家族とも面会制限続く 重い病気で入院の子どもたち 新型コロナ

家族とも面会制限続く 重い病気で入院の子どもたち 新型コロナ
緊急事態宣言が解除されておよそ1か月。全国に16ある小児がんの拠点病院などのうち少なくとも12の病院が、新型コロナウイルスから入院中の子どもを守るため、家族との面会や入院生活を支援するボランティアとの交流を制限する対応を続けていることがわかりました。小児看護に詳しい専門家は「制限が長期化すると子どもの成長を損なうおそれがあり、オンラインの活用など早期に取り組む必要がある」と指摘しています。
NHKは新型コロナウイルスの広がりが小児がんなど重い病気と闘う子どもたちの入院生活にどのような影響を及ぼしているか調べるため、小児がんの拠点病院など全国の16の医療機関にアンケート調査を行い、13の医療機関から回答を得ました。

その結果、12の医療機関が緊急事態宣言が解除されてから3週間が過ぎた今月中旬の時点でも、家族との面会について人数や時間を制限する対応を続けていることがわかりました。

また、子どもたちの生活や遊びを支援するボランティアやNPOなど外部との交流活動についても、以前から実施していない1つを除く12の医療機関が取りやめているということです。

小児がんなど重い病気と闘う子どもは長期の入院生活を余儀なくされるケースが多く、医療機関は治療だけでなく学習や遊びの提供など子どもの成長を支える取り組みを進めていますが、こうした支援を十分に実施できずにいる実態が浮き彫りになりました。

さらに、11の医療機関が制限の解除について「見通しがたっていない」としています。

小児看護学が専門の聖路加国際大学の小林京子教授は「制限はやむをえないが、長期化すると子どもの成長を損なうおそれがある。医療機関はオンラインの活用のほか、安全管理のルールを作るなどして外部からの支援も受けられるよう早期に取り組む必要がある」と指摘しています。

入院した女児「ただベッドにいるしかなかった」

アンケートに回答した小児がん拠点病院の1つ、大阪市立総合医療センターに先月中旬まで入院していた小学4年生の女の子は「ただ、ベッドにいるしかなく、楽しいことが全部なくなった状況だった」と話しています。

大阪府内に住む中尾遙ちゃん(10)は、およそ3年前から入退院を繰り返しながら闘病生活を続けています。

今回入院したのは、国内の感染者が1万人を超えた直後の4月20日で、病院では家族との面会を制限するなど感染症対策が強化された時期でした。病室は4人部屋で、母親の睦美さんの付き添いは認められましたが、原則自由にできた家族との面会は1人1時間までと制限されました。

この病院に以前入院した際は、父親や祖父母などが2日に1回のペースで見舞いに訪れ、家族みんなで会話を楽しむこともできましたが、今回は思うように家族と会えず寂しい思いをしたといいます。また、おもちゃなどが置かれたプレイルームは院内感染を防ぐためとして使用が禁止され、ほかの子どもたちと一緒に遊ぶこともできませんでした。

さらに、遙ちゃんが楽しみにしていたという外部のボランティアやNPOなどが開く交流行事。月に3回ほど開かれていましたが、ウイルスが持ち込まれるのを防ぐため中止されました。

病院では所属する保育士が子どもたちの見守りにあたっていましたが、1日のほとんどをベッドの上で過ごさなければならない生活が1か月間続いたといいます。

今回の入院生活について中尾遙ちゃんは「ただただ、ベッドにいるしかなく、みんなと一緒に遊べなかったのがつらかった。みんなも困っていて、私と同じ気持ちなんだと思う。楽しいことは『全部なし』になってしまっていた」と話していました。

また、付き添っていた母親の睦美さんは、「誰かと会うことも遊ぶこともできず、すごくしんどそうだった。あるのは治療だけで息抜きができずに、外部との交流があったら子どもも私も助かるなと思っていました」と話しています。