ビジネス特集

“思う存分つつくがよい” ナニワ企業がコロナに勝つで!

新型コロナウイルスの影響で多くの企業が厳しい経営環境におかれていますが、「商品が売れない!」と悩んでばかりいられません。大阪ではちょっとした工夫でコロナ時代の需要をとらえようとナニワ魂を見せるメーカーが次々と登場しています。工場を動かすことはある別の効果もあるというのですが、どのようなものなのでしょうか。(大阪放送局記者 太田朗)

伝統産業“つまようじ”メーカー

和菓子を食べるときに使う「黒文字ようじ」。国産材を使ったこだわりの製品を作っているのは、大阪 河内長野市のメーカー「菊水産業」です。

この地域では「つまようじ」作りが伝統産業。しかし、つまようじの市場は近年、安い中国製の製品が圧倒的なシェアを占めています。

竹串やざるといったキッチン用品の販売も行ってビジネスを多角化してきましたが、新型ウイルスの影響で会社全体の売り上げが前の年より50%も減少してしまいました。
そこで考え出したのが「非接触棒」。一見するとつまようじのように見えますが、ボタンやスイッチに直接触れずに押すための木の棒です。

コロナ時代に適合した新商品なのです。
パッケージには「思う存分つつくがよい」の文字。長さ7.5センチほどの棒で、1ケースに120本ほど詰めて完成。

価格は「コロナに勝つ」の意味を込めて、「567円」より1円高い「568円」で販売しています。
原材料はつまようじと同じ国産のしらかば。通常は機械でカットしていきますが、湿気が高く機械に入れられない木が倉庫にたくさんありました。手作業で長さをそろえて、ささくれを落としていきます。

減少した売り上げを埋めるには遠くおよびません。それでも、生産を続けることが従業員の気持ちにプラスに働いていると末延秋恵専務はいいます。
菊水産業 末延秋恵専務
末延専務
「新型ウイルスの影響が広がってからは全然注文がなかったので、従業員たちが落ち込み気味でしたが、新商品作りはすごく楽しいって言って取り組んでくれました。会社としていまできることを考えて、それにみんなで取り組むのも1つの方法だと思います」

展示会ビジネスの会社は

一方、大阪市に本社がある社員240人のメーカー「サクラインターナショナル」。

主力商品は展示会で使われるパネルやパーティションですが、新型ウイルスの影響で大規模イベントは夏までほぼすべてがキャンセルになりました。
そこで目を付けたのが、多くの人が並ぶ銀行のATM。感染防止のために人の列を仕切るシールドを作れば需要があると考えました。
防犯のため、仕切りの板は透明に。一方で、風通しをよくするために足元は板がありません。
本業の注文がどんどんなくなっていく状況で、工場には大量の資材が余っていました。そこで、自分たちの技術で感染防止に役立つ商品を作り出せないかと、社員たちが新商品を発案したのです。

妙代金幸社長は、こう話しています。
サクラインターナショナル 妙代金幸社長
妙代社長
「社員たちが自発的に仕事を生み出す経験をしたことで成長したのではないかと思っています。さらに会社が強くなることを期待しています」

本業が戻るときのスタートダッシュにも

コロナ需要をつかもうという必死の商品開発。メーカーへの取材で見えてきたのは、目先のささやかな売り上げだけにとどまらない、工場を稼働させることの別の効果です。

実は工場を稼働させ、生産を続けることで、従業員のモチベーションが高まったり、感染が終息し、経済が順回転を始めたときに素早く需要をつかみ、新たなモノを生み出せたりするというのです。
製造業のマネージメントに詳しい日本大学生産工学部の村田康一教授はこう指摘しています。
日本大学生産工学部 村田康一教授
村田教授
「新しい商品開発に挑戦することは従業員の絆を深めることになる。また、工場は一度休むと垂直立ち上げがなかなか難しいため、その前に助走をつけることが本業の注文が回復してきたときに生きてくる」

工夫で乗り切ったその先にあるものは

ドアノブを腕で開け閉めするための取っ手
大阪にはほかにも、ドアノブに手を触れることなく腕で開け閉めするための取っ手をつくる会社や、飛沫感染を防ごうと段ボール製の小窓のついたついたてを製造する会社もあります。

誰しも目の前の仕事がなくなると不安になるものですが、工場が動くことで従業員はやりがいを持つことになります。

創意工夫でコロナ時代の新たな需要を開拓し、将来の経済再起動にかける、企業のナニワ魂を個人でも学びたいと感じました。
大阪放送局記者
太田 朗
平成24年入局
神戸局を経て大阪局で経済担当

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