コロナで自粛していた旅行 みんないつから行く?

コロナで自粛していた旅行 みんないつから行く?
新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた旅行。
「いつ再開する?」「どこまで行く?」
そんな旅行への意識を探る調査結果がまとまりました。
(ネットワーク報道部 記者 野田綾/斉藤直哉/田隈佑紀)

半数近くが“日本中どこでも旅行する”

調査を行ったのは、熊本県内の観光協会の有志でつくる団体です。
5月31日から6月2日にかけてWEB上でアンケート調査し、全国3000人余りから回答を得ました。
回答からは、消費者の観光への前向きな意識が見て取れます。
<旅行の時期「秋」が6割弱>
「今年度、いつごろ宿泊を含む旅行をしたいか?(複数回答可)」という質問に対しては、「秋頃(9~11月)」という答えが59%と最も多く、次いで「8月」が43%、「今年度は行かない」という人は12%にとどまりました。
<半数近くが「日本中どこでも」>
「今年度、旅行に行くならどの範囲まで?」という質問には、「日本中どこでも」が47%と最も多く、「自分の住む都道府県の隣県やエリア内」が29%、「(再開したら)海外まで行きたい」が15%となりました。
<旅行のきっかけは「キャンペーン」「感染防止策」も>
「これがあれば旅行に行くことを検討する」と、この夏、旅行に行くきっかけを聞いた質問(複数回答可)では、「キャンペーン(割引クーポンなど)の実施」が49%と最も多かったのですが、これに続いたのが「観光地・観光施設からのリアルタイムの情報」で35%、「観光地・観光施設での感染防止策の取り組み情報」で30%でした。
感染対策などの情報も重視していることが伺えます。
<「人数制限」必要>
「基本的な感染症対策に加え『ないと嫌だ』と思う」感染対策について、飲食やイベント、宿泊など種類ごとに聞いた質問(複数回答可)では、「人数制限」が飲食やイベントなどで60%を超えて最も多く、宿泊でも48%に達し、「3密」を避けたいという意識を反映した結果となりました。

感染対策の情報公開を

熊本県内の団体がこの調査を行ったのは、4年前の熊本地震で観光客が減少した経験があったからです。
今回、新型コロナウイルスの影響を受けた観光産業の回復に向けては、まず消費者の意識を知ることが欠かせないと考えたのです。
調査に協力した東海大学観光ビジネス学科の小林寛子教授は、調査結果を次のように分析します。
小林寛子教授
「今回、自宅待機が続いた反動で外に出たい、旅行したいという気持ちが想定以上に高まっていると感じました。一方で、感染対策への意識は高く、実際に行くにあたっては、感染対策を実施しているだけじゃなく、その情報を公開してほしいという意向が強い」

観光業界の対策は

観光業界にとっては、感染防止策をとりながら、観光客の消費額を維持しなければなりません。
そのためには、それぞれの施設単独ではなく、観光地をあげた取り組み、つまり「点」ではなく「面」での取り組みが必要になると、小林教授は指摘します。
小林寛子教授
「3密を避けるため人数制限を行いながら消費額を維持するには、例えば1泊を前提に考えられていた観光を、2泊3泊、あるいはリピーターで来てもらうようにする必要があります。このような変化を促すには地域全体で連携し、地域の魅力を紹介していくことが必要です。例えば地元の飲食店を紹介すれば提供できる食事の幅が広がって、観光客の地域での滞在日数の増加も期待できます。3密の回避にもつながるので、事業者どうしの連携が重要です」

地域での連携模索

熊本県内では、地域の観光事業者どうしが連携する「面」の取り組みが始まろうとしています。
熊本県天草市では、およそ10の宿泊事業者が参加して5月から勉強会を始めました。
訪れた人たちにより長く滞在してもらおうと、地元の歴史や食材、郷土料理について学んだり、宿泊施設を起点にした観光ルートをつくろうとしたりしています。
主催した馬場昭治さんは「観光に関わっている人も意外と地元について知らないことが多いのが現状でした。これをきっかけに、地域での連携を深めて、訪れる観光客にしっかりと魅力をPRできるようにしていきたいです」と話していました。

