社員の幸福度を計測・分析 改善策を提案 日立が新会社設立へ

社員の幸福度を計測・分析 改善策を提案 日立が新会社設立へ
日立製作所は、人の幸福度を計測して企業などに提供する新しい会社を設立することになりました。新型コロナウイルスをきっかけに働き方が大きく変わる中で、幸福度を高めることで組織の活性化を支援するねらいです。
発表によりますと、日立は来月、人の幸福度を計測する独自の技術を手がける新会社「ハピネスプラネット」を設立します。

この会社が手がけるアプリはスマートフォンの加速度センサーを使って、本人が気付かない体のわずかな動きや揺れを計測し、他の人とのコミュニケーションをどのように取ったか分析します。そして、周りの人の幸せにどれだけ貢献したかを「ハピネス関係度」と名付けて数値で表示します。

日立が10年以上にわたって実証実験を重ねた結果、数値が高い人が多いほど組織が活性化するといった関連性が確認されたということです。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにテレワークが普及するなど、働き方が大きく変わる中、新会社は社員の幸福度の計測と分析を行い、具体的な改善策を提案するといった事業を検討する方針です。

新会社の代表を務める日立製作所の矢野和男フェローは、「オフィスでの仕事とテレワークをどういう配分でやるのがいいのかなど、企業が新たな働き方の正解により早く近づけるインフラになると思っている」と話しています。

“幸福度” 計測の仕組み

日立の技術は、スマホの加速度センサーを使って本人が気付かない体のわずかな動きや揺れを計測し、他の人とのコミュニケーションをどのように取ったか分析します。

そして、相手の幸せにどれだけ貢献したかを「ハピネス関係度」と名付けてアプリ上で評価し、最高で12程度だとしています。計測のたびに数値は変わりますが、10を超えると高い評価だということです。

また、「会話で前向きなことばを選んでみましょう」とか、「他人のいいところを探してみましょう」などと、数値の改善につながる行動をアプリが促す機能もあるということです。

日立製作所は矢野和男フェローが中心となって2005年から15年にわたって体のわずかな動きと人々の幸福度との関係性を調べてきました。その結果、体の動きと幸福度に一定の関係性があることが確認されたということです。

また、ほかのメーカーやIT企業、病院など幅広い職場で働くおよそ3万人を対象に実証実験を重ねたところ、周りを幸福にする行動が多い組織ほど生産性が上がることが分かったということです。

幸福度の計測について日立の新会社は今後、幸福度が高い人ほど心身が健康なことを実証して生命保険の分野に応用するなど、医療や介護、まちづくりなどさまざまな活用方法を考えたいとしています。

テレワーク 不安や孤独が課題

新型コロナウイルスの感染拡大で広がったテレワークについては、社内や社外の人とのコミュニケーションが課題になることを示す調査もあります。

民間のシンクタンク、パーソル総合研究所はことし3月、テレワークを行っている1000人を対象に不安感や孤独感について調査しました。

それによりますと、テレワークをしていて感じる不安として最も多かったのが、「非対面でのやり取りは相手の気持ちが察しにくい」で39.5%でした。

次いで、「仕事をさぼっていると思われないか不安だ」が38.4%、「上司から公平に評価してもらえるか不安だ」が34.9%でした。

また孤独感について尋ねたところ、全体の28.8%が「孤立していると思う」と回答しました。

テレワークの頻度が高い人ほど、孤独感を感じやすい結果になったということです。

調査を行ったシンクタンクは「テレワークでは多くの人が孤独や不安を抱えて仕事をしていることが明らかになった。よい職場づくりに向けては、コミュニケーションがカギになる」と話しています。