4月消費支出 前年同月を11.1%下回る 2001年以降最大の減少幅

4月消費支出 前年同月を11.1%下回る 2001年以降最大の減少幅
k10012458961_202006051208_202006051208.mp4
新型コロナウイルスの感染拡大による外出の自粛で、旅行や外食などへの支出が減り、ことし4月に家庭が消費に使ったお金は、前の年の同じ月を11.1%下回りました。

4月は緊急事態宣言が出ていて、減少の幅は統計が比較できる2001年以降で最も大きくなり、記録的な落ち込みとなりました。
総務省が発表した家計調査によりますと、ことし4月に1人暮らしを除く世帯が消費に使った金額は、1世帯当たり26万7922円でした。

物価の変動による影響を除いた実質で、前の年の同じ月を11.1%下回り、7か月連続で減少しました。

4月は感染拡大を受けて緊急事態宣言が出ていて、減少の幅は統計が比較できる2001年以降で最も大きくなり、記録的な落ち込みとなりました。

内訳をみると、外出自粛の影響で、
▽パック旅行費が97.1%減少したほか、
▽ホテルなどの宿泊料も94.7%減少しました。

さらに、飲食店の休業などによって、外食での、
▽飲酒代は90.3%減り、
▽食事代も63.3%減っています。

一方、支出が増加したものでは、需要が高まっているマスクなどの「保健用消耗品」が2.2倍余りに増えました。

自宅で過ごす人が増えたことで、いわゆる「巣ごもり消費」も伸びています。

このうち、
▽パスタが70.5%、
▽即席麺が43.3%、それぞれ増えたほか、
▽チューハイやワインなど、酒類も21%増えました。

また、
▽ゲームソフトは2倍余りとなったほか、
▽ゲーム機は68.2%増えました。

総務省は「一部の品目に巣ごもり需要もみられたが、全体としては大きな減少となった。今後の消費の動向を注視したい」と話しています。

外出自粛の影響 はっきりと表れる

4月の消費は記録的な落ち込みとなりましたが、品目別で見ると、外出の自粛による影響が支出の増減両面ではっきりと表れました。

支出が減少した品目では、パック旅行費やホテルなどの宿泊料のほかにも、
▽航空運賃が94.5%、
▽有料道路料金が57.5%、
▽ガソリンは28.2%、それぞれ減りました。

▽映画や演劇などの入場料は92.7%減り、
▽遊園地の入場料や乗り物代も97.8%減りました。

さらに、
▽鉄道の通学定期代が88.1%、
▽鉄道の通勤定期代も41.2%、それぞれ減っていて、
学校の休校や企業の在宅勤務が増えた影響が出ています。

また、デパートや衣料品を取り扱う店舗の休業が広がった影響などで、
▽スーツが79.9%、
▽女性用のスラックスも61.5%、それぞれ減りました。

化粧品関連でも、
▽口紅が41.1%、
▽乳液が18.5%、それぞれ減っていて、
外出の自粛に加え、マスクを着ける人が増えたことも影響したとみられます。

一方、外出自粛による「巣ごもり」で支出が増えた品目もあります。

特に、
▽ゲームソフトが2倍余り、
▽ゲーム機が68.2%、
それぞれ増えたのが目立っています。

テレワークやオンライン授業が広がったことで、
パソコンへの支出が72.3%増加。

自宅でインターネットを利用する時間が増えたことで、
ネット接続料は17.7%増えました。

さらに、自宅で食事をする人が増えたことで、パスタや即席麺のほかにも、
▽生鮮肉が20.7%、
▽冷凍調理食品が19%、
▽コメも11.8%、それぞれ支出が増えました。

また、外出を自粛し、自宅で過ごす時間が増えたこともあって、
▽「光熱・水道費」も7.4%増えました。

生活の変化 消費品目に大きな影響

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛など生活の変化は、お金の使いみちに大きな影響を与えています。