面で勝負 すでに実施された事例も

点ではなく、地域をあげて面として観光客の呼び込みを図る。
北海道の十勝地方でその取り組みが行われていました。
この地域には、美しい庭園などが点在しています。
これに目をつけたのが、十勝の帯広市にある北海道ホテルの社長、林克彦さん。10年前、それぞれの庭園などにつながる国道を「北海道ガーデン街道」と名付け、隣接する地方の富良野市などにある庭園とを結ぶ観光ルートとしてPRし始めました。
そのうえで、地域の自慢のグルメのほか、ホテルや温泉宿も紹介。単独では「点」であった庭園どうしを「線」としてつなぎ、地域の飲食店や宿泊施設を加えて「面」として、十勝の観光をPRしたのです。
その結果、庭園などを訪れた人の数は年々、増えていったということです。
林克彦さん
「観光とは食べる、見る、泊まる、そして移動するがセットになっていなくてはいけません。そのために、地域の連携は必要不可欠だと考えました」

コロナに負けない!新たな地域の魅力PRへ

十勝の観光も新型コロナウイルスの影響を受けたということですが、林さんは、本格的に観光が再開することを見越した新たな戦略に乗り出そうとしています。
それは地域をあげての「サウナツアー」。
観光客に、
▼地域のホテルにあるサウナをめぐってもらい、
▼その際に医師から健康作りへのアドバイスを受け、
▼地域の食材を使って開発したサウナ飯を味わってもらおうという計画です。
3密を避けるサウナの利用のしかたも紹介するなどして、客を呼び込もうというねらいです。
「点」を「面」にするには、観光に関係するさまざまな事業者などの協力が欠かせず、理解を得るのに難しいと感じることもあるそうです。
それでも林さんは、新型コロナウイルスの影響を受けた今だからこそ、「面」の実現に向けた協力を取り付けなければならないと感じていると言います。
林克彦さん
「今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、地域をあげた助け合いの動きが各地で見られたように、地域のつながりの大切さに多くの人が気付いたと思います。地域のつながりと信頼関係を深め、協力体制を築くことが観光には欠かせないと思います」

“観光の回復には長い時間”

本格的な観光の再開に向け、まずは地域の人たちを客として呼び込もうという戦略を打ち出す企業もあります。
国内39か所のリゾート施設や温泉旅館を展開する「星野リゾート」です。客室でのチェックインや、専用アプリで大浴場の混雑具合を遠隔で確認できる取り組みなど感染防止対策を進めていて、この夏の時期にあわせた予約が戻りつつあるということです。
それでも代表の星野佳路さんは、すぐに以前の水準まで観光客が戻ることはありえないとみています。
星野佳路さん
「はじめに施設の近くに住む人が旅行に訪れていただき、そして、だんだんと大都市圏に広がっていって、ワクチンが開発された1年半や2年後に少しずつインバウンド需要が戻ってくるという長いスパンで見ています」

地域の力 顧客としても

そこで本格的な観光の再開に向け、まずは地域の人たちを客として呼び込む、いわゆる「マイクロツーリズム」に取り組むというわけです。
施設の近くに住む農家の人などに、ふだんの生活からひととき離れて非日常を味わってもらおうという戦略で、高度成長期までは各地の温泉旅館で一定のニーズがあったということです。
星野佳路さん
「日本の観光産業では、コロナ前はインバウンド需要の取り込みが急速に伸びていましたが、実は国内の旅行者の消費額のほうが多かったのです。今は、この国内の需要をどう維持していくかが重要になっていて、マイクロツーリズムを手始めに、日本の各地を訪れたことがない若い世代の旅行客を呼び込んでいきたいです」

改めて“地域重視”の観光を

冒頭のアンケート調査の結果を分析した東海大学の小林寛子教授も、「地域」を重視した取り組みが、今の日本の観光産業には欠かせないと指摘します。
小林寛子教授
「これまで海外から多くの観光客が来てくれていたので、日本の観光産業は、地域の人たちにあまり目が向いていなかった面があります。地元の人でも、行ったことない場所、季節ごとに楽しめる場所はまだまだたくさんあります。多くの人の間で旅行したいという気持ちが高まっている今だからこそ、旅行先として選んでもらうには、感染防止策を行うとともに、地域の素材をどう発掘して、どうPRしていくか、知恵を絞らなければなりません」