裁判員裁判 約3か月ぶりに再開へ 東京地裁 新型コロナ影響

裁判員裁判 約3か月ぶりに再開へ 東京地裁 新型コロナ影響
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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で市民が参加する裁判員裁判は多くが延期されていましたが、緊急事態宣言が解除されたことなどから各地で再開され、東京地方裁判所では2日からおよそ3か月ぶりに再開されます。裁判所では裁判員が安心して参加できるようさまざまな感染防止対策を取ることにしています。
東京地方裁判所では、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念された3月以降、新たな裁判員裁判はすべて開かず、延べ34件を延期してきました。

緊急事態宣言が解除されたことなどから、およそ3か月ぶりに2日から裁判員裁判を再開することになり、裁判所ではさまざまな感染防止策を取るとしています。

候補者を集めて裁判員を選ぶ「選任手続き」には数十人の市民が集まることから、3密を避けるため、間隔を空けて手続きを行ったり、マスクがない人には配布したりするなど工夫するということです。

法廷では裁判員の間に透明のアクリル板を設置し、裁判官や裁判員、それに弁護士や被告など全員にマスクの着用を求めるほか、傍聴する人も間隔を空けて座ってもらうということです。
朝の通勤ラッシュを避けるため、裁判を開く時間帯を通常より遅くするとしています。

裁判員と裁判官が判決の内容などを検討する「評議」も広い部屋に変更して、長い机に1人ずつ座るなど席の間隔を空けるほか、消毒液を設置してこまめに消毒してもらうということです。
東京地方裁判所の島田一所長代行は「裁判員裁判が実施できないと証人や被告の記憶が薄れ、十分な審理が行えなくなったり被告の勾留が続いたりするおそれがある。市民の皆さんが安心して裁判員裁判に参加できるように十分な感染対策を取って適切に進めたい」と話しています。

弁護士「運用のしかた議論を」

日弁連=日本弁護士連合会の刑事弁護センターの事務局長で、裁判員制度に詳しい菅野亮弁護士は「裁判員裁判の中断が長引けば、被告が迅速な裁判を受けられずに勾留される期間も延びるほか、裁判で証言する証人の記憶も薄れるなど、さまざまな悪影響が懸念されていた。再開されるのは一安心だ」と話しています。

一方で、裁判員の候補者に選ばれても辞退する人が増えることが懸念されるとして、裁判員裁判の運用のしかたについて議論すべきだと指摘しています。

菅野弁護士は「感染の心配をする人もいるだろうし、長引く自粛によって生活が苦しくなり裁判員裁判に参加する余裕がない人も出てくると思う。しかし、多くの候補者の中から裁判員を選び、さまざまな角度から意見をいただくことこそが裁判員制度の根幹なので、安心して参加できる環境作りが重要だ。法廷での対策のほか、通勤ラッシュの時間帯を避けるなど、裁判所・検察・弁護士の3者が協力して取り組む必要がある。裁判の前に裁判官、検察官、弁護士が争点などについて話し合う『公判前整理手続き』や、数十人の候補者を集めて裁判員を選ぶ『選任手続き』については、オンラインで行うことも今後検討すべきだと思う」と話しています。