安倍首相 10兆円予備費の使いみちは“緊急要する経費限定”

安倍首相 10兆円予備費の使いみちは“緊急要する経費限定”
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新型コロナウイルス対策の第2次補正予算案に計上された10兆円の予備費について、安倍総理大臣は、状況の変化に応じて臨機応変に対応できるようにするため盛り込んだとしたうえで、使いみちは感染防止策など緊急を要する経費に限定する考えを示しました。
参議院厚生労働委員会で、立憲民主党などの会派で社民党の福島党首は、第2次補正予算案に計上された10兆円の予備費について「東日本大震災で8000億円、リーマンショックが1兆円だが、10兆円というのはなんなのか。財政民主主義を踏みにじるものではないか」とただしました。

これに対し、安倍総理大臣は「それは違う。新型コロナウイルスについて、今後の長期戦を見据え、状況の変化に応じて臨機応変にかつ時機を逸することなく対応することが必要であり、今後の対応に万全を期すために10兆円を追加した」と述べました。

そのうえで「一般の予備費とは異なり、使途は国会の議決をいただいた範囲に限定することとし、感染拡大防止策に要する経費等、新型コロナウイルス感染症に関わる緊急を要する経費に限る」と述べました。

また「持続化給付金」をめぐり、国から事業を委託された社団法人が、大手広告代理店に再委託した経緯などを問われたのに対し、安倍総理大臣は、「経済産業省を呼んでいただければ詳しく説明できる。連日のように野党PTなどで説明を行っているが、引き続き、必要な情報開示を行うことも含めて、丁寧な説明を行わせたい」と述べました。

さらに、新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家会議について、安倍総理大臣は、議論の内容がわかるように議事概要を作成し、公表しているとしたうえで、「政治サイドが議事録に影響を与える、あるいはそこで話されたことを無かったことにするという政治的な思惑を持って対応することは、もちろん一切ない」と述べました。

一方、アメリカのトランプ大統領が、WHO=世界保健機関に拠出している資金を別の目的に充てる考えを示したことについて、安倍総理大臣は、コメントは控えるとしたうえで「先般のWHO総会で、最も早い適切な時期に公平、独立かつ包括的な検証を開始することを盛り込んだ決議案が採択されている。世界に甚大な影響を与える感染症に対しては、国際社会が一致団結して対応していくことが重要だ」と述べました。

“異例の10兆円規模”

予備費は、憲法87条で「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任で支出することができる」と定められ、国会の承認を得ずに使いみちを決めることができます。

新型コロナウイルスの影響が長期におよぶ事態に臨機応変に対応するためとして、政府は、今年度の第1次補正予算で1兆5000億円の予備費を計上したのに続き、第2次補正予算案ではさらに10兆円の予備費を積み増しました。

政府は毎年、当初予算にも予備費を計上していて、一般会計の総額が102兆円余りとなった今年度は5000億円の予備費を計上していました。

リーマンショックの翌年の2009年度の当初予算では、通常の予備費の3500億円とは別枠の「経済緊急対応予備費」を1兆円計上した例はありましたが、今回の10兆円は異例の規模です。

野党各党は、第2次補正予算案の歳出の3分の1近くを予備費が占めるのは容認できないとして、減額すべきだと主張しています。恣意的(しいてき)な支出とならないよう、執行前に国会で使いみちを説明することも求めています。

麻生副総理兼財務大臣は今月2日の記者会見で「第2波、第3波の可能性が考えられ、ワクチンや治療薬が出てくるまでは長期戦を考えないといけない。予見し難い予算の不足に充てるためには予備費は極めて有効な手段の1つだ」と述べ、臨機応変に対応するために予備費は有効で、規模も適正だという認識を示しました。

また「予備費は使ったあと国会で審議がある。使わずに済めばまことに結構なことだし、足りなくなるよりは、使わずに済んだとなるほうがよいのではないか」と述べ事後的に国会のチェックを受けることで理解を求めていました。

西村経済再生相「適切に活用していく」

西村経済再生担当大臣は、4日の記者会見で、今回の第2次補正予算案で予備費を10兆円積み増すことについて、「今後、どんな事態になっても臨機応変に対応できるように予備費を積み増している。毎回、補正予算を組んでいくということになるとやはり時間がかかると批判もいただいているので、適切に予備費を活用していきたいと考えている」と述べ、改めてその必要性を強調しました。

立民 逢坂政調会長「予算案 組み替え動議提出で最終調整」

立憲民主党の逢坂政務調査会長は、記者団に対し「予備費が一定程度必要なことは理解しているが、やるべきことが決まってきている中で、多額の予算を積み増すことはまかりならない。第2次補正予算案の組み替え動議を提出することで最終調整をしている」と述べました。