1億相当の金塊押収 コロナによる先行き懸念で高騰の金を密輸か

1億相当の金塊押収 コロナによる先行き懸念で高騰の金を密輸か
ことし4月、中部空港に航空貨物として輸入された電動工具の内部に、金塊およそ18キロ、額にして1億円相当が隠されているのが見つかり、税関が押収していたことがわかりました。新型コロナウイルスによる経済の先行きへの懸念から金は歴史的な高値となっていて、捜査当局は、税関で消費税分の金額を納めずに密輸し、大きな利ざやを得ようとしたとみて調べています。
捜査関係者によりますと、ことし4月中旬、韓国から中部空港に輸入された貨物を税関が検査したところ、十数個の電動工具の中に、合わせておよそ18キロ、当時の取引価格で1億円相当の金塊が隠されているのが見つかりました。

金塊は、電動工具の内部構造に合わせて、巧妙に形が整えられていたということです。

海外から金を持ち込む際は、税関に申告して消費税分の金額を納める必要がありますが、申告は行われておらず、これまでのところ、送り主や受け取り先などは特定できていないということです。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済の先行きへの懸念から、“安全な資産”とされる金の価格は高騰していて、捜査当局は、消費税のかからない海外で仕入れた金塊を密輸し、税込みの価格で売って大きな利ざやを得ようとしたとみて、関税法違反などの疑いで調べています。

「利ざや」得る仕組みは

通常、金を海外から国内へ持ち込む場合、税関に申告して消費税分の金額を納めます。

その後、貴金属店などに消費税込みの価格で買い取ってもらいます。

密輸はこの仕組みを悪用して行われます。

例えば、時価1億円の金塊を国内に持ち込んだ場合、本来は、現在の10%の消費税に当たる1000万円を税関に納め、貴金属店などに消費税を上乗せした価格の1億1000万円で買い取ってもらいます。

しかし、密輸によって消費税を納めずに金を売れば、1000万円を「利ざや」として手にすることができます。

金の価格が高騰すると、それに比例して消費税額も高くなるため、密輸で得られる「うまみ」は増すことになります。

金の先物価格は上昇続く

東京商品取引所で取り引きされている金の先物価格は上昇を続けています。新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の金融市場が混乱した3月には、不足の事態に備えて現金を手元に置いておこうと株式などを売る動きが強まり、金も売られる場面がありました。

しかし、4月に入って最初の緊急事態宣言が出されて以降は、休業要請などで企業の業績が一段と厳しくなるという警戒感を反映して、“安全資産”の金を買う動きが強まり、金の先物価格は最高値を更新していきました。

その後、経済の先行きへの懸念が強まり、5月中旬には、東京商品取引所で取り引きされている金の先物価格は1グラム当たり6000円を突破。

6000円を超えたのは、取り引きが始まった1982年以来、初めてで、歴史的な高値が続いています。

貴金属買い取り店では金を売る人が増加

新型コロナウイルスの感染拡大で市場での金の価格が高騰するなか、岐阜市にある貴金属などの買い取り店では、手元の金を売って現金に換えようとする人の割合が増えています。

この店では、先月中旬、客から金を買い取る際の価格が、一時、1グラム当たりおよそ5900円まで高騰。

25年前の開店以来、最も高くなったということです。

持ち込まれる金は、ネックレスなどの装飾品や記念硬貨などが多いということで、今後も価格の高騰が続けば金を売ろうとする人が増えるとみています。

買い取り店の担当者は「正直、私たちの中では、“貴金属バブル”のようなことが起きているという実感があります。相場自体が本当に高く推移しているので、売るタイミングとしては、すごくいい時期かもしれない」と話していました。