コロナで世界が変わった デパートは変われるのか

コロナで世界が変わった デパートは変われるのか
5月末、およそ1か月半ぶりに全店舗の営業を再開したデパート最大手の三越伊勢丹。しかし、新型コロナウイルスの感染防止が求められる中、手探りの営業が続き、売り上げがいつ回復するのかは不透明なままです。アフターコロナを見据え、デパートはどう変わるべきなのか、三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長の話からこれからのデパート像を探ります。(経済部記者 仲沢啓)
※インタビューは5月22日に行いました。

コロナが直撃

伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店の2つの本店を中心に、全国に21店舗を展開し、昨年度の売り上げは1兆1000億円に上る三越伊勢丹ホールティングス。しかし、新型コロナウイルスの影響でほぼ全店が休業。4月から5月にかけての売り上げは去年の同じ時期よりおよそ8割も減少しました。外国人旅行者によるインバウンド売り上げは、ほとんど消えました。
緊急事態宣言の解除を受けて、5月30日には東京と埼玉の6店舗で営業再開。52日ぶりに国内の全店舗で営業が再開しました。

店頭では、従業員がフェイスシールドをつけています。高級感のある接客を売りに、コロナ以前は原則として従業員がマスクをつけることすら認めていなかったデパートの売り場は、様変わりしました。

営業面でも、以前のような勢いを取り戻せるかは不透明です。グループを率いる杉江社長は、このコロナショックで、人々の消費行動が大きく変わったと感じています。
杉江社長
「緊急事態宣言が解除されたとしても、お客様が出かける機会・回数は減るでしょう。会社でやっている食品の宅配ビジネスも申し込みがすごく増えていますが、かなりの割合でこれまでネットで買い物をしたことがないという人がいます。今後はネット通販で買うというスタイルに大きく変わっていくのではないでしょうか」

ネット通販 乗り遅れるデパート

一等地に大きな店舗を構えて多くの人を誘客するビジネスモデルをとるデパートは、ネット通販に乗り遅れてきました。三越伊勢丹でも、ネット通販の割合は売り上げのわずか2%程度にとどまっています。コロナの影響で消費者のネット通販へのシフトがさらに加速することが見込まれる中、どう対応していくのでしょうか。
杉江社長
「準備は進めていたものの、ECビジネスはまだまだ発展途上で、ネット通販を利用する人が増える機会であったにもかかわらず、顧客を取り切れていませんでした。今まではどちらかというとお客様がネットで情報を見て、店舗で買い物をするという部分に力点を置いてきましたが、単純に商品をネットに載せて売るということでわれわれは遅れているし(ネット通販の)専業のところには勝てない。ただ、遅れていた分、リアルの店には商品のプロであるバイヤーや、コーディネーションの提案ができる販売員といった非常に専門能力の高いプロがいます。販売員などと1対1でネットを通じて相談ができる機能を導入して、ネット通販での差別化を図っていきたいと考えています」

地方店は大胆に改革できるか

新型コロナウイルスの影響で喫緊の課題となっているのが大都市以外の地方の店舗です。人口の減少に加えて、これまで地方のデパートの売り上げを下支えしてきた団塊の世代の高齢化などもあって、多くの店で売り上げが落ち込んでいます。建物自体の老朽化も深刻ですが、大規模な修繕や建て替えといった投資ができません。コロナの影響でさらなる売り上げの落ち込みも懸念される中で、どのような対策をとっていくのでしょうか。
杉江社長
「地方店は、もともと大胆な改革をしていかないともう生き残れないと思っていましたが、コロナを踏まえるとよりスピード感を持ってやらなくてはいけない。現在、東京の旗艦店の商品をネット通販でも買えるようにする取り組みを進めています。地方の店ではリアル店舗に商品は置かなくても、こうした東京の商品を送って、地方店で比較購買するといったこともできるようになってきます。そうすると今の面積規模は不要になるかもしれないので、お客様の要望に近い形まで縮小し、ローコストで運営しながら、それ以外の部分については場所貸しをしていくような形もこれから検討していかなければならないと思っています」
一方、東京の主力店舗では、よりリアル店舗の魅力を高める必要があると言います。
杉江社長
「定番の商品が普通に置いてある店では来店のモチベーションにつながらない。ネット通販で直接お客様に商品を販売している人たちと組んで、その商品を逆にリアル店舗で見てもらうという取り組みをしたり、全国的には有名ではないけれど限られた商品を扱っているメーカーと組んで新しいプロモーションを図ったりと、そこの店に行かないと出会えないことを提案していかないと集客できない。常に仕掛け・挑戦をしていかなければならないのです」

アフターコロナのデパート像は

呉服店から始まり、さまざまな商品=“百貨”を取りそろえる店として、時代に応じて変化を続けてきたデパート業界。コロナ後に求められるデパート像とはどういう姿なのでしょうか。
杉江社長
「デパートというと近年は婦人服というイメージが強かったわけですが、消費スタイルもどんどん変わって、昔みたいに洋服にお金を特別かけていく生活スタイルがなくなってきています。一方で、心の豊かさとか、生活の豊かさを求める気持ちはコロナが収束したあとも変わらないし、むしろ強くなるのではと思う。デジタルでサポートしつつ、百貨店という形態が少しずつ変わりながら残っていくんじゃないかと思いますし、今それを残すということが私の使命だと思っています」
新型コロナウイルスの影響で人々の生活様式や消費への考え方が大きく変わる中、デパート業界もまた、大きく変わる必要があるのではないでしょうか。ハレの日や非日常を求める人をどう取り込んでいくのか、アフターコロナのデパート像の在り方が問われています。
経済部記者
仲沢 啓
平成23年入局
福島局、福岡局を経て
現在、流通・食品業界などを担当