新型コロナで中止のセンバツ 8月に甲子園で交流試合 高野連

新型コロナで中止のセンバツ 8月に甲子園で交流試合 高野連
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日本高校野球連盟は新型コロナウイルスの影響で中止になったセンバツ高校野球に出場が決まっていた32校をことし8月、甲子園球場に招き、各校1試合ずつの交流試合を行うことを決めました。
高野連ではことし3月に新型コロナウイルスの影響でセンバツ高校野球が中止となったことを受け、出場が決まっていた32校の救済策を検討してきました。

こうした中、先月20日に夏の全国高校野球の中止が決まり、高野連は甲子園球場が使われなくなった8月にセンバツに出場予定だった32校を招待し、交流試合を行うことを10日の理事会で決めました。

大会は各校がそれぞれ1試合ずつ行う方式で、8月10日から12日までと15日から17日までの合わせて6日間行われ、1日に最大3試合が実施されます。

この交流試合は公式戦として実施し、9回が終わって同点の場合に引き分けとするか、延長戦でタイブレークを行うかどうかは今後、検討するとしています。

またベンチ入りメンバーは、センバツや夏の甲子園では18人までですが、今回の交流試合では1人でも多くの3年生に出場機会を与えるため、20人までベンチに入ることができます。

スタンドには原則として観客は入れませんが、今後、新型コロナウイルスの感染状況を確認しながら保護者や控え部員の観戦を検討していくということです。

交流試合の組み合わせ抽せんは来月18日にオンラインで行われ、開会式もオンラインでの開催を検討することにしています。

交流試合の招待校32校

交流試合に招待されたのは、ことしのセンバツ出場が決まっていた32校です。

北海道は2校で、
白樺学園と21世紀枠で初めてのセンバツ出場が決まっていた帯広農業です。

東北は3校です。
山形の鶴岡東高校と宮城の仙台育英高校、それに21世紀枠でセンバツ出場が決まっていた、福島の磐城高校です。

東京を含む関東は6校です。
群馬からは桐生第一高校と、去年秋の関東大会を制した高崎健康福祉大高崎高校、埼玉の花咲徳栄高校、山梨学院、去年秋の東京都大会で優勝した国士舘高校、神奈川の東海大相模高校です。

北信越は、2校です。
いずれも石川で去年秋の北信越大会で優勝した、星稜高校と日本航空石川高校です。

東海は3校です。
静岡の加藤学園は春夏通じて初めての甲子園出場が決まっていました。このほか、去年秋の明治神宮大会で優勝した、愛知の中京大中京高校と県立岐阜商業です。

近畿は6校です。
奈良からは智弁学園と、去年秋の近畿大会を制した天理高校の2校です。大阪からは、おととし春夏連覇を達成した、大阪桐蔭高校と去年夏の甲子園で初優勝した履正社高校の2校です。このほか、智弁和歌山高校と兵庫の明石商業が招待されました。

中国は4校です。
去年秋の中国大会で優勝した岡山の倉敷商業、鳥取城北高校、広島新庄高校、島根の平田高校です。平田高校は21世紀枠で春夏通じて初の甲子園出場が決まっていました。

四国は、2校です。
香川の尽誠学園、高知の明徳義塾高校です。

九州は4校です。
長崎の創成館高校、大分の明豊高校、大分商業、鹿児島城西高校です。鹿児島城西は、春夏通じて初めての甲子園出場が決まっていました。

招待した高校が出場できなくなった場合は、原則としてセンバツの際に選ばれていた、各地区と21世紀枠の補欠校が出場するということです。

高野連八田会長「悔いなき大会に」

日本高校野球連盟の八田英二会長は、10日会見を開きました。
この中で八田会長は、「きょうからは気持ちを新たに部活動に取り組んでもらい、甲子園球場に来てほしい。悔いのないように大会に臨んでほしい。試合終了の声とともにこれまでつづってきた部活動日記に力強く終止符、ピリオドを打ってほしい。気持ちを新たに純白のページに次なる挑戦と題した文章を刻み始めてほしい」と参加する球児にメッセージをおくりました。

履正社 岡田監督「感謝のひと言しかない」

去年、夏の甲子園で初優勝した大阪の履正社高校の岡田龍生監督は「選手たちは甲子園でプレーすることを夢見てきたし、去年夏の優勝をスタンドやベンチで見ていた選手たちは、『ことしは自分たちだ』という強い気持ちで苦しい練習に取り組んできました。甲子園で試合ができることについては本当に感謝のひと言しかありません」と喜びを語りました。

