ミュージシャンが中傷被害語る 集団感染のライブハウスに出演

ミュージシャンが中傷被害語る 集団感染のライブハウスに出演
新型コロナウイルスの集団感染が起きた大阪のライブハウスのイベントに出演していたミュージシャンがNHKの取材に応じ、「音楽活動をやめろ」などと中傷する内容のメールをおよそ50通送られたことなど被害の実態を初めて語りました。
神戸市を拠点に活動するシンガーソングライター、福見健二さんはことし2月、大阪 北区のライブハウスで開かれた音楽イベントに出演し、その後、会場で新型コロナウイルスの集団感染が起きました。

福見さん自身の感染は確認されませんでしたが、ネット上に出演者のリストが出回り、その後、匿名でのメールが相次いで届くようになったといいます。

メールには「これ以上コロナをまき散らすな」「誰もお前の音楽なんて求めていない」などと書かれ、およそ50通に上ったということです。
福見さんは「直接言われるのなら相手と対話ができるが、見えないところから一方的に非難され、言い返すこともできずにただ、我慢するしかなかった。ウイルスより人間が怖くなった」と話しています。

同じイベントに出ていたほかのミュージシャンや関係者にも非難や中傷が相次ぎ、「お前らがいなかったらコロナは広まっていなかった」「ライブハウスを燃やす」などというメールを送られて、家から出られなくなった人もいたということです。
福見さんは今はライブハウスでの活動がほとんどできないため、動画を配信する形で活動を行っていて、「1人でも自分の歌を待ってくれている人がいるかぎり、音楽を続けていきたい」と話しています。

感染者や関係者など 中傷受けるケース相次ぐ

新型コロナウイルスに感染した人や関係者などが中傷を受けたり差別的な対応を受けたりするケースが依然として相次いでいます。

法務省によりますと、全国の法務局に電話などで寄せられた新型コロナウイルスに関連する中傷や偏見などの相談は先月末までにおよそ1200件に上っています。

具体的には、感染したことや検査を受けたことがネット上で拡散し嫌がらせを受けたといった訴えのほか、医療従事者やその家族であることを理由に、施設などの利用を断られたというケースも多いということです。

法務省はインターネット上の中傷などの書き込みが悪質で違法性があると判断した場合にはサイトの運営者に削除を要請することもあるとしています。

東京法務局人権擁護部の佐藤美智代第一課長は「特に4月以降は、新型コロナウイルスに関する相談が増えている。不確かな情報に惑わされて差別や中傷につながっているケースが多く正確な情報を把握して冷静な行動をとってほしい」と話しています。

電話での相談は「みんなの人権110番」、0570-003-110で、平日の午前8時半から午後5時15分まで受け付けているほか、法務省のホームページからも相談が可能です。