WHO アフリカでコロナ感染者の急増傾向に強い懸念

WHO アフリカでコロナ感染者の急増傾向に強い懸念
アフリカでは新型コロナウイルスの感染者が合わせて20万人に迫り、WHO=世界保健機関は、「南アジアや中南米と同じような急増の傾向がアフリカのいくつかの国でみられる」と述べ、強い懸念を示しました。アフリカでは、長期間にわたってウイルスが居座り続ける可能性も指摘されていて、WHOは対策の強化を呼びかけています。
AU=アフリカ連合の疾病対策センターのまとめによりますと、アフリカの国々の新型コロナウイルスの感染者は9日の時点で合わせて19万7313人となり、死者は5300人を超えています。

アフリカでは、3月ごろから多くの国で、厳しい外出制限や航空便の停止などの対策が講じられ、当初、感染者の急速な増加は抑え込まれていました。

しかし、4月ごろから感染の拡大が徐々に進み、先月7日に感染者数が5万人となってから1か月でおよそ4倍に増加しています。

これについてWHOで危機対応を統括するライアン氏は8日の記者会見で、「いくつかの国では、中南米や南アジアでみられているような感染の急拡大が起きており、アフリカには重大な懸念を抱いている」と述べ、強い警戒感を示しました。

WHOは、アフリカでは感染のホットスポットが次々に生まれてくすぶるように広がり、ウイルスがアフリカの人々の生活の中に数年にわたって居座り続けると懸念しています。

そのうえで、感染の抑え込みに失敗した場合、サハラ砂漠以南の国々を中心に最大で4400万人が感染し、19万人が死亡するおそれがあるとしています。

一方で、感染が拡大しているにもかかわらず当初行っていた外出制限や経済活動への規制を緩めた国もあり、エイズや、エボラ出血熱、それにはしかなどほかの感染症のまん延も続く中、医療体制がひっ迫することが懸念されています。

アフリカの医療に詳しい東京女子医科大学の杉下智彦教授は「アフリカで感染者が増えていけば、そこから世界に感染が広がり、世界経済をまた止めなければならないという悪循環に陥りかねない。今のうちに手を打たなければ、手遅れになってしまう」と話しています。

WHO南アフリカ事務所所長「長く居座る」

WHO=世界保健機関の南アフリカ事務所のオーウェン・カルワ所長は、NHKのインタビューで新型コロナウイルスのアフリカでの広がりについて「突然増えて突然減少するのではなく、長期間、くすぶるように続く。今後も長く居座り続け、対応も続けなければならない」と述べ、長期的な対策が迫られることになるとの見通しを示しました。

また、アフリカでの感染者や死者がほかの地域に比べて少ないことについては、アフリカの人口が若いことや、世界のほかの地域に比べてウイルスが遅れて入ってきたことなどが考えられるとしています。

その一方で「そもそも検査態勢が不十分であることは指摘せざるをえない。感染者や死者が少ない傾向が今後も続くとは限らず、決して、対策を緩めることはできない」と強調しました。

世界の感染とアフリカ

アフリカでの新型コロナウイルスの感染は、アジアや欧米と比べて、遅れて拡大しています。

新型コロナウイルスは、ことし1月、中国の湖北省武漢で感染が相次ぐと、日本や韓国のほか、東南アジアなど周辺国に広がりました。

ヨーロッパでの感染は3月中旬から4月にかけてピークとなり、スペインやイタリア、フランスなどでは、1日あたりの感染者数が連日、数千人となりましたが、一方で、3月末時点でのアフリカでの感染者は全体でおよそ5000人にとどまっていました。

4月にはいると、アメリカでの感染が急速に拡大し、1日あたりの感染者数が3万人をこえる日が続きました。

5月には、中南米で感染が拡大し、ブラジルでは1日あたりの感染者数が連日1万人を超えました。

アフリカでも4月に入ってから感染の拡大が徐々に加速し、先月7日に感染者数が5万人となったあと、2週間後の22日には10万人に倍増しました。

さらに18日後の今月9日には、20万人近くにまで増加しています。

先月半ばには、アフリカ54か国すべてで感染者が確認されています。

なかでも、9日の時点で南アフリカが5万879人、エジプトが3万5444人、ナイジェリアが1万2801人など経済規模の大きい国で感染者も多くなっています。

一方、感染者の累計が1000人以下の国も多く、東部のウガンダなど死者が出ていない国もあります。

アフリカの多くの国での感染のピークはこれからだと予測されていて、WHOアフリカ地域事務局は抑え込みに失敗すれば、最大で4400万人が感染し、19万人が死亡するおそれがあると警告しています。