尾瀬の山小屋 今季営業開始 せっけん48年ぶり解禁 新型コロナ

尾瀬の山小屋 今季営業開始 せっけん48年ぶり解禁 新型コロナ
群馬や福島など4県にまたがる尾瀬では、新型コロナウイルスの影響で休業していた山小屋が、48年ぶりにせっけんの利用を解禁するなど感染防止対策をとって1日から今シーズンの営業を始めました。
群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがる尾瀬では、感染拡大を防ぐため入山の自粛を呼びかけていましたが、1日から主要な入山ルートがすべて利用できるようになりました。

休業していた山小屋のうち半数ほどが対策をとって営業を始め、このうち群馬県片品村にある「至仏山荘」では、食堂の座席を半分に減らして利用客が向かい合わないように設置したほか、食器は使い捨てに替えました。
また、6人用の相部屋では、利用できる人数を半分に減らしたほか、洗面所には新たに液体せっけんが設置され、手洗いに利用するよう呼びかけています。

尾瀬の山小屋組合は、貴重な生態系を守るため昭和47年から山小屋でのせっけんの使用を禁止してきましたが、今回、感染防止にはせっけんが不可欠だと判断したということです。

すべての山小屋には排水を処理する浄化槽が設置されていて、環境に負荷をかけないよう浄化した水のみを自然に戻し、それ以外は区域外に運び出して処分するということです。

夫と一緒に山小屋を訪れた女性は、「登山は宿泊してこそ楽しめると思うので、山小屋が開いてよかったです」と話していました。

「至仏山荘」を運営する東京パワーテクノロジー尾瀬林業事業所の小暮義隆所長は「コスト面も考えながら、客に安心してもらえるよう運営していきたい」と話していました。

山小屋組合によりますと、営業を始めた山小屋が全体の半数ほどにとどまっていて、けが人などの救助に当たる要員も少ないため、体調に不安がある場合は入山を控えるよう呼びかけています。

感染リスクを考慮し山岳救助訓練

尾瀬への入山者の受け入れに向け地元の消防や警察、山小屋の関係者などは、ふもとの群馬県片品村で新型コロナウイルスの感染リスクを考慮した山岳救助の訓練を行っています。

尾瀬では、入山者がけがをするなどして救助を要請するケースが例年20件から30件ほどあり、救急車が入れない山の中では救助隊員が背負って下山していました。

しかし、ことしは感染のリスクを避けるため、隊員は防護服を身に着けたうえで折り畳式のたんかにけが人を乗せ、体と顔をシートで覆って運ぶことにしています。

また心肺停止になった人の救命では、人工呼吸は行わず、心臓マッサージをしたりAEDを使ったりして対応し、鼻や口からウイルスが飛ばないようタオルなどをかけることにしています。

消防の担当者は「すべての傷病者には感染の疑いがあるものとして行動してほしい」と呼びかけ、相手に話しかけたり呼吸を確認したりする際も距離をとるよう説明していました。

参加した消防署員は「初めてやることなので、不慣れな面がある。山岳地帯では地形も険しく体力が必要なので、山での訓練も必要だと思う」と話していました。

利根沼田広域消防本部東消防署の笹原利幸救急救命士は「新型コロナウイルスを前提として、接触を避けて救助することが大きな課題となっている。入山者には感染の防止はもちろんのこと、けがをしないよう予防してほしい」と話していました。