介護事業所の半数で利用者の身体機能など低下 新型コロナ影響

介護事業所の半数で利用者の身体機能など低下 新型コロナ影響
新型コロナウイルスの影響について、介護現場を対象に専門家が行った調査で、半数の介護事業所で利用者の身体機能や認知機能の低下が指摘されていることが分かりました。専門家は「高齢者を支えるためにも介護現場への支援策を検証すべきだ」と指摘しています。
この調査は、新型コロナウイルスによる介護現場への影響と必要な支援策を調べようと、慶應義塾大学の堀田聰子教授らが先月、インターネットを通じて行いました。

このうち介護事業所を対象にした調査では、5714の有効回答が得られました。

それによりますと、利用者への影響やリスクに関する質問では、複数回答で、
▽日常生活の動作の低下と答えた事業所が51%
▽認知機能の低下と答えた事業所が46%にそれぞれ上りました。

外出や交流の機会が減ったことなどが影響しているとみられています。

また、この調査では介護事業所の経営をめぐる厳しい状況も明らかになっていて、事業所全体の半数で利用控えやキャンセルがあったほか、通所系の事業所の4割で収支が厳しくなったということです。

調査に当たった堀田教授は「介護現場では、人、物、感染防御の知識や技術などの支えがぜい弱な中で、新型コロナウイルスへの対応をせざるをえなかった。高齢者を支えるためにも介護現場への支援策を検証すべきだ」と指摘しています。

通所系の介護事業所で指摘する声多く

今回の調査で身体機能や認知機能の低下を指摘する声が多かったのは、利用控えが相次いだデイサービスなどの通所系の介護事業所です。

日常生活の動作の低下を指摘したのは69%、認知機能の低下は58%と、どちらも全体の平均を上回りました。

一方で、調査では、高齢者の機能低下を防ごうと、現場でさまざまな工夫をこらしていることも分かりました。

介護サービスの利用を自粛し家にいる高齢者に対しては、いすに座ってでもできる運動を紹介するなどして体を動かす機会を増やしてもらう、作業療法士に依頼して個人に合った自主メニューを作成し電話で伝える、といった取り組みがみられました。

また、高齢者が入居する施設でも、ふだんは職員が感染予防のために行っている「手すりなどの拭き掃除」を利用者にも一緒に取り組んでもらい、運動量を確保しているという例がありました。

堀田教授は「介護事業所はさまざまな工夫をしながら高齢者の生活を支えているが、今回のような事態では事業所だけでなく地域全体で高齢者を支えていく必要がある。行政はそれがうまく機能したのかをきちんと検証しなければならない」と指摘しています。