そして、8月の交流試合に向けては「選手には、たくさんの方々に支えられて試合ができるという感謝を持って試合をしてほしいと伝えます。思う存分、プレーをして、次のステップへ行くための大きな自信になるような試合をしてもらいたい」と期待していました。

花咲徳栄 岩井監督「力を出し切れるよう取り組む」

埼玉県の花咲徳栄高校の岩井隆監督は報道陣の電話インタビューに応じ「まずは1試合でも甲子園という場所に立てることに感謝したい。歴史上初めてのことなので、選手も戸惑っていて調整方法が難しいが、1つの経験としてとらえて、力を全部出し切れるよう取り組んでいきたい」と話していました。

県立岐阜商業 鍛治舍監督「燃え尽きて灰になるつもりで臨む」

県立岐阜商業の鍛治舍巧監督は記者会見を開き「3年生がこのまま終わるわけにはいかないと思っていたので、ほっとした。出場する選手の後ろには全国の仲間がいることを忘れず、燃え尽きて灰になるつもりで臨みたい」と意気込みを語りました。

また、今後については県教育委員会の方針に従って15日から全体練習を再開する予定で「グラウンドでの練習が3か月以上できていないので、実戦に耐えられる体力をつけたい。短い期間だが万全の準備をさせてあげたい」と話しました。

このあと鍛治舍監督は選手たちにテレビ会議システムで交流試合の開催を伝え、キャプテンの佐々木泰選手は「3年間やってきたことを1試合で発揮できるよう頑張りたい」と抱負を話しました。

創成館 稙田監督「いろんな思いを込めて戦ってほしい」

長崎県諫早市にある創成館高校では、稙田龍生監督から選手たちに甲子園球場で交流試合に出場できることが伝えられました。

報道陣の取材に応じた稙田監督は「例年と違って甲子園という舞台がないため、どうしても気持ちが切れたり揺れ動いたりする部分があったので感謝したい。選手たちにはいろんな思いを込めて1試合を戦ってほしい」と話しました。

キャプテンの上原祐士選手は「春のセンバツをはじめいろいろな大会が中止になってどこにもぶつけられない思いがあったのでうれしい。甲子園の舞台に立てない人の分も一生懸命やって、勝利を勝ち取りたい」と話しました。また、猿渡颯選手は「甲子園という目標の舞台で持ち味のバッティングをいかしてホームランを打ちたい」と話していました。

磐城 主将の目に涙

福島の磐城高校では課外授業を受けていた3年生が午後5時半に練習に合流し、吉田強栄校長から交流試合開催の知らせを受けました。

そして、渡辺純監督が「甲子園で試合ができる。最高だな。みんなの無念が晴れてうれしい」などと伝えると、キャプテンの岩間涼星選手は目に涙を浮かべていました。

その後、選手たちは円陣を組み、岩間選手が「開催に向けて動いてくださった方々に
感謝の気持ちを忘れず、甲子園で『やり切った』と思えるように1日1日大事に頑張っていきましょう」と呼びかけ、練習を再開させました。

磐城 木村前監督「喜ぶ顔浮かぶ」

福島県高校野球連盟の副理事長で、磐城高校を46年ぶりのセンバツ出場決定に導いた木村保前監督は、「センバツに続いて夏の甲子園も中止が決まり、全体練習もなかなかできず苦しい時期が続いたと思います。そうした中で甲子園での交流試合の開催が決まり、彼らの喜ぶ顔が浮かびます。野球の神様が遅ればせながら春のご褒美を彼らにくれたのかなと思います。彼らがコバルトブルーのユニフォームを着て甲子園で野球をしている姿をどんな形であっても見守りたい」と晴れやかな表情でことばを選びながら話していました。

日本ハム 中田選手「思う存分楽しんで」

おととし春夏連覇を達成した大阪桐蔭高校出身で、日本ハムの中田翔選手は「球児たちにとっては最高の瞬間になると思います。甲子園という最高の舞台で思う存分楽しんでもらいたい」とコメントしています。

日本ハム 大田選手「人生の糧に」

神奈川県の東海大相模高校のOBで日本ハムの大田泰示選手は「新型コロナウイルスの影響で自粛期間が続いたこともあり、不完全燃焼な気持ちもあることと思いますが、この経験を自分自身の財産にし苦しかった思いや辛い思いを用意された舞台で気持ちを込めてプレーしてもらいたい。そして、人生の糧にしてください」とコメントしています。

ヤクルト 村上選手「甲子園で野球ができるのは誇れること」

熊本の九州学院で、夏の甲子園に出場した去年のセ・リーグ新人王、ヤクルトの村上宗隆選手は「甲子園で野球ができるのは人生の中でもすごく誇れることだと思う。高校球児には楽しんでプレーしてもらいたい」と話していました。

