文学賞の選考もリモートで…江戸川乱歩賞に佐野広実さん

文学賞の選考もリモートで…江戸川乱歩賞に佐野広実さん
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、文学賞の選考にも新たな方法が取られています。ミステリー小説の登竜門として知られる江戸川乱歩賞は、今回初めてテレビ会議システムで選考が行われ、佐野広実さんの『わたしが消える』が選ばれました。
江戸川乱歩賞は、長編ミステリー小説を対象に応募作の中から最も優れた作品を選ぶ文学賞で、ミステリー小説の登竜門として知られています。

例年、選考委員が集まって受賞作を選んでいますが、ことしは感染拡大を防ぐための初めての試みとして、テレビ会議システムを使った選考が行われました。

選考会は8日に行われ、最終候補に残った4つの作品について、5人の選考委員が2時間余りにわたって議論した結果、認知障害に苦しむ元刑事が、福祉施設に身を寄せる身元不明の老人の謎に迫る物語を描いた佐野広実さんの『わたしが消える』が選ばれました。

9日、オンラインの記者会見が開かれ、佐野さんは「去年亡くなった自分の母親が、認知症だったという実体験をきっかけに書いた作品なので、喜びもひとしおと言いたいところですが、まだ実感が湧かないというのが正直な気持ちです」と話していました。

選考委員を務めた作家の京極夏彦さんは、新たな選考方法について「一人一人の意見をしっかり聞くことができ、むだのない建設的な議論になりました。ただ、受賞後に本人と顔を合わせられないのはちょっと寂しい思いがしました」と話していました。