新型コロナ感染日記 ~妻が“コロナ”になりました~

新型コロナ感染日記 ~妻が“コロナ”になりました~
家事と育児を一手に担う妻が、新型コロナウイルスに感染。それからのとまどいの日々を、夫の目線でつづったSNS上の日記が話題です。「家事との格闘」、「幼い子どもの世話」etc。妻が感染したら直面する苦悩の数々が時系列的に読み取れ、家族の感染に備えていまどうすればいいのかを、日記は物語っていました。(ネットワーク報道部記者 和田麻子)

夫 徐々に不安になる

その日記を見つけたのはツイッター上でした。4月11日の妻の発症から始まる日記。それは家族が感染した経験を持つ人とつながりたいという思いからつづられた“感染日記”でした。初めは、感染をあまり疑わないこんな出だしでした。
『4/11 (妻は)37.2度の微熱と倦怠感少し。今思えばこれが発症。でも咳もでないし普通の風邪と思う』(ツイッターより)
始まりはごく普通の風邪の症状。しかし、新型コロナウイルスは徐々にその特徴を表し始めます。
『4/15 ネットで、微熱と平熱を繰り返して一週間後に急に38度の発熱がある記事を読みかなり心配する。妻と話し合い、コロナ疑いではないかと不安になる。倦怠感強くなる。そしてついに夜、38度の高熱が出る』(ツイッターより)

夫 恐怖を感じる

翌日、病院に行き、CT検査を受けたところ、両側の肺にうっすらとした影が見つかりました。医師は肺炎と診断、しかも両側の肺に炎症があり、新型コロナウイルスの特徴と指摘されます。頭痛や倦怠感はあったものの、せきは無かったため、男性はショックを受けます。妻が外出をほとんどしない中で、起きた事態だったからです。

「目の前に新型コロナウイルスの脅威が迫ってきたと初めて実感しました。妻の感染に心当たりはありません」
「外出といえば、週に数回、食材の買い物のため自宅とスーパーを往復する程度でした。どこで感染したのかさえわからない、恐怖しかありませんでした」

夫 主夫となる

この日から妻の自宅療養が始まります。陽性の結果は出ていませんが、感染の可能性を考え、夫は勤め先への出社を見あわせました。
『4/17 突然の主夫になりました。いきなり家事、育児、除菌、精神的な不安がのしかかり、何も手につかなくなりました。妻は一室に隔離してそこで過ごしてもらう。ただ、食事の際の食器、風呂や歯磨きの際は家族の居住空間に入るため、どうやって過ごせばいいのか悩みました』(ツイッターより)
家事は一人暮らしをした大学時代以来、20年ぶり。

子どもの世話は…ほとんど妻に任せきりでした。
「とりあえず、レシピが載ったアプリをダウンロードし、悪戦苦闘しながら豚のしょうが焼きを作りました。そして子どもに食べさせながら、妻のいる部屋の前に食事を配膳。そのあと自分が食事をとったら、子どもを風呂に入れ、歯を磨かせて寝かしつける」
「そして食器を洗い、自分の風呂。さらに妻の食器を洗って洗濯物をたたむ。妻が使った洗面所や風呂、ドアの取っ手。妻の動きに合わせて塩素系漂白剤を薄めて拭き掃除を徹底しました」

夫 主夫2日で泣きそうになる

状況が飲み込めない子どもたちは、妻に会おうと隔離する部屋に何度も入ろうとします。それを止めるのにひと苦労です。当時の気持ちをこう話してくれました。
「やることが多すぎて、何も手につかなくなりぼーっとしてしまう。やらなければという負担感に押しつぶされそうになる。たった2日で泣きそうになりました」

夫 感染を災害と思う

自宅療養を始めて3日目。保健所からの電話で、PCR検査の結果、妻の陽性が伝えられます。
家族は濃厚接触者となり、2週間外出しないよう指導されました。そこで困ったのが買い物です。やむなく近くに住む両親に、必要な食材や日用品を電話で伝え、買ったものを玄関に置いてもらい、しのぎました。
買い物を頼む際、心配だったのは両親が70代と高齢なこと。感染リスクを減らすため、数日ごとにまとめ買いをしてもらいました。子ども用の嗜好品や日用品は、欲しいものを説明してもわかってもらえず、違う商品が袋に入っていたこともありました。男性は、感染への備えが必要だったと自身の経験を振り返ります。
「痛感したのは、感染は災害のように突然やってくるということです。感染に備えて、家族全員で対応や備えを話しておくべきでした」
「嗜好品や必需品は家庭によって異なります。それが難しいようなら、最低でも災害備蓄程度はそろえておいた方がいいと思いました」

