コロナ対策で500人収容が60人に ライブ再開するけれど…

コロナ対策で500人収容が60人に ライブ再開するけれど…
新型コロナウイルスによる深刻な影響を受けているライブハウスは、19日から東京などでも観客を入れた営業が可能になりますが、今後も入場者数の制限などが続き、影響の長期化を懸念する声が上がっています。
音楽の生演奏を間近で楽しむことができるライブハウスは「3密」にあたるとして自粛や休業の要請を受け、各地で経営難から閉店に追い込まれる店が出ています。

その後、地域の状況に応じて休業要請の解除が進み、19日からは東京などでも観客を入れた営業が可能になりますが、感染防止策として観客どうしの距離は2メートルから1メートル、出演者と観客までの距離は2メートル空けるなどの対策が求められています。
都内のライブハウス「下北沢GARDEN」は最大で500人の観客を収容できますが、感染防止策を講じた場合60人ほどしか入れられず、仮に営業ができても利益が出ないといいます。

観客を入れた営業が再開できるのは早くても来月上旬以降になるということで、その後も当面は、人数を制限しながらも、1日に複数回の公演を行ったり、生のライブと同時にオンラインでの有料配信を行ったりして、少しでも収入を確保して店を存続させたいとしています。
代表の井上哲央さんは「とりあえず一安心ですが、晴れて再開とは思えません。今出されている予防策のとおりに営業してもとても経営は成り立たず、まだまだ課題が多いです。最悪を想定すると1年や2年というスパンで従来のライブはできないと考えています。持ちこたえるために何ができるかを常に模索している状態です」と話しています。

裏方スタッフも苦境

ライブを支える裏方のスタッフも長く仕事が途絶えた状況が続き、苦境に立たされています。

ライブ業界は、音響や照明、ステージの設営、機材の運搬など多岐にわたる裏方のスタッフの存在によって成り立っていますが、その多くがフリーランスの個人や中小規模の事業者です。

東京都内で音響を手がける会社を経営する中野豪さんは、ライブハウスや音楽フェスティバルなど1か月に100件ほどの現場を手がけてきましたが、ことし3月以降、イベントの中止が相次いで4月からは仕事が完全に途絶え、これまでに売り上げベースでおよそ5000万円の損失が生じているということです。

さらに、ライブハウスやイベントの主催者からは、休業要請が緩和されても収支が成り立たないことなどからすぐにライブの開催に踏み切れないという声も届いているといいます。
中野さんの会社では、21人いるスタッフのうち2人が生活のためにこの仕事を離れて別の業界に移ったということで、中野さんは「業界全体として、とても大変なことだと思います。われわれは発注ありきで動く仕事なので、今は何もできません。以前と変わらない形に早く戻ればいいと思います」と話しています。

スタッフ支援にクラウドファンディング

苦境に立たされるスタッフを支援しようと、先月の開催予定が中止となった東京の「日比谷音楽祭」では、仕事を失ったスタッフへの補償を目的としたクラウドファンディングを始めています。

「日比谷音楽祭」は、東京の日比谷公園を会場に先月、開催が予定されていた入場無料の音楽イベントで、「DREAMS COME TRUE」や作曲家の久石譲さんらの出演が決まっていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止されました。

中止によっておよそ300人のスタッフが仕事を失うことから、音楽祭の実行委員会はクラウドファンディングを立ち上げて支援金を募り、補償に充てることになりました。

1人当たり1万円を補償することができる400万円を目標に始めたところ、それを上回る支援が寄せられたため、目標を800万円に引き上げて今月22日まで呼びかけを続けていて、これまでに730万円余りが寄せられています。
音楽祭の実行委員長で、自身も音楽家としてステージに立つ亀田誠治さんは「小さなライブハウスから大きなドーム、そして海外での公演までさまざまな現場に同じスタッフが関わっている実情があります。音楽業界はワンチームで動いているので、そのチームを支えるスタッフはただ一人とも欠いてはいけないと思います」と支援の意義を訴えたうえで、「それぞれが何十年と培ってきたたくみの技や音楽への思いが途絶えてしまうことは絶対にあってはなりません。これを機に、音楽文化のことを思い、未来につなげていこうという思いが広がるきっかけにしたい」と話しています。