入国制限の緩和後 初の日本からの臨時便がベトナム到着

入国制限の緩和後 初の日本からの臨時便がベトナム到着
新型コロナウイルス対策として実施してきた外国人の入国制限をめぐって、日本とベトナム両政府が相互に緩和することで合意して以降、初めてとなる日本からの臨時便が25日午後、ベトナム北部の空港に到着し、日本人駐在員や出張者およそ150人がベトナムに入国しました。
新型コロナウイルスの感染対策として実施してきた外国人の入国制限措置をめぐり、日本政府は感染状況が落ち着いている国のビジネス関係者らに限って段階的に、相互に入国を認める方針で、今月19日、外交戦略的にも重要なベトナムとの間で相互に制限を緩和することで合意しました。

25日は、合意後初めてとなるベトナム行きの臨時便が運航され、日本人駐在員や出張者など、およそ150人を乗せた旅客機が日本時間の午後4時すぎ、首都ハノイから150キロ余り離れたベトナム北部の空港に到着しました。

入国手続きを済ませた一行は、日本を出発した時と同じように感染防止のためのガウンを身につけたまま、軍の兵士などに案内されながら迎えのバスに分乗し空港をあとにしました。

このあと一行は、それぞれPCR検査を受けるほか、14日間の隔離が求められているため、滞在先のホテルで過ごすことになっているということです。

ベトナムへの臨時便は、26日と27日にも運航されることになっていて、3日間でおよそ440人の日本人がベトナムに入国する予定です。

一方、外務省によりますと、ベトナムのビジネス関係者や技能実習生らの日本への入国については、できるだけ早い時期に開始する方向で調整しているということです。

技能実習生や企業から喜びの声

日本とベトナム両政府が、相互に入国制限を緩和することで合意したことを受けて、日本で働く予定の技能実習生や実習生を送り出す企業の関係者からは、喜びの声が聞かれました。

このうち、首都ハノイにある技能実習生の送り出し企業では、感染拡大で日本との往来が制限された結果、およそ300人の実習生が出国時期の変更を余儀なくされるなど、影響が広がっているということです。

実習生たちは、日本へ行く前に寮で生活しながら、併設された学校で日本語や日本のマナー、それに建設といった専門的な技術を学んでいますが、渡航のめどが立たないなか、大半が実家のある地方に帰省し、オンラインで授業を受けているということです。

こうした中でも、学校に残って日本語の勉強を続けている29歳の男性は、本来ならばことし4月から福岡県内の漬け物工場で働く予定だったということで「日本に行ける可能性が出てきたのでうれしいです。もっと勉強して、日本での仕事にすぐになじめるよう、準備を進めたいです」と話していました。

送り出し企業の経営者は「両国政府が、合意できてうれしいです。ビジネスにも大きな影響が出ていますが、実習生の不安を軽減できるよう、取り組んできました。早く実習生を日本に送り出したいですが、彼らが日本で安心して働けるよう、十分な感染対策をお願いしたいです」と話していました。

去年1年間に、ベトナムから海外に送り出された労働者は、15万人余りに上り、このうち半数を占めるおよそ8万人が技能実習生などとして日本に渡っています。

海外への労働者の送り出しは、経済を下支えする重要政策の1つだけに、ベトナム政府としては技能実習生が、早く日本で働けるよう日本政府との調整を急ぎたい考えです。

ベトナムの感染状況と入国制限

ベトナムは、新型コロナウイルスの感染が広がる中、早い段階で水際対策の強化に乗り出し、ことし3月下旬以降は、原則として外国人の入国を認めていません。

しかし、国内の感染者は352人と感染の抑え込みに成果をあげていることや、打撃を受けた経済の立て直しを図るため、ベトナム政府は専門家や高度な技術者など一部の外国人については特別に入国を認めています。

このうち日本人については、先月9日に日本に一時帰国していた駐在員など68人が現地の日本商工会議所が手配したチャーター機で特別に入国しています。

ただ、アメリカやヨーロッパなど海外の国々では、依然として感染の拡大が続いていることからベトナム政府は、国外からウイルスが持ち込まれ、再び国内で感染が広がることに警戒を強めています。

このため今回、入国が認められた日本人ビジネス関係者についても入国後にPCR検査を受けることやホテルなどで14日間の隔離が求められています。

一方、ベトナム政府は観光客など受け入れる外国人の範囲の拡大や国際線の再開について慎重に検討しています。

官房長官「わが国の検査体制の拡充が必要不可欠」

菅官房長官は記者会見で「今回のビジネス関係者の渡航は、両国間のさらなる往来に向けた第1歩だ。今後とも、ベトナム当局とは、外交ルートを通じて具体的な措置や手続きについて調整していきたい」と述べました。

そのうえで「国際的な人の往来を再開していくにあたり、わが国の検査能力や体制を拡充することは必要不可欠だ。厚生労働省をはじめ関係省庁が連携し、唾液PCR検査などの導入や海外に行く人のためのPCRセンターの設置などをしっかり進めていきたい」と述べました。