神奈川県内 虐待相談減少 休校長期化で被害が埋もれたおそれ

神奈川県内 虐待相談減少 休校長期化で被害が埋もれたおそれ
新型コロナウイルスの影響で休校や休園が長期化したことし3月から5月に神奈川県内の児童相談所に寄せられた虐待に関する相談は、学校などを中心に去年より350件余り減少したことがわかりました。専門家は被害が埋もれたおそれがあるとして第2波に備えて対策が必要だと指摘しています。
神奈川県内の児童相談所を所管する県や政令指定都市などにNHKが取材したところ、臨時休校の要請や緊急事態宣言が出された3月から5月の3か月に、県内の児童相談所に寄せられた虐待に関する相談は4603件と、去年の同じ時期に比べて356件減少していました。

内容別にみると、「心理的虐待」が去年とほぼ同数だった一方、「身体的虐待」や育児放棄などの「ネグレクト」、それに「性的虐待」はいずれも減少し、去年の8割前後となりました。

寄せられた経路別を見ると、最も減少したのは「学校」で238件減って去年の3割ほどにとどまったほか、「幼稚園」も26件減って去年の10分の1になりました。

一方で、「家族・親戚」からは51件増えて498件となったほか、「子ども本人」は18件増えて55件と、去年の1.5倍となりました。

各自治体では、休校や休園の長期化であざや傷、子どもの様子から被害を把握することが困難だった一方、社会との接点が少なくなる中で、当事者みずから支援を求める状況が生じていたとみています。

児童虐待の問題に詳しい山梨県立大学の西澤哲教授は「子どもや家族がストレスで追い込まれている状況にあり、相談機関はつながりを強化しないといけない。第2波に備え休校などを行う際は学校に代わる安全確認の工夫を講じるとともに、『ウィズコロナ』の時代の家庭訪問などアウトリーチの在り方を、事前に計画しておくことが必要だ」と指摘しています。

自治体 家庭状況確認するための模索続く

休校や外出自粛で子どもの姿が見えにくくなった中、自治体では子どもの安全を確認するための模索が続いています。

3か所の児童相談所がある川崎市では、ことし3月から5月にかけ「学校」から寄せられた虐待に関する相談が、去年の同時期に比べて47件少ない16件と、去年の4分の1に減少しました。

また、「幼稚園」からの相談は去年は14件ありましたが、ことしは0件でした。

一方で、「家族・親戚」や「子ども本人」からの相談はやや増えていて、保護者自身から「子どもが家にいて仕事の邪魔をするのでいらいらしてしまう」とか、「手を上げてしまいそうだ」といった相談も寄せられたということです。

しかし、感染のリスクを理由に児童相談所の訪問や面談を断られるケースもあり、虐待の発見の遅れを懸念した川崎市は、4月中旬に市の教育委員会を通じて、登校日や、教員が電話連絡や家庭訪問を行う際に、子どもや家庭の状況を確認してもらうよう依頼したところ、5月に入り相談が増え始めたということです。

川崎市児童家庭支援・虐待対策室の笹島忠幸担当課長は「これだけ長期間の休校は初めてのことで危機感を持ってやってきたが、虐待が埋もれてしまったおそれは否定できない。同じような事態に備えて対策を検討し、SNSを利用した相談窓口など子どもたちが声をあげやすい環境も整えていきたい」と話していました。