新型コロナで株主総会様変わり 株主も「雇用」重視に

新型コロナで株主総会様変わり 株主も「雇用」重視に
新型コロナウイルスの影響で株主総会が様変わりしましたが、利益を追求する株主の姿勢も感染拡大をきっかけに変化が現れています。
巨額の資金を運用する投資ファンドなどの株主の中には、株主総会で配当金の増額や自社株買いなど、株価の上昇につながる対策を強硬に要求する投資家も少なくありませんでした。

ところが、地球温暖化やプラスチックごみなどの環境問題などへの対応が世界的な課題として認識され、こうした問題への対応をおろそかにする企業は社会から支持されず、将来的に稼ぐ力が衰えていくといった考えが株主の間に広がりました。
世界最大の資産運用会社ブラックロックも、二酸化炭素を多く排出する石炭関連の事業の売り上げが多い企業には積極的に投資しない方針を打ち出し、企業の「社会的な責任」や「持続可能性」を重視する姿勢を強めています。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に直面して投資家は、感染症対策への対応も重視するようになっています。

世界の主な機関投資家でつくる国際的なネットワークは、ことし4月『企業経営者のみなさまへ』という緊急の声明を発表。

感染拡大が深刻化する中、経営者は株主への配当を確保するよりも従業員の「健康」や「雇用」を守ることに優先して取り組むよう求めました。

大手資産運用会社の投資方針

フィデリティ投信は、世界25か国の企業に投資をしている資産運用会社の大手です。

機関投資家でつくる国際的なネットワークにも参加しています。

東京にある日本の拠点では25日、投資先の企業との対話を担当しているスタッフがオンラインの会議を開き、今後の投資の方針について話し合いました。

会社は年金資金などの運用を任されているため、十分な配当を企業に要求することを原則にしています。

ただ、同時に環境問題など社会的な課題に前向きに取り組んでいる企業への投資=ESG投資にも力を入れています。

新型コロナウイルスの影響が長引くことが懸念される中、雇用を守ることも社会的な課題になっているとして、企業との対話の中で雇用に対する考え方もチェックしていく方針です。

投資先企業の対話の責任者を務める三瓶裕喜さんは「利益がどのくらい減るかとか、業績がいつになったら回復するかといった話は、今は聞かない。むしろどうやって従業員を守っているかを聞くことにしている」と話しています。

そのうえで「難しい環境だからこそ透明性高める、企業と株主の話し合いの『双方向性』を十分確保するほうが、その会社に対する支持率、経営に対する支持はむしろ上がると思う」と話しています。