東京に本社がある大手家電量販店では、4月と5月は営業時間の短縮や休業の影響で来店客が大幅に減り、冷蔵庫や洗濯機など幅広い種類の家電で販売が大きく落ち込みました。

特にデジタルカメラやビデオカメラなど「音響映像商品」の4月の売り上げは、去年の同じ月の51%と、ほぼ半減しました。

例年、カメラ需要が高まる入学式などの行事の延期や中止が相次いだことや、春の行楽シーズンに外出の自粛が続いたことが影響しているということです。

一方で、在宅勤務で使うパソコンの周辺機器の販売は好調です。

テレワークを導入する企業が広がり始めた2月と3月には、オンライン会議で使うウェブカメラの売り上げが去年の同じ時期の4倍に急増し、一時入荷が追いつかなくなったということです。

さらに3月から5月にかけては、自宅で仕事をしやすくするための商品の需要が高まりました。

インターネットの通信速度を速くするための性能のよいルーターや、ノートパソコンにつないでより大きな画面で作業できるディスプレイなどが人気で、テレワーク関連の商品の売り上げは全体で30%近く増えているということです。

5月下旬からはエアコンの売れ行きも伸びています。

使っていなかった部屋を仕事部屋にするため、エアコンを買って快適な環境にしようという需要も増えているとみられるということです。

「ビックカメラ」の売り場担当の近藤直樹さんは「生産性を高くして働きたいという声がある。不要不急の商品は落ち込んでいるが、テレワーク需要を取り込みたい」と話していました。

一方、埼玉県に本社があるホームセンターで売り上げが減っているのは自転車です。去年の同じ時期に比べ4月は25%、5月は10%、それぞれ落ち込みました。

いつもは入学シーズンに合わせて購入する人が増えますが、ことしは学校の休校が続き、購入を先送りする人が増えたとみられています。

しかし、このホームセンターでも、自宅で過ごす時間が増えたことで、ヨガで使うマットや筋トレの器具などフィットネス商品の売り上げが、4月は2倍、5月は2.5倍に増えました。

さらに、お風呂に入れる入浴剤の売れ行きも4月と5月にそれぞれ30%増えました。健康維持や気分転換のために買っているとみられます。

また外出自粛の間、自宅の片づけを行う人が増えたため、5月に入ってから、衣装ケースなどの収納関連の商品の売り上げが、去年の同じ時期と比べ10%増加したということです。

「島忠」の西山哲男社長室長は「われわれの想像しないものが売れることがあるが、需要の状況は予断を持てない。お客様の声に耳を傾け、スピード感を持って対応していきたい」と話していました。

専門家「しばらく消費の構造変化が続く可能性高い」

4月の消費支出が記録的な落ち込みになったことについて、第一生命経済研究所の副主任エコノミスト、星野卓也さんは、「特に観光旅行や宿泊、遊園地、外食や衣料品も大きく落ち込み、感染拡大の影響が経済活動に広く影響を及ぼしたことが確認できる。ワクチンの開発など抜本的な解決には時間がかかるので、消費の回復も足取りは鈍いと予想される。雇用環境も悪化しているため、年単位で消費への影響を考えておいたほうがいい」と分析しました。

そのうえで星野さんは「オンラインの利用はさらに増える可能性が高いが、外出を伴う外食や観光はどうしても悪影響が続くことが予想されるので、しばらくは消費の構造変化が続く可能性が高い」と話しました。

そして今後の経済活動については「感染防止策をとりながら消費を促していくための工夫をする必要があり、政府も企業のそうした取り組みを支援するべきだ。例えばオンラインの利用や予約制の導入などさまざまな工夫を行い、ウイルスとうまく共存して経済をまわすことを考えなければいけない」と話しています。

官房長官「個人消費含め経済に深刻な影響」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「新型コロナウイルスにより、個人消費を含め、経済に深刻な影響が出ている。今後、感染対策を講じつつ、現状を何とかしのいでもらいながら、段階的に日常の経済活動を取り戻していく必要がある。国民の生活と雇用を守り、事業を継続していただくことを最優先に、あらゆる対策を講じており、一連の補正予算などで総額230兆円を超える規模の対策を盛り込んでいる」と述べました。