“見逃された死者数”推計の新調査法 感染研 東大と共同開発へ

“見逃された死者数”推計の新調査法 感染研 東大と共同開発へ
国立感染症研究所は見逃された可能性がある新型コロナウイルスの死者数を推計できる「超過死亡」と呼ばれる新たな調査システムを東京大学などと共同で運用する準備を進めていることが分かりました。
「超過死亡」は統計学的に予想される死亡者数を実際の死亡者数がどれだけ上回ったかを調べる方法で、新型コロナウイルスなど新たな感染症の影響を推計するのにも活用できるとされています。

国立感染症研究所では21年前からインフルエンザで超過死亡を調べるシステムを運用していて、新型コロナウイルスについてもこのシステムを活用することで影響を推計できると期待されていました。

ただ、研究所によりますと、これまでのシステムは、インフルエンザに特化した調整が行われていて新型コロナウイルスに活用するのは難しいということです。

このため研究所では検査が行われずに見逃されてしまう新型コロナウイルスの死亡者数を推計できるよう、東京大学と共同で新たな調査システムの開発を進めているということです。

新たなシステムは、海外の同様の調査と比較ができるようにするほか、毎月超過死亡の数を公表できるようにする方針だということで、研究所では厚生労働省などと調整したうえでこの夏にも運用を始めたいとしています。

「超過死亡」とは

「超過死亡」とはインフルエンザなどの流行でどれだけの人が死亡したかを推計する方法の1つです。

アメリカなど各国はこの超過死亡を把握するための監視システムを運用していて、過去のデータから統計学的に予想される死者数を導きだし、実際の死者数がどれだけ上回ったかを見ることで影響を評価しています。

例えば、ニューヨーク市の保健当局は新型コロナウイルスに感染して死亡した人について、ことし3月11日から5月2日までの間に、2万4000人余りの超過死亡が出たと推計していて、実際に報告された死者数よりも5000人程度多かった可能性があるとしています。

国内では国立感染症研究所が超過死亡の概念をもとに1999年から「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」と呼ばれる独自の調査を行ってきました。

ただ、このシステムはインフルエンザの影響を調べることに特化しているため、新型コロナウイルスの影響を調べるのは難しいということです。

『実際の死亡数』 表記は問題 改善したい

国立感染症研究所はインフルエンザによる超過死亡を迅速に把握するため「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」と呼ばれるシステムを運用してきました。

冬から春にかけて全国21の都市の保健所からインフルエンザ、あるいは肺炎で死亡した人の数を毎週、報告してもらい、超過死亡の有無を評価したうえで結果はウェブサイトで公開されています。

ただ、公開された結果では「実際の死亡数」としてグラフが示されていますが、このグラフは実際に保健所から報告された死者数ではなく、一律で「2.24」で割るなどして補正したものだということです。

一般的に「超過死亡」を推計する際には原因に関係なくすべての死者数を用いますが、研究所ではインフルエンザに特化した調査を行うため、対象を肺炎、もしくはインフルエンザに限定したことで補正が必要になったということです。

こうした数値の補正が行われていることは公開されていませんでした。

これについて研究所は、「どの地域も一律に『2.24』という大きな数字で割るのは、統計学上、不確実性がある。また、補正した死亡者数を『実際の死亡数』と表記してきたことには問題があり、改善したい」としています。