夏休み短縮や学校行事の中止相次ぐ 実施へ工夫も 新型コロナ

夏休み短縮や学校行事の中止相次ぐ 実施へ工夫も 新型コロナ
全国で小中学校が再開されましたが、授業時間の確保や感染防止のため夏休みを短縮したり運動会などの学校行事を中止したりするところが相次いでいます。
全国20の政令指定都市と感染者数が最も多い東京のうち23区を取材したところ、夏休みを「短縮」もしくは「短縮を検討している」と答えたところは「未定」とした熊本市を除く42の自治体で、小中学校の数は合わせて5221校に上りました。このように、ほぼすべての自治体で夏休みが短縮、もしくは短縮が検討されていました。

短縮される期間は自治体によって異なりますが、短いところで10日間、長いところで24日間ほどになるということです。

さらに、学校行事についても削減するところが少なくありません。運動会と文化祭、そして修学旅行の3つの学校行事について、感染防止や授業時間を確保するためいずれかを「中止」もしくは「中止を検討している」と答えた自治体は北九州、福岡市、さいたま市、川崎市、荒川区、板橋区、江戸川区、葛飾区、江東区、台東区、港区、世田谷区の合わせて12の自治体で小中学校の数は1176校にのぼりました。

学校行事維持へ授業を工夫する学校も

学校の中には授業を工夫することで学校行事を維持しようと取り組むところもあります。東京 三鷹市の東台小学校です。1日、授業を再開したばかりで休校はおよそ3か月間に及びました。

山下裕司校長は学習の遅れは気がかりだといいますが、それでも運動会や修学旅行などの学校行事は残したいといいます。その理由について山下校長は「学校行事で子どもは大きく成長します。運動会では互いを励まし合ったり最後まで取り組む力を身につけたりしますので。工夫をしながらなんとか実施していきたい」と語りました。

それでは遅れた授業はどうするのか。6年生の場合、例年の同じ時期と比べてすでに186回分の授業ができていません。学校では土曜日に授業は行うものの、夏休みを短縮したり学校行事をなくしたりせずに、授業そのものを工夫することで乗り切ろうとしています。
そこで取り組んでいるのが授業の「圧縮」です。例えば6年生の国語では通常1年間で「サボテンの花」や「ヒロシマのうた」など4つの「物語」を学びますが、学校は類似の単元として2つにまとめることにしました。通常ならば24回実施する授業を質を保ちながら、2割ほど減らせるといいます。

さらに子どもたちの理解が不足しないように、放課後などにオンラインを使った補習を行うことにしています。7時間目などを作って教室で一斉に30人以上を教えるよりも、オンラインであれば感染防止を図りながら少人数の児童にきめ細かに教えられると考えています。

山下校長は「異例の年となっていますが、従来のやり方では通用しないと考えています。子どもたちの力を伸ばすという点で何ができるのか、工夫して取り組んでいきたい」と話しています。

専門家「行事は人間的に成長する場 工夫して実施を」

小学校の元校長で早稲田大学教職大学院の遠藤真司客員教授は「休校が長期化したので、夏休みの短縮や行事の削減はある程度致し方ない面もあるが、学校は勉強だけの場所でない。運動会や学芸会などの学校行事は子どもたちにとって人間関係の構築やトラブルの解決などを学ぶ、人間的に大きく成長できるステップの場になるのでできるだけ工夫をして実施することが必要だと思う」と話します。

そのうえで「教員はそうした工夫をすることが本来得意分野であるはずだが、いまは感染防止に忙殺され、考える余地がなくなっている。国や行政が工夫した事例を取り上げて発信するなど、情報が現場に届く取り組みも重要だ」と指摘しています。