は一般の病棟に戻しています。

このところ、東京で感染者が増加していますが、比較的、重症化する割合が少ない若い人が中心で、この病院でも現在、重症者はいません。

しかし病院では、今後、高齢者に感染が広がった場合は、一気に重症者が増え、医療体制がひっ迫するおそれもあると警戒を強めています。

武蔵野赤十字病院の泉並木院長は「PCR検査が病院などでもできるようになり検査体制が拡充したことや、軽症者は自宅や宿泊施設などで療養してもらうようになったこと、さらに退院基準が緩和されて入院期間が平均で10日ほどに短くなったことで、医療機関の負担はずいぶん軽減された。一方で、重症化するリスクの高い高齢の患者が増えてくると医療崩壊にもつながるおそれがあり、予断を許さない状況だ」と話していました。

感染拡大に備え対策強化

都内の医療機関では今後の感染拡大に備えて、どのような対応を進めているのか。

武蔵野赤十字病院では、第一波の時に防護服などの医療物資が不足したことから、その確保を進めています。

また、感染患者が増えた場合にどの診療を縮小し、看護師などをどのように配置するかあらかじめ考えておき、即座に応援に入れるよう体制を整えることにしています。

さらに、この病院では重症な患者に使う人工心肺装置、「ECMO」を備えていますが、患者が増えて足りなくなった場合に速やかに転院させられるよう、ECMOを持つほかの病院との連携を強化しています。

今後、医療体制がひっ迫するような事態が再びやってくるのか。

東京都は、新たな感染者数や感染経路が分からない人の数や増加比率、それに入院患者の数などの7つのモニタリング項目を掲げて、状況が悪化したと判断した場合は、都民に注意喚起を行うことにしています。

ただ、警戒を呼びかける基準となる数値は設けられていません。

これについて、武蔵野赤十字病院の泉並木院長は「数値基準を設けるのは難しいとは思うが、感染者の数だけにとらわれるのではなく、入院患者の回転率や患者の年齢、それに症状の重さなども考慮して、状況を判断してほしい」と話しています。

東京のPCR検査数と陽性率

東京都内でPCR検査を受けた人の数は日によってばらつきがありますが増加傾向が続いています。

東京都によりますと、緊急事態宣言が解除された5月25日に都内でPCR検査を受けた人は920人でしたが、先月12日には2122人と、初めて2000人を超えました。今月1日には過去最多の2357人にのぼりました。

6日午前の時点でまとまっている最新のものは今月3日の人数で、1001人となっています。

また、検査を受けた人のうち感染が確認された人の割合「陽性率」も増加しています。

5月中旬以降は1%前後で推移してきましたが、先月に入って2%前後に、今月1日には4%に達し上昇が続いています。今月3日の「陽性率」は4.5%でした。

東京の入院患者推移と病床状況

東京都内の入院患者の数は、5月に大幅に減少したあと、ほぼ横ばいで推移していましたが先月下旬以降、再び増加し始めています。

都によりますと、今の形で取りまとめを始めた5月12日に1413人だった入院患者は先月20日には204人と最も少なくなりました。

ところが、その後、再び増加し始めていて、5日は369人となっています。これは、5月末頃と同じ水準です。

一方、入院患者のうち、集中治療室や人工呼吸器での管理が必要な重症患者の数については、減少傾向が続いていて、4月末には100人余りだったのが5日は9人になりました。

これに対して、東京都は、新型コロナウイルスの入院患者を受け入れる病床としておよそ3000床を準備しておくことで医療機関と合意できていて、このうちおよそ1000床はすでに患者を受け入れられる状態になっています。

また、厚生労働省は、病床の準備など医療体制の確保に関連して、先月都道府県に対して、自粛などの社会への協力要請を行う「基準日」を示しています。

「基準日」とは、人口10万人当たりの新たな患者数がそれまでの1週間で2.5人を超えた日のことで、その後、社会への協力要請を行うよう求めています。

東京都では、先月29日にこの「基準日」に達していて、6日でちょうど1週間となります。

「基準日」は都道府県が医療体制の確保計画を立てるために参考にするもので、必ずしも目安に従う義務はないものの、厚生労働省は都道府県などに示した資料の中で「効果的な協力要請が行われないと、長期にわたって感染が拡大し続ける『オーバーシュート』が起きるおそれがある」と説明しています。