遠洋マグロ漁船 南アフリカ入国制限で船員補充できず足止め

遠洋マグロ漁船 南アフリカ入国制限で船員補充できず足止め
遠洋漁業に出ている、静岡県の焼津漁業協同組合に所属する2隻のマグロ漁船が、新型コロナウイルスの影響で船員が南アフリカに入国できず、停泊先の港で身動きがとれない状態になっていることが分かりました。
焼津漁業協同組合によりますと、所属する2隻の遠洋マグロ漁船が南アフリカの主要都市、ケープタウンの港に停泊したままだということです。

このうち、ことし3月下旬に入港した1隻は体調を崩して帰国した機関長の代わりに、別の機関長を日本から派遣する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で入国が制限されて船員を補充できず、船を動かせない状況です。

船内には十分な量の食料があるものの、日本人を含む船員24人に上陸許可が出ず、2か月以上、船内にとどまったままになっています。船を運航している会社との間では連絡が取れていて、船員の体調に問題は無いということです。

また、もう1隻は2月上旬にケープタウンに入港しましたが、船員が日本に帰国後、南アフリカへ入国ができなくなり、船だけが停泊したままだということです。

ケープタウン沖では4月から7月にかけてミナミマグロの漁が最盛期ですが、この状態が続けば、今後の漁獲量への影響が懸念されるということです。

焼津漁業協同組合市場部の青木康晴部長は「漁が本格化する時期にマグロがとれないだけでなく、外出自粛によって飲食店でのマグロの需要が低下している。感染を防ぎながらの漁を続けなければならず、漁業関係者は苦しい状況にある」と話しています。

マグロの取り引き価格低下 漁師の感染予防…厳しい経営

マグロの漁獲量が日本一の静岡県では、新型コロナウイルスの影響で、外出自粛などによるマグロの取り引き価格の低下や漁師の感染予防対策などで、漁業関係者は厳しい経営を強いられています。

焼津漁業協同組合によりますと、飲食店で刺身などで提供される、身の甘みが強く人気が高いミナミマグロは、例年と比べると3割ほど取り引き価格が下がっているということです。外出の自粛などの影響で需要が低下し、この漁協の大型の冷凍庫はミナミマグロの在庫がほぼ満杯の状態で、漁のあと運搬船が3か月以上、水揚げを待つケースも出ているということです。

また、比較的単価の安いビンナガマグロについては、取り引き価格は回復傾向にあるものの、例年と比べると1割ほど低いということです。

さらに、漁業関係者が対応を迫られているのが船員の感染症対策です。

遠洋のマグロ漁船は、一度の漁が半年以上と、長期間に及ぶため、船内にいる漁師が新型コロナウイルスに感染してしまえば、漁の継続に大きな影響が出てしまいます。そのため漁船を運営している会社では、出航する2週間前から船員をホテルに滞在させて健康観察を行うなどの対策を取っているほか、漁協も港への釣り客などの出入りを制限するなどして感染防止対策を進めています。

こうした対策にかかる費用は、それぞれの会社が負担しなければならないため、漁業関係者は厳しい経営を強いられています。