甲子園球場の周辺では喜びの声

交流試合開催が決まったことについて甲子園球場の周辺では喜びの声が聞かれました。

70代の男性は「センバツや夏の甲子園の中止が決まって、このあたりも人がいなくて寂しかったのでうれしいです。球児たちも甲子園で試合ができると決まって、喜んでいると思います」と話していました。

30代の女性は「甲子園は毎年、球場で応援していたので、交流試合ができるのはファンとしてすごくうれしいです。球児たちもつらい思いをしてきたと思うので、全力で楽しんでほしいです」と話していました。

高校1年生の女子生徒は「学校で弦楽部に所属していますが、夏の演奏会が中止になってしまったので、球児たちには私たちの分も頑張ってほしいです。ほかの部活動でも練習や大会が再開できるようになってほしいです」と話していました。

歓迎する声が聞かれた一方で、交流試合の感染防止対策を心配する人もいて、20代の男性は「試合の開催は喜ばしいことですが、きちんと感染対策を行って、球児がのびのびと試合できる環境を整備してほしいです」と話していました。

また、小学生の子どもを持つ40代の母親は「開催が決まってとてもうれしいですが、小さい子を持つ親の立場として試合が開催されると、日本全国から人が集まると思うので、感染のリスクを抑える対策をとってほしい」と話していました。

試合での感染防止対策の指針作成へ

日本高校野球連盟は感染リスクを抑えながら交流試合に参加してもらうため、チームの移動に貸し切りバスを活用するなどの対策を取るとともに、試合での感染防止対策のガイドラインも作成することにしています。

交流試合の開催にあたって高野連では、移動の際の不特定多数の人との接触を避けるため、関東から西のチームは貸し切りバスで移動するということです。また、長距離の移動となる北海道と東北の学校については、関西の空港や駅から貸し切りバスで移動するということです。

またチームの滞在期間については、近隣校は日帰り、それ以外の地域でも試合前日と当日の2泊3日以内としています。また、試合での感染防止対策についても高野連が先月、都道府県の高野連による独自の大会に向けて作成したガイドラインをベースにまとめることにしています。具体的には選手や関係者の検温やベンチなどの試合ごとの消毒の実施、水分補給での回し飲みの禁止、さらには素手でのハイタッチや握手を控えることなどを盛り込むことが検討されています。

一方、招待校の選手などに新型コロナウイルスの感染者が出た場合の対応については感染症の専門家の意見を踏まえ検討していくということです。

夏の大会の救済策も 42の高野連が独自大会を開催へ

センバツ高校野球と同様に中止となった夏の全国高校野球の救済策として各都道府県の高校野球連盟は、地方大会に代わる独自大会の開催を検討していて、10日までに合わせて42の高野連が大会を開催する方針を決めています。

NHKの取材によりますと、夏の全国高校野球の中止を受けてことしの夏に独自の大会を開催する方針を決めた高野連は、10日までに全国で42の都道府県にのぼっています。このほか、宮城、神奈川、山梨、福井の4つの県では現在、開催を検討しています。

具体的な大会の方式としては、無観客での開催や、休日のみの開催、各校1試合の対抗戦などのほか、移動による感染リスクを抑えるため、地区ごとにトーナメントを行うなどといった案があがっています。

一方、福岡は新型コロナウイルスの感染リスクが残っているなどとして、全国で唯一、開催しないことを決めましたが、県内の野球部の監督の有志が集まって、学校対抗の交流戦を開催することを発表しています。

高校スポーツ大会 代替大会の動き

野球以外の高校スポーツでも複数の競技で全国規模の代替大会を計画する動きが出ています。

このうち陸上では日本陸上競技連盟がことし10月に広島で高校生を対象にした全国大会を行うことを決めました。

3年生の最後の活躍の場となる大会を求める全国的な声に応えようと開催を決めたもので全国レベルの記録を持った選手を対象に行う方針で感染防止対策として陸連が設定するガイドラインに基づいて実施するとしています。

また、フェンシングではオリンピックの元代表選手が中心となってことし9月に神奈川で、アーチェリーでは用具メーカーが中心となってことし9月に長野で、それぞれ全国大会を開催する計画を進めています。
ともにインターネット上で資金を募るクラウドファンディングを活用して準備を進めています。

このほかレスリングでは国民体育大会が中止になった場合、ことし秋に新潟で代替の全国大会を実施する方針で、空手では、高校3年生を対象にした「形」(かた)の全国大会が今月からオンラインで始まるなど、複数の競技で生徒たちの日頃の練習の成果を発揮できる環境作りが進められています。