成田空港検査 1日1000件近く過去最多 新型コロナ

成田空港検査 1日1000件近く過去最多 新型コロナ
成田空港で行われた新型コロナウイルスの検査数が、今週の初め、1日で1000件近くに上り、これまでで最も多くなったことが検疫所への取材で分かりました。海外からの入国制限の緩和が今後、進むとみられるなか、感染の第2波を防ぐための検疫所の態勢強化や診療体制の整備が改めて課題となりそうです。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は111の国と地域からの入国を拒否したうえで、日本人の帰国者や、日本で暮らす外国人で人道上配慮すべき事情がある場合などは入国を認めています。

いずれのケースでも、入国の際にウイルス検査を受ける必要がありますが、成田空港検疫所で、今週初めの21日に行われた検査の数は973件と、一日としてはこれまでで最も多くなったことが分かりました。

成田空港ではことし2月から検査が始まり、対象となる国がアメリカなどに拡大して日本人の帰国者が相次いだ4月上旬には検査数が急激に増加しましたが、国際線の相次ぐ運休などに伴いその後は減少傾向となりました。

しかし、緊急事態宣言が全国で解除された先月下旬から再び増加傾向に転じ、成田空港の検疫で感染が確認された人の数が1日に14人に上った日もありました。

政府は、外国人の入国制限措置を巡り、感染状況が落ち着いている国や地域のビジネス関係者らにかぎり、一定の条件のもとで入国を認めるなどとする方針を決定していますが、今後、検疫所の態勢強化や国内での診療体制の整備が、感染の第2波を防ぐうえで改めて課題となりそうです。

成田空港検疫所検疫課の櫻田紳策課長は、「現在、検査や陽性者の数がともに増えている状況で、検疫ではすでに第2のピークがやってきたと捉えている。検疫の人員を大幅に増やして対応することなどが必要になってくると思う」と話していました。

密着取材で見えたもの

新型コロナウイルスの感染が拡大し、水際対策が進められている成田空港の検疫所の密着取材が初めて許可され、NHKが取材を行いました。

成田空港検疫所では、全国各地からの応援の職員20人ほども含めて検疫官など合わせておよそ160人がローテーションを組んで対応に当たっています。

24日は、午前8時半ごろ、検疫課の職員7人が参加して、人員の配置などについて確認しました。このあと、警察やウイルス検査の結果を待つ人を当面の待機場所まで運ぶバス会社の担当者なども交えて情報共有が行われました。

成田空港検疫所の田中一成所長は、「到着便や乗客の状況が毎日違うので、当日の状況を見て適切に対応するための調整を行っている」と話しました。

そして、今回、初めて仙台検疫所から応援に来た原田翔斗(21)さんに空港での業務についての説明が行われました。今回の派遣では、主にウイルス検査の件数をまとめる作業を担っていますが、次回以降は、海外から到着した人の対応を行う可能性もあるということで、真剣な表情で説明を聞いていました。

原田さんは、「水際対策がとても重要で、その最前線が成田空港だと思っています。自覚を持って業務に当たり、学んだことを今後に生かしたい」と話していました。

また、空港で行われたウイルス検査の結果を入国した人などに伝えることも検疫所の業務です。担当の職員は、検疫所が指定したホテルや自宅にいる人など、一人一人に電話などで連絡を取って結果を伝え、さらに、検査で陰性となっても2週間は待機するよう求めていました。

ただ、すぐには連絡がつかず、結果を伝えるまでに時間がかかることも少なくないということです。

検疫課の滝本紳さんは、「1日10件から20件程度は電話がつながらないことがあります。到着する人が増えていくと、すべてに対応することは難しくなる」と話していました。

検疫所で最も緊張感が増すのは、海外からの便が到着するときです。午後4時すぎ、カタール・ドーハからの便が成田空港に到着しました。

乗り継ぎを利用してパキスタンやイラン、トルコなどから帰国した日本人や、以前から日本で暮らし、入国が認められている外国人の合わせて52人が10人程度のグループに分けられ航空機を降りてきました。

そして、マスクやフェイスシールド、それにガウンなどを身に着けた検疫官などおよそ20人が対応に当たり、これまで滞在していた国や健康状態などを確認していました。

成田空港検疫所検疫課の櫻田紳策課長は、「新たな感染の流入は防がなくてはならず、検疫の役割は非常に重要だと考えている」と話していました。

課題は人員不足と…

成田空港検疫所では、新型コロナウイルスの水際対策の強化に伴い、ことしの2月1日から、中国便の利用者などを対象にサーモグラフィーによる確認や入国者への質問票の配付などを行ってきました。

その後、日本に入国したすべての人に指定場所のホテルや自宅での2週間の待機を求めることになり、さらに今では、111の国と地域から帰国する人などを対象に空港で新型コロナウイルスの検査を行っています。

検疫所の業務は、航空機から数人ずつを案内して検査を受けさせることや、待機場所の確認と誘導、空港からの移動に公共機関を使わないことなどの確認、それに、空港で行われた検査結果の伝達と2週間の待機要請の徹底を求めることなどで感染拡大前と比べ格段に増加しています。

これを受けて、一時は自衛隊や、検疫所以外の厚生労働省の職員などが応援に来ていましたが、いずれも今月の中旬までに終了したということです。

一方で、日本で暮らし、人道上配慮すべき事情がある外国人などが再入国するケースが増えているため、ウイルス検査の件数は、このところ増加に転じていますが、電話やメールでの連絡がなかなか取れず、結果の伝達や待機要請の徹底に手間取ることも少なくなく、検疫所での人員不足が課題となっています。

また、課題は人員だけではありません。入国した人がウイルス検査の結果が出るまで待機する場所のうち、検疫所が確保しているホテルは3か所です。入国者が今後、増えていけば、足りなくなるおそれもあるといいます。
成田空港検疫所の櫻田紳策課長は、「入国者がどんどん増加していくと、待機場所がなくなってしまうおそれがある。薄氷を踏むような思いで対応しています」と話していました。