夫 ついに涙が出る

自宅療養から4日目。病院のベッドに空きが出て、軽症の妻が入院できることになりました。そして、夫と子どもたちのPCR検査の結果も出ました。男性は陰性でしたが子ども全員が陽性。涙が自然と出てきたといいます。
『4/22 非常に悲しい結果でしたが、子供はいたって元気で、一応熱は測ってますが平熱。完璧な無症状です。良かったと思う反面、このような人が世の中にたくさんいるのでは、という現実を見た気がしました』(ツイッターより)

夫 再び泣く

その後、保健所に何度もかけ合い、妻と子どもが同じ病院に入院できることになったといいます。入院当日、子どもたちは、それまで会えなかった母親との再会に大喜びでした。一方で、自宅に戻って1人きりになった男性。その時の心情を投稿していました。
『4/23 子供が去った後、さっきまでワイワイしていた我が家はシーンとなり無性に寂しくなりました。そして、家中の除菌作業。ありとあらゆるものを拭き掃除です』(ツイッターより)
『かわいい我が子が触った部分を汚染されたものとして除菌するのって、思った以上に辛く、また自然と涙が溢れてきてしまいました。こんなに涙もろくなってしまった自分がちょっと恥ずかしい。誰も見てないからいいんですけどね』(ツイッターより)

夫 いじめを怖いと思う

子どもの入院から5日たった4月28日。次男の退院が決まり、父と息子2人の生活が始まる日の朝、子どもが大事に育てていたアゲハチョウの幼虫がようやく羽化したのを見つけ、励まされたような気持ちになったといいます
『4/28 今朝、飼育かご入れていたアゲハチョウが羽化しました。去年10月に幼虫で見つけましたが、今日ようやくです。もうダメかなと思ってたのでビックリ。ギリギリ次男に見せられて良かった』(ツイッターより)
その後、長男も続けて退院したもののすぐに仕事に戻ることはできませんでした。当初は5月の大型連休明けに仕事復帰する予定でしたが、幼い子どもを自宅に残すことはできないうえ、高齢の両親に預けようにも感染のリスクを考えると、怖くてできないからでした。徐々に日常生活に戻りつつあった大型連休明け、男性は新たな不安を抱えていました。
『5/14 いま、世の中は緊急事態宣言解除の動きになり、気が緩んできている傾向にあるかもしれない。でも無症状感染者がいるかもしれないこの状況で解除すればまた広がってしまうのではと危惧しています』(ツイッターより)
『子供の学校再開も非常に心配です。もし我が子がコロナに感染したことがわかってしまって、そのうえでもし誰かがコロナに感染してしまったら、我が子はいじめの標的にされないか。今後は次の段階の心配事が増えそうです』(ツイッターより)

夫 励まされた

妻の発症から1か月以上がたった5月下旬、やっと妻が退院し家族がそろうことになりました。男性は、投稿を通して家族が感染するとこれほどまでに混乱にすることを知ってほしかったといいます。

投稿は次々と拡散されて反響を呼び、2万リツイートされたものもありました。なかには、アドバイスを送ってくれる人もいました。“誰でも簡単に作れるスープの調理方法”。おすすめの宅配サービスや家庭で実践している消毒方法。また、“がんばり過ぎず、我慢し過ぎないよう”“家族みんなで一緒に笑える日が絶対きます”といった励ましのことばも寄せられました。同じような経験をした人たちのことばに主夫となった男性は何度も勇気づけられたといいます。

今後来るかもしれない第2波、第3波に備えて、準備できることは何か聞いたところ、男性はこう答えてくれました。
「家族が感染した時、何が必要で、どう対処するか、事前に考えておくのが一番ではないでしょうか。買い物を頼める人はいるのか、どの宅配サービスなら利用しやすいのか。また、事前にどんな食料品や日用品を備蓄すればいいのか。話し合わなければいけないことが、たくさんあると思うんです」
感染を「防ぐこと」ばかりに気をとられず、感染を「してしまった」時のことを、家族1人1人についてシミュレーションしておく。その大切さを日記は伝えているように感じました。