“コロナと共存”どう変わる?世界の航空業界

“コロナと共存”どう変わる?世界の航空業界
新型コロナウイルスの感染が世界に広がった影響で、かつてない規模の運休や減便に追い込まれた航空会社。経済活動の再開に合わせて、少しずつ運航を再開しています。ただ、ウイルスの感染は終息しておらず、各社とも利用客の不安を和らげるためにさまざまな感染対策をとったうえでの再スタートです。新型コロナで様変わりする世界の航空業界の動きを追いました。
(ロンドン支局記者 栗原輝之・国際部記者 石井利喜・アジア総局記者 岩間宏毅)

新しい飛行機の乗り方は

航空各社や空港が打ち出すさまざまな感染対策によって、私たちの空の旅はどう変わるのでしょうか。会社によって異なりますが、おおよそ次のような流れになります。まず搭乗手続き。できるかぎりオンラインやセルフサービスで済ませるよう勧められます。空港では、発熱がないかチェックを受けます。空港によっては、サーモグラフィーを搭載したヘルメット姿の担当者を目にするかもしれません。
そして搭乗ゲート。まず、後方の席に座る客から搭乗案内があります。客どうしの密をできるかぎり防ぐためで、ほかの客と距離をとりながら機内へと向かうことになるでしょう。機内ではマスクの着用が必須です。客と客室乗務員の接触を極力減らすため、機内サービスを最小限にとどめる会社もあります。

客室乗務員が“変わる”

そして、その客室乗務員。大きく姿を変えたところも出てきています。フィリピン航空は、防護服の機能を備えた制服やフェイスシールド、マスクや手袋の着用を決めました。新たな制服は、白や水色など3種類を用意。肩のあたりには会社のロゴにも使われている赤、青、黄色の3色が施されています。

客室乗務員を感染から守るとともに、乗客にとっても感染リスクの低減につながります。費用は、防護服タイプの制服やフェイスシールドなど1式あたり日本円でおよそ2100円。会社では、すでに数百着分を準備したということです。
シエロ・ヴィラルナさん
「防護服を制服として採用することで、お客様に当社のフライトが安全で快適だと思っていただけるでしょう。安全性は運航の要であり、利用者の信頼を得るうえでのセールスポイントにもなるので、われわれのビジネスにとってもメリットがあります」

エコノミーも個室感覚?

機内の座席も、様変わりするかもしれません。感染対策として、これまでとは違う座席作りに乗り出したメーカーがあります。イタリアのアビオインテリアズが開発中のシートは、3列席のいずれにも透明な仕切りが取り付けられます。特徴は、中央の席だけ左右の客とは反対向きに座るようになっていることです。

どの席に座っても、前後左右のほかの客からできるかぎり隔離された状態に近づける工夫をしたということです。このメーカーは現在、取り引きがある航空会社に試作品を送って意見を求めていて、効果や安全性を検証し、商品化を目指すことにしています。
パオロ・ドラゴCEO
「食事などを考えると、特に長時間のフライトでは、ずっとマスクをしたままではいられません。座席を仕切ることで、感染リスクを減らす手段になるのではないでしょうか」

感染を抑え込んだ都市を旅行先に

航空旅客の需要が大きく落ち込んだことで、海外では、大手のタイ国際航空など、経営に行き詰まるところも出てきています。IATA=国際航空運送協会は、国際線の旅客需要が去年の水準に戻るまでには4年かかるという見通しを示しています。

こうした中、感染拡大の抑え込みに比較的うまくいき、かつ旅行先としての需要が見込まれる都市への路線開拓に活路を見いだそうとする動きも出ています。LCC=格安航空会社10社が競合する韓国です。韓国政府は、相手国との交渉で確保した新規の路線で運航する権利を、経営が厳しい航空会社に割り当てる政策をとっています。
こうした支援を特に受けているのがLCCで、先月までに割り当てられたアジアやヨーロッパなどの46の新規路線のおよそ7割をLCCが占めています。このうちティーウェイ航空は、韓国のLCCとしては初めて、ヨーロッパのクロアチアとオーストラリアに乗り入れることになりました。
キム・ソグァン常務
「今後、旅行のパラダイムシフトが起こると思います。その国にどんな観光スポットがあるかよりも、感染防止策がしっかりとできているかで旅行先を選ぶことになるでしょう。他社よりも早く、安全かつ低価格の路線で市場を開拓することでこの危機を乗り越えたい」

航空会社選びの決め手は感染対策

航空各社はこれまで、安全性に加え、サービスの質や価格などでしのぎを削ってきました。しかし、世界的な感染拡大をきっかけに、利用者が航空会社を選ぶ際の基準、ひいては各社のブランド価値を上げる要因も変わっていくだろうと専門家は指摘しています。
戸崎教授
「これからの利用者は、ウイルス対策がきちんとしている航空会社を選択することになる。航空会社のブランド価値には、安全性やおもてなしだけでなく、ウイルス対策も加わったのです」
一方、戸崎教授は、感染対策は最終的には利用者のためであり、そのための適切な負担を受け入れる意識を利用者側は持つべきだと話しました。そのうえで、運賃の上昇といった形で利用者の負担が増える可能性も指摘しています。“コロナと共存”の時代にどう向き合うか、私たちの対応力が試されています。
ロンドン支局記者
栗原 輝之
平成11年入局
経済部などを経て
現在ヨーロッパ経済を担当
国際部記者
石井 利喜
平成23年入局
新潟局、仙台局を経て
現在韓国と北朝鮮を担当
アジア総局記者
岩間 宏毅
平成12年入局
名古屋局、経済部などを経て
現在アジア新興国経済を担当