“テレワークうつ”を防ぐために

“テレワークうつ”を防ぐために
「満員電車で出社する必要がない」などと賛成する意見も多い、テレワーク。その一方で心療内科の医師を取材するとうつ病のリスクを指摘する声が出ています。慣れない在宅勤務のストレス。仕事とプライベートの境目がわからなくなり長時間労働につながる懸念もあります。いま、企業の間で“テレワークうつ”を防ぐための取り組みも広がっています。
(ネットワーク報道部記者 成田大輔)

“コミュニケーションがうまくいかない”

東京都内の心療内科を取材すると在宅勤務などのテレワークで悩む人が増えているといいます。

金融機関で働いている女性は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて始まったテレワークと出社での勤務を繰り返す中で、不眠やうつの症状を訴えています。
女性に話を聞くとテレワークができる端末が全員分ないので、社員2人で1台を渡し合いながら働いているといいます。

さらに決済にははんこが必要なため、出社している3割の社員に業務が集中。休憩する余裕もないといいます。逆に在宅勤務の時には、出社している上司にささいなことでお願いをしないといけないこともあるほか、社員の間でコミュニケーションがうまくとれずにストレスを感じる日々が続いています。
金融機関で働く女性
「寝つきが悪かったり、朝起きても疲れがとれなかったりして、体も精神的にもすごいしんどい状態です。テレワークの人、会社に出勤している人、上司、社員全員が顔を合わせているわけではないので、連想ゲームじゃないですけれど、どこかで話が食い違ったりということがあって」

6月、7月が注意

心療内科の医師、浅川雅晴さんは今後は“テレワークうつ”が増えるおそれがあると警鐘を鳴らします。
浅川医師
「大きな環境の変化があると自律神経が乱れて、具合が悪くなるなどの体の症状は出るけれど最初の1、2か月は仕事ができてしまう。無理をしていると突然、うつ症状が出るのでそこが怖いところです。例年だと『5月病』という言葉が聞かれますがことしは新型コロナウイルスの影響で4月、5月からテレワークが広がり、働き方に大きな変化がありました。ストレスを感じながら働き続けているケースも多いと思いますし、6月、7月に体調を崩す人が増える可能性があります」

在宅環境を変えようという企業も

在宅で働く社員のために、職場環境を改善しようと動き出したのが、東京・港区のIT企業「Chatwork」です。
社員は129人。新型コロナウイルスの感染拡大を受けてことし3月下旬から社員全員がテレワークとなり、緊急事態宣言が解除された後も、基本的にテレワークで働いています。

会社では初めての在宅勤務に戸惑う社員からの相談を受け付けるために、在宅勤務のノウハウを共有するためのグループチャットを設けました。すでに在宅勤務を経験してきた社員からは、「意識的に席を離れる」「家事で気分転換する」などと、メリハリをつけるためのアイデアが紹介されていました。
さらに、社員同士がコミュニケーションをとれるよう自由参加のオンラインランチの場も設けました。直接、オンラインで打ち合わせをする同僚以外とのコミュニケーションが不足する中で、気軽に雑談を言い合える時間を設けているといいます。
自宅での仕事を快適にするグッズへの補助も欠かせません。購入費用の半額を5万円まで補助(年間上限15万円まで)する制度を新たに導入。この男性はタブレット端末に加えて、腰を痛めないように座椅子のクッションを購入しました。
男性社員
「オンラインでお客さんと商談をしているのですが、クッションがあるとないとでは、一日の疲労感が全然違います。また孤独感を感じずに会社の人とつながっていられる環境を作ってくれているので、そこは働きやすいです」
内田さん
「住宅は住むための環境で、仕事をするための環境ではないので、そういったところでも従業員が働きやすい環境を作らなくてはいけないと考えました。いちばん重要なのは、コミュニケーションと情報共有で、一人で自宅で黙々と仕事をするだけではかなりのストレスがかかります。オンライン上でつながりを認識できる環境を用意するのがすごく大事だと思います」

オンとオフの切り替えが大切

一方、働く側も意識を切り替える必要があると、心療内科の浅川医師は指摘しています。
浅川医師
「テレワークをする場合は、仕事はここまでに終わらせる、ここからはプライベートの時間だから遊ぶ、オンとオフの使い方が大切です。また部屋の中でも、仕事をする場所、プライベートな場所を分けるなどすると気持ちの切り替えにつながります。また、対面のコミュニケーションでは相手の顔色や声のトーンで感情が伝わりますが、テレワークでは文字のやり取りが増え誤解が起きやすいので、相手への配慮も忘れないでほしい」

“テレワーク元年”新たな世代は

思いがけず始まったテレワーク元年。その中で育っているのが新入社員たちです。

都内の人材コンサルティング会社「リクルートマネジメントソリューションズ」では、新入社員9人がオフィスに出社できないまま、2か月自宅での研修が続きました。
想像していたものとは違う新社会人生活が始まりましたが、自分たち新入社員の境遇を知らせる社内報を作ったり、オンラインでの採用説明会のイベントを担当したりと、自分たちが今できることに一つずつ取り組みました。
戸惑いながらも、今の状況を前向きに捉えているようです。
新入社員の女性
「私たちの会社の中にもこの状況を経験した人はいないと思うので、悲観的に捉えすぎずに工夫して、新たな道を作って行ければいいのかなというのが今の気持ちです」
新入社員の男性
「自分たちはテレワークが基準というところからスタートしているので、この強みを生かせたらいいと思います。対面できなくても、対面の時と同じような価値を発揮していけるよう、この経験を生かしていきたいです」
新人研修を担当した上司も、オンラインで新しいビジネスが広がると新たな世代に期待しています。
研修を担当した桑原さん
「従来の対面型のコミュニケーションは、上司部下、先輩後輩という上下関係になりやすかった。しかし、ビデオ会議などオンラインのコミュニケーションは、会議室での会議のように座席が決まっておらず、与えられている画面の面積も同じでフラットな関係になりやすい。立場や役割を超えて意見を出し合いやすい状況なので、新しいビジネスを生み出し、組織を変える大きなマインドをもってトライしてほしいと思う」