「フジロックフェスティバル」ことしの開催を断念 新型コロナ

「フジロックフェスティバル」ことしの開催を断念 新型コロナ
世界で新型コロナウイルスの感染が広がる中、国内外から多くのアーティストが新潟県湯沢町に集う「フジロックフェスティバル」について、ことしの開催を断念することが決まりました。
フジロックフェスティバルは毎年夏に新潟県湯沢町で開かれる国内最大級のロックの祭典で、ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランさんや、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなど、国内外から名だたるアーティストが出演してきました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続く中、主催者の「スマッシュ」は5日、ことし8月に予定していたフェスティバルの開催を断念すると発表しました。

フェスティバルの全日程が開催されないのは、今回が初めてです。

野外フェスなどのイベントについて、政府は、観客の間隔を十分あけたうえであれば、8月1日以降をめどに開催は可能だとする目安を公表していました。

しかし、主催者によりますと、世界で感染が広がる中、会場の感染防止対策が課題となっていたほか、海外からのアーティストの来日も困難になっていたということです。

チケットは、払い戻しに対応するほか、来年のフェスティバルで利用できるとしています。

主催者のスマッシュは「地元の皆さまの支えで20年以上開催をさせていただき感謝しています。人々が健康と安全を取り戻せる未来が近いことを信じ、来年8月に苗場でお会いできることを楽しみにしています」とコメントしています。

主催者代表「来年は2年分楽しもう」

「スマッシュ」の日高正博代表は、ホームページ上に「皆さんへのメッセージ」を掲載しました。

その中では「来年は、ことしの分も含めた2年分のエネルギーで、苗場で楽しもう。約束するよ。こんな時だからこそ、フジロックで、みんなと少しでも勇気と元気を分かち合えたらいいなと思っていたんだけど、本当に残念だ。ゴメン。皆さん、くれぐれも体に気をつけてください」と伝えています。

会場の地元では残念の声

フジロックフェスティバルの開催が断念されたことについて、会場の新潟県湯沢町では残念がる声が聞かれました。

フェスティバルの誘致に関わり、その後、20年以上運営に携わっている、元苗場観光協会会長の師田富士男さん(69)は「最初に誘致したときには、ここまで大きなイベントになるとは思っていなかった。今の状況を見るとしかたないことだが、地元の一大イベントなので、さみしいです」と話していました。

常連のアーティストは

フジロックフェスティバルに毎年のように参加しているアーティストからも、残念だという声が寄せられました。

これまでフジロックにバンドとして7回、ソロでも5回出場し、国内外で人気を集めるバンド、DachamboのリーダーでギタリストのAoYoungさんは「フジロックは緑に囲まれた広大な野外で行われ、お客さんもすごく盛り上がり、アーティストにとっては憧れの聖地なので、イベントの中止は非常に残念です」と話しました。

そのうえで、ことしは新型コロナウイルスの影響でミュージシャンはライブができない状況にあるとして、「表現の場が失われてすごく困っている。ぜひ来年は開催できるように祈っています」と話していました。

“夏フェス”の中止相次ぐ

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ことしの夏に国内で開催が予定されていた音楽フェスティバルの多くが、すでに中止の決断を余儀なくされていて、音楽業界や地元経済などへの影響が懸念されます。

このうち、全国から多くの観客が集まる大型のフェスティバルでは、毎年8月に茨城県で行われ、去年は33万人余りを動員した「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」や、同じく8月に北海道で開催が予定されていた「ライジング・サン・ロックフェスティバル」などが、先月中旬の段階で相次いで中止を発表したほか、各地で開かれる中規模のイベントも多くが中止や延期を余儀なくされています。

音楽フェスティバルは、ぴあ総研の調べでは、おととしまでの9年間でチケットの販売額がほぼ倍増していて、CDなどソフトの売り上げの低迷が続く音楽市場を支える重要な場となっています。

また、会場でのグッズの販売などがアーティストの重要な収入源となっているほか、観客が宿泊施設や飲食店などを利用することで、地元への経済効果も生んできました。

ことしは多くのイベントが開催されなくなり、各方面への影響が懸念されます。

西村経済再生相「イベントの継続開催を応援したい」

西村経済再生担当大臣は、記者会見で「楽しみにしていた方は、本当に残念に思い、ショックを受けられていると思う」と述べました。

そのうえで、大規模イベントの開催の在り方について、「8月1日以降、野外は観客の距離をとってもらい、屋内では収容人員を2分の1にするようお願いしているが、事業者や業界関係の方からは採算がとりにくいという話も聞いている。心を豊かにしてくれるイベントをぜひ継続して開催できるよう応援していきたいので、政府の支援策を活用していただくと同時に、感染防止策についても、さらに何かできることがないか考えていきたい」と述べました。