プロ野球 3か月遅れの開幕 コロナ禍で強めた使命感

プロ野球 3か月遅れの開幕 コロナ禍で強めた使命感
新型コロナウイルスの感染拡大で開幕が再三延期されたプロ野球は国内の主要なスポーツの中で先陣を切って19日、観客を入れずにレギュラーシーズンが始まりました。11月まで続くシーズンは、感染のリスクに向き合い続ける必要があります。
それでも当初の予定からおよそ3か月遅れで日常を取り戻す一歩を踏み出した選手や球団関係者は「明るい話題を届けたい。プロ野球を愛し待ちわびるファンの思いになんとか応えたい」などと強い使命感を口にします。
プロ野球界が新型コロナウイルスとどう向き合ってきたのか。
巨人担当の番記者がおよそ5か月の取材を振り返ります。

ウイルスとの戦い

2月中旬。私は沖縄で巨人のキャンプ取材をしていました。
当時、球団から報道各社にマスクの着用を求められていましたが、おもに季節性のインフルエンザ対策としてでした。
ところが沖縄で初めて感染者が出た後の2月23日に那覇市で行われたオープン戦では、球場に観客のための消毒液が置かれるなどの対応が始まりました。
この時、当初のシーズン開幕日の3月20日まで、およそ1か月。球場での感染対策を取材する中、「開幕は大丈夫かな」と少し考えましたが、開幕を左右するほどの事態とは受け止めていませんでした。

前例のない無観客試合

その考えは2日後、すぐに変わりました。
2月25日、チームがキャンプを打ち上げ私も沖縄から帰京しましたが、羽田空港に着くやいなや巨人の担当記者がそのまま球団事務所に集められました。そして月末に東京ドームで行うオープン戦を無観客で開催すると明らかにしたのです。
さらにその翌日には12球団の代表者会議が開かれ、巨人の主催試合だけではなく開幕までの残りのオープン戦すべてを無観客で行うことが決まりました。
無観客試合は公式戦を含めて史上初、前例のない苦渋の決断でした。
ここから球界の未知のウイルスへの対応が本格化しました。

覚悟した開幕延期

無観客となったオープン戦は球場で取材ができましたが、マスクの着用や検温などの対策が徹底されました。
困ったのは球場内で選手や首脳陣を個別に取材するいわゆる「ぶらさがり」が感染防止の観点から制限されたことです。その時々の選手の思いを聞くことができなくなりました。
このころには選手やスタッフから「予定どおりの開幕は厳しいのではないか」という声が聞こえ始めました。
私も同じような思いで取材をしていたので、各社との合同の囲み取材で「開幕が近づいてきたが手応えはどうか」と選手に質問しながらも、心の中ではもやもやしたものがありました。
そして3月9日に開かれた12球団の代表者会議で開幕の延期が決定。
「やはりそうなったか」と驚きはありませんでした。

エースの思い

その後、開幕は再三の延期。『密』を避けるためにチーム練習を行うのが難しくなり、選手の調整はやり直しとなりました。
チームによっては球団施設の利用もできなくなりました。
巨人のエース、菅野智之投手はこの時、苦しい胸の内を明かしていました。
菅野投手
「モチベーションをなかなか保てないし、開幕という目標はもちろんあるが、すごく不透明なもの」

数々の修羅場をくぐり抜けてきた球界を代表するピッチャーでさえ、気持ちをコントロールするのが難しかったのです。
その一方で、プロ野球が果たすべき責務も感じていました。

菅野投手
「自分たちがウイルスの対策を練ってしっかりシーズンを行うことによってほかのスポーツやいろいろな興行が前に進んでくれるきっかけになればいいと思う。与えられた環境の中で自分たちはやるしかない」

菅野投手のことばは、すべてのプロ野球選手に共通したものだったと思います。

使命感で統一した12球団

選手が個人練習を黙々と続ける中、12球団などはウイルスの感染拡大の状況や政府の方針を踏まえどういった条件がそろえば開幕をできるのか探ってきました。
無観客での試合開催はチケット収入や球場での飲食やグッズ販売の売り上げがまったくなくなるため経営面で大きな痛手となります。
それでも早期のシーズン開幕を目指し、当初の予定からおよそ3か月遅れの6月19日に開幕となったのです。
興行でもあるプロ野球で収入を度外視した判断に至ったことについて、私がある球団の幹部に聞いたところ、こんな答えが返ってきました。
球団幹部
「プロ野球が社会にもたらす役割がある。国民の希望であり、それを果たす責任を負っている。感染対策と社会活動を両立していく」

ことばは違えど、それは菅野投手と共通した思いでした。

野球界一丸となって

この先、緊急事態宣言が再び出れば、リーグ戦が中断される可能性もあり、予断を許さない状況は続きます。
各球団は感染予防を詳細に記したガイドラインをもとにペナントレースを戦っていきますが、野球界が一丸となって前例のないシーズンを乗り切ることを願います。
(スポーツニュース部 記者 林田健太)