効果ある?ない? 次亜塩素酸水めぐり混乱広がる

効果ある?ない? 次亜塩素酸水めぐり混乱広がる
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新型コロナウイルスの消毒目的で普及が進んでいた次亜塩素酸水について、経済産業省などが先月下旬「現時点では有効性は確認されていない」という中間結果を明らかにしました。現場では混乱が広がっています。

NITE「現時点では有効性は確認されていない」

次亜塩素酸水は、新型コロナウイルスの消毒に有効だとして利用が進んでいましたが、先月29日、経済産業省や独立行政法人のNITE=製品評価技術基盤機構が、「現時点では有効性は確認されていない」とする中間結果を明らかにしました。

これを受けて、文部科学省が学校で噴霧器による散布を行わないよう通知したほか、公共施設や飲食店、スーパーなどでも次亜塩素酸水による消毒を取りやめるところが相次いでいます。
このうち横浜市のタクシー会社では、SNSなどでの情報をもとに、入手が難しくなっていたアルコール消毒液の代わりになると考え、2月下旬に次亜塩素酸水を合わせて320リットル分購入したということです。

およそ600台の車両の内部の消毒のため、ノズル式の噴霧器で毎日散布していましたが今はやめ、運転席と後部座席の間にシートを張るなど別の対策に切り替えています。

タクシー会社の小関正和係長は「当時は、次亜塩素酸水もすぐ売り切れてしまうと思い購入した。不確かな情報に振り回されていた部分もあるが、乗客と乗員を守っていくためにも有効性があるか、早く結論を出してほしい」と話していました。

次亜塩素酸水については一部の研究者やメーカーが参加する団体が「新型コロナウイルスの消毒に効果がある」としていて、経済産業省などは「引き続き検証を進める」としています。

急速な普及 アルコール消毒液の不足も影響か

「次亜塩素酸水」は、なぜ急速に普及したのか。

専門家や民間の会社による分析では、1月下旬にはツイッターで新型コロナウイルスに有効だとする情報が投稿されていたことが確認されました。

同じころ、次亜塩素酸水を使った消毒のための商品や噴霧器を設置する様子なども投稿されるようになります。

普及にはアルコールの消毒液が全国的に不足し、品薄状態が続いたことも影響したとみられています。

次第に公的な機関や学校、それに飲食店でも次亜塩素酸水を導入するところが増えていきました。

一方、この間厚生労働省や経済産業省から効果について明確な説明はありませんでした。

ツイッターの投稿の分析では「コロナ」と「次亜塩素酸水」の2つの言葉を使った投稿は1月には810件でしたが、2月には4130件3月には6960件と急激に増え4月には1万9160件に上っていて、SNSを見て購入した人も多かったとみられています。

専門家「情報の見極めが重要」

次亜塩素酸水について、ネット上での情報の広がりを分析した東京大学の鳥海不二夫准教授は「最初から『アルコール消毒液の代わりになる』という前提で情報が拡散し、多くの人が効果があるという情報を受け入れたとみられる。その状況で公的機関から突然『効果があるか分からない』という情報が出されたため、混乱が生じたのではないか」と話しています。

そのうえで、「まだ結論が出ておらず、今後の情報を慎重に見極めるべきだ。色々な情報がある中で、誤った情報に引き寄せられる可能性もあり、出どころをきちんと確認する姿勢が重要だ」と指摘しています。