コロナで桃の価格が下落?“果物王国”の苦境とは

コロナで桃の価格が下落?“果物王国”の苦境とは
緊急事態宣言が全国で解除され、経済活動が少しずつ戻り始めています。しかし、全国一の生産量を誇る桃やぶどうが収穫期を迎える“果物王国”の山梨県では、農業関係者の不安が募るばかり。なぜ新型コロナウイルスの影響がフルーツにも及ぶのでしょうか。(甲府放送局記者 青柳健吾)

観光農園は予約ゼロ

山梨県の中でも果物の栽培が特に盛んな笛吹市にある観光農園の「金桜園」。本場の桃やぶどうを求めて、毎年3万人近い観光客が訪れていました。6月末に始まる桃狩りや、8月スタートのぶどう狩りに向けて、果実が順調に育っています。
しかし、経営者の堀内圓さん(79)の表情は曇りがちです。例年なら、6月初めには、すでに1日15件ほどの予約が入っているところが、ことしはまだ1件も入っていないというのです。感染防止策をとって、観光客を迎え入れたいと考えていますが、団体客を連れてくるツアー会社からの問い合わせすらない状況だといいます。
堀内さん
「農園を初めて35年か6年たつが、こんなことはなかったので不安です」

観光がダメなら…

観光客が訪れる見通しが全く立たない中、堀内さんが力を入れているのが、果物の直売です。過去に販売実績のある“お得意さま”1000人にダイレクトメールを送り、購入を呼びかけました。桃は、ほかの果物に比べて日持ちしないということで、できるだけ早く売らなければ、むだになってしまいます。堀内さんは、収穫した桃の30%ほどを地元の青果市場に流通させることも検討しています。

生産農家に波及?

山梨県では、6月からいよいよ露地物の桃の出荷が本格的にスタートします。しかし、笛吹市で40年以上にわたって桃を生産してきた筒井克巳さん(64)は危機感を募らせています。

4月から出荷しているハウス栽培の桃は、緊急事態宣言に伴うデパートの休業などで有力な販売先が失われ、市場での取引価格が1割から2割ほど下落しました。
その後、デパートの営業は再開されましたが、これまですみ分けてきた観光農園からの桃が市場に“流入”すれば、露地物の桃も価格が落ち込むことを心配しているのです。

筒井さんの懸念には裏付けがあります。「JA全農やまなし」によりますと、この春、山梨県内の観光農園から多くのサクランボが市場に流入し、供給量は2倍以上に増加。その結果、価格がおよそ3割も下落したのです。
筒井さん
「流通していなかったものが市場へ出てきたらバランスが崩れて、大暴落というようなことにもなりかねない」

できることを1つでも

観光農園にも生産農家にも不安が高まる中、地元の「JAふえふき」は、少しでも桃の需要を伸ばそうと知恵を絞っています。少ない量でも購入できるように、これまでより小分けにして出荷。ネット通販を伸ばすためホームページを刷新し、消費者にアピールしようとしています。
志村課長
「販売環境は厳しいが、決してすべてがふさがっているわけではない。生産者と一丸となって、この難局に立ち向かっていきたい」
緊急事態宣言は解除されましたが、実りの季節を迎える果物王国は元の姿を取り戻せずにいます。1度は止まったともいえる地域の経済に目をこらし、再び軌道に乗せるには何が必要なのか、引き続き考えていきたいと思います。
甲府放送局記者
青柳健吾
2017年入局
事件取材一筋 最近は経済分野の取材も