路線価公表 全国平均は5年連続で上昇 銀座は過去最高額を更新

路線価公表 全国平均は5年連続で上昇 銀座は過去最高額を更新
相続税などの計算の基準となる「路線価」が1日公表され、東京の銀座は4592万円と過去最高額を更新したほか、21の都道府県で去年を上回り、全国の平均も5年連続で上昇しました。
路線価は、国税庁が1月1日の時点で全国の主な道路に面した土地、およそ32万6000地点の1平方メートル当たりの評価額を算定したもので、相続税や贈与税を計算する基準になります。

ことしの路線価は1日に公表され、東京の銀座5丁目の銀座中央通りが4592万円で、35年連続で日本一となり、去年に続いて過去最高額を更新しました。

また、21の都道府県で去年を上回り、全国の平均も去年より1.6%上がって5年連続で上昇しました。

去年まで雇用状況の改善や外国人観光客の増加が続き、不動産への投資資金が首都圏だけでなく、一部の地方都市に流入していることが背景にあるとみられています。

都道府県庁所在地の最高価格は38の地点で上がり、那覇市の国際通りは去年より40%以上上昇したほか、大阪市の御堂筋や、横浜市の横浜駅西口バスターミナル前通りも30%以上、上がりました。

一方、1日公表された路線価には新型コロナウイルスの影響は反映されておらず、国税庁は、ことし9月に発表される地価調査の数字なども踏まえ、大幅な地価の下落が確認された場合は、路線価を引き下げることも検討しています。

都道府県別の状況

都道府県別の平均の路線価は、21の都道府県で去年を上回りました。

上昇率が最も高かったのは、
▽沖縄で10.5%、
次いで
▽東京が5%、
▽宮城と福岡が4.8%、
▽北海道が3.7%、
▽京都が3.1%などとなっています。

また、都道府県庁所在地の最高価格は38の地点で上昇し、
3大都市圏では、
東京が銀座の銀座中央通りで4592万円と過去最高を更新し、
大阪では梅田の阪急百貨店前の御堂筋が2160万円と35%上がりました。
名古屋では、名古屋駅前の名駅通りが1248万円と13%上昇しました。

地方も都市部で上昇が目立っています。
那覇市の国際通りは145万円と40.8%上がり、観光客の増加を背景に全国の県庁所在地で上昇率が最も高くなりました。

また去年、横ばいだった地方で上昇するケースもあり、
松江市の駅通りは3.7%、
長野市の長野駅前通りは3.5%、
徳島市の徳島駅前広場通りは3.3%、
それぞれ上昇しました。

都内で上昇率トップの浅草は

都内で上昇率が最も高かったのは、台東区浅草1丁目の雷門通りで、403万円と去年に比べて33.9%上昇しました。

外国人観光客の増加が路線価を押し上げる大きな理由になりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大後は外国人観光客が激減し、売り上げが減って閉店に追い込まれた店もあるということです。

浅草で忍者の体験が楽しめる「忍者カフェ」は、外国人観光客の増加を見込んで去年7月にオープンし、売り上げの8割を外国人が占めていました。

しかし、感染拡大で5月上旬まで休業を余儀なくされたほか、営業再開後も外国人はほとんど訪れず、5月の売り上げは月の平均より95%も少なくなりました。

現在はターゲットを日本人の親子連れなどに切り替えていますが、先月の売り上げも月平均より80%ほど少なかったということです。

「忍者カフェ」を経営する矢野智之さんは「浅草には外国人観光客をターゲットにしている店が多くあるが、売り上げが激減して閉店したところもある。ただ、今後、インバウンドがゼロになることは絶対にないと思うので、復活する日を待って、今は忍耐強く頑張っていきたい」と話していました。

専門家「新型コロナ早期収束が鍵に」

ことしの路線価について、不動産調査会社「東京カンテイ」の高橋雅之主任研究員は「人や金が一段と集中している都市部と、地方の二極化が依然として続いているが、東京都心はバブル期のピークを上回る水準になり、地価は頭打ちになっている。伸びしろのある地方都市に投資マネーが流入し地価を押し上げているのではないか」と話しています。

