東京都 新たなモニタリング7項目設定 数値基準設けず コロナ

東京都 新たなモニタリング7項目設定 数値基準設けず コロナ
東京都は新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、見直しを進めてきた新たなモニタリング項目を取りまとめました。感染状況や医療体制を専門家に分析してもらい、都が評価して注意喚起するかどうかを判断するということで、7月1日から試験的に運用します。
東京都は30日、午後7時半から小池知事や幹部職員が出席して、新型コロナウイルスの対策本部会議を開きました。

このなかで感染拡大の第2波に備えて見直しを進めてきた新たなモニタリング項目を取りまとめました。

感染状況と医療体制を示す合わせて7つの項目で、具体的には新たな感染者数や感染経路がわからない人の数や増加比率、入院患者の数などです。

都は週1回をベースに医師や感染症の専門家に、これら7項目の数値を前の週や緊急事態宣言が出されていた期間中の最大値と比較しながら分析してもらいます。

その結果をもとにモニタリング会議を開いて現状を評価し、状況が悪化したと判断した場合は、都民に不要不急の外出自粛の協力など注意喚起を行うとしています。

一方、新たなモニタリング項目には、都民に警戒を呼びかける基準となる数値は設けられませんでした。

都は7月1日から試験的に運用し、早期に本格的に実施するということです。

新たなモニタリング項目は

東京都は、感染拡大の第2波に備えて見直しを進めてきた新たなモニタリング項目はあわせて7つあります。

これまでもモニタリングを行っていた都内の「感染状況」と「医療体制」を分析するという大きな2つの柱は見直し後も継続されますが、モニタリングする中身の一部が変更されました。

このうち、「感染状況」のモニタリング項目は3つあります。

1. 新たな感染者数
2. 東京消防庁の電話相談窓口「#7119」に寄せられた発熱などの相談件数
3. 新たな感染者のうち、感染経路がわからない人の数と増加比率です。

いずれも1週間の平均で算出します。

消防に寄せられた相談件数と、感染経路がわからない人の数と増加比率は、潜在的な感染の広がりや市中での感染を分析するため、今回、新たに設けられました。

一方、「医療体制」のモニタリング項目は、
4. PCR検査と抗原検査の陽性率、
5. 救急医療の「東京ルール」の適用件数、
6. 入院患者の数、
7. 重症患者の数の4つです。

陽性率と、「東京ルール」の適用件数は1週間の平均で算出します。

このうち、「東京ルール」の適用件数は、複数の医療機関に救急患者の受け入れを要請したものの搬送先が見つからなかったり、搬送先を決めるのに時間がかかったりした件数です。

医療機関の受け入れ体制のひっ迫の度合いを推し量る数値として今回、新たに盛り込まれました。

このほか、新たな感染者の年齢別の発生状況なども参考にするということです。

都は、医師や感染症の専門家に、これら7項目の数値を前の週や緊急事態宣言が出されていた期間中の最大値と比較しながら分析してもらうということです。

小池知事「全体像をつかむことが考え方のベース」

東京都の小池知事は、新型コロナウイルスの対策本部会議のあと30日午後8時から記者会見を行いました。このなかで、新たなモニタリング項目に、都民に警戒を呼びかける基準となる数値を設けなかったことについて、「これまでモニタリングをしてきたのは、例えば、休業要請をしたり解除したりするための基準だった」と説明しました。

そのうえで、「感染者数が急激に増加した3月下旬の医療体制と現在ではかなり環境が違ってきているので、数字も見直さなければならない。現場の数字や感覚なども含めて判断すべきで、どの数字までヒットしたらスイッチをオンにするかオフにするかということだけではなく、全体像をつかんでいかなければならないというのが今回のモニタリングの考え方のベースになってくる」と述べました。

また、小池知事は「都としては新たなモニタリングの方向性に基づき、感染や医療提供体制の状況についてモニタリングをしっかり運用し、必要な警戒をしながら感染拡大防止と経済社会活動との両立を図っていく」と述べました。

検査体制について「現在は1日およそ3100件の体制をすでに整えている。PCR検査に加えて抗原検査なども活用して、今後、1日当たり1万件程度の検査が行えるように体制を強化していく」と述べました。

このほか、医療提供体制については感染拡大の状況に応じて、レベル1で1000床、レベル2で3000床、レベル3で4000床と段階的に病床を確保するとしたうえで「現在はレベル1の1000床を確保している。入院患者数は230人程度で、重症者は10人にとどまっている。入院患者に対して余裕がある」と述べました。

そのうえで今後、患者数が増加し続けた場合に備えて、速やかにレベル2の病床を確保できるよう29日に、医療機関に依頼したことを明らかにしました。

厚労省関係者からは懸念の声も

東京都が示した新たなモニタリング項目に基準となる数値が設けられなかったことについて、厚生労働省の関係者からは懸念の声も上がっています。

厚生労働省が医療体制の確保に関連して今月都道府県に示した目安では人口10万人あたりの新たな患者数が1週間の平均で2.5人を超えた日を「基準日」としていて、その後、自粛など社会への協力要請を行うとしています。

厚生労働省によりますと、東京都の新たな感染者数は、29日までの1週間では2.61人と、厚生労働省が示した「基準日」となったということです。

厚生労働省の関係者は、「協力要請のタイミングが遅れれば遅れるほど、ピーク時の感染者数や入院患者数が増えることが専門家の分析で指摘されている。東京都は人口も多く、基準日を過ぎた今、できるだけ早く協力要請を行う必要がある」として、数値基準を設けていない東京都の対応に懸念を示しています。

対策本部会議で専門家「全体像の把握と評価が重要」

東京都の新型コロナウイルスの対策本部会議で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、7つの新たなモニタリング項目について「感染がどれぐらい広がっているのか、また、そのスピードがどうなのかを感染状況で見る。そして、病院で受け入れられるのかについて医療体制で見ていく」と説明しました。

そして、「感染状況」のモニタリング項目として新たに設けた東京消防庁の電話相談窓口「#7119」に寄せられた発熱などの相談件数については「病院に行きたいという人が相談するときの電話番号なので相談件数が増えてくると新規の陽性者数が増えてくることがわかった」と述べました。

また、「医療体制」のモニタリング項目として新たに設けた救急医療の「東京ルール」の適用件数については、「第1波の経験から患者が増えるとこの件数があがってくる。患者をなかなか受け入れられないといった医療機関の負荷を示すと考えている」と述べました。

その上で「個別の指標とその基準値だけを見るのではなく、全体像をきちんと把握して評価をしていくことが重要だ」と述べました。

都の審議会委員「医療の需要と供給の状況を総合的に判断」

東京都が示した新たなモニタリング項目について、都の新型コロナウイルス感染症対策審議会の委員を務める東京医科大学の濱田篤郎教授は、「単に感染が確認された人の数を基準にするのではなく、ウイルスに感染して医療を必要とする人の数と提供できる病床の状況、つまり医療の需要と供給の状況を、専門家が総合的に判断していくというのがポイントだ。感染者の数がある程度増えてもそれに対応できるだけの医療提供体制が整えられていれば医療のひっ迫は起こらない。ときどきの状況を評価して、3段階から4段階のレベルに分け、わかりやすく示すことができれば、注意喚起につなげることができると思う」と話しています。