一方、新型コロナウイルスの影響による今後の地価の見通しについては、「感染拡大の収束にめどが立たない以上、住宅地、商業地ともに今後、弱含みに転じても不思議ではない。特に商業地については経済活動や人の移動の制限が続くかぎりコロナ以前の水準や成長軌道に戻すことは相当厳しいのではないか。新型コロナウイルスのワクチンの開発が鍵を握っていて、来年の春先以降でも開発のめどが立たなければ地価動向に影響を与えると思う」と話しています。

大阪 ミナミ 新型コロナで状況一変

ことしの路線価では、大阪の急上昇も目立っています。
税務署ごとの最高価格地点の上昇率で全国の上位10地点のうち6か所を大阪が占めています。

大阪の路線価を押し上げた要因の1つがここ数年、増加を続けてきた中国人を中心とした外国人観光客によるインバウンド効果です。ことしは、東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていたことで、大阪を訪れる外国人がさらに増えることが期待されていました。

とくに注目されるのが外国人に人気の街、大阪 ミナミです。
最高価格は道頓堀の観光名所、グリコの看板のそばの戎橋ビル前で2152万円。
去年の1488万円から44.6%の大幅な上昇となり、長年、関西でトップの梅田の阪急百貨店前に8万円差にまで迫りました。

ところが評価額を算定した1月1日から半年がたったいま、新型コロナウイルスの影響でミナミの状況は一変しています。道頓堀の周辺を歩いてみると中国人観光客の「爆買い」が日常的な光景になっていたドラッグストアがいくつか閉店していました。巨大なふぐの看板で知られる老舗のふぐ料理店「づぼらや」が店を閉めることを決めたほか、シャッターを下ろし、休業を続ける飲食店も目立っています。

ミナミでは海外からの入国の制限が始まったことし2月以降、外国人観光客の姿はほとんどなくなりました。

不動産鑑定士の山内正己さんは「外国人観光客が急激に減ってほぼゼロになり、店の売り上げやホテルの稼働率など、すべてが下がってしまった。これからは今までと同じような高い家賃の設定はできなくなると考えられ、投資家の目線でみると、地価が下落するリスクは高まるのではないか」と話していました。

大阪 梅田 オフィス需要も縮小へ

大阪の路線価を押し上げたもう1つの要因は大阪のオフィス需要の高まりです。

大阪の中心部 梅田ではここ数年、オフィスの供給不足から商業ビルの賃料が跳ね上がり、争奪戦は周辺のビジネスエリアや交通の便がよい豊中市の千里中央駅前まで広がっていました。

ところが、新型コロナウイルスの影響でどんな場所にどれくらいの規模のオフィスを構えるのか企業の考え方が変わり始めています。テレワークを導入した企業やコストを削減したい企業の間で、利便性の高い場所から郊外に移転したりスペースを小さくしたりする動きが進んでいるのです。

オフィスの縮小を支援するサービスを新たに始めた会社には、2月以降およそ20社から相談が寄せられています。そのうちの1社のIT企業は、コロナの感染が拡大する前、大阪の中心部のビルに2つのフロアを借り、40人余りの従業員が勤務していました。

しかし今ではテレワークを導入し、ほとんどの従業員が在宅で仕事をこなしています。広いオフィスを維持する必要性が薄れたということで、1つのフロアを解約することを決めました。

このIT企業に対してサービス提供会社は小さくしたオフィスのレイアウトを提案したり、不要になったいすや机などを買い取ったりするということです。

オフィス縮小支援サービスを提供している「オフィスバスターズ」西日本本部の石神雅士部長は「テレワークが予想外にうまくいって、オフィスの在り方を見直すという動きは広まっている。経営環境の悪化を見越して、固定費を削減したいという企業からの問い合わせも相次いでいて、今後も需要は続くと見込んでいる」と話していました。