トイレ清掃“当面は教職員”に懸念の声 名古屋市 コロナ対策

トイレ清掃“当面は教職員”に懸念の声 名古屋市 コロナ対策
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小中学校などの再開にあたって名古屋市教育委員会は、新型コロナウイルスの感染防止対策として学校のトイレの清掃を外部の人材に行ってもらう方向で調整を進めていますが、来月1日の学校再開に間に合わないため、当面は、教職員が清掃することになり、教職員の負担が増えることに懸念の声があがっています。
名古屋市内では、休校が続いてきた市立の小中学校や高校などが来月1日から再開される予定で、市の教育委員会は、3日前の今月26日、各学校に対し、学校のトイレの清掃を子どもたちではなく教職員が行うよう求める通知を出しました。

しかし、こうした方針については、専門家から「教職員から子どもに感染するリスクがある」などの指摘が出ていて、名古屋市議会の自民党も、28日、市側に対し、同様の懸念を伝えて外部の人材の活用を求めました。

これを受け、教育委員会は、学校のトイレの清掃を教職員が行うとした方針を転換して、外部の人材に行ってもらう方向で調整を進めています。

具体的には、現在、市内の30校ほどで事務作業の補助を行っている「スクール・サポート・スタッフ」と呼ばれる外部人材を、400を超える市内すべての学校と幼稚園に配置することを検討しています。

ただ、こうした人材の採用は来月1日の学校再開には間に合わないため、当面は、教職員が清掃を行うということです。

名古屋市教育委員会は「教職員と子どもがふれあう時間を確保するため、できるだけ早く外部人材を確保して、トイレ清掃を含む消毒環境の整備を進めていきたい」としています。

負担増 トイレだけじゃない

学校のトイレの清掃は今後、外部の人材に行ってもらう方針に転換したということですが、教職員に求められている負担はこれだけではありません。名古屋市教育委員会が来月1日の学校再開を前に、小中学校宛てに出した通知には授業の進め方や感染防止対策などについて細かい項目が並んでいます。
まず、消毒についてです。学校では、1日1回以上、消毒液で、児童生徒が手を触れる場所を消毒するよう求めています。

消毒するべき場所については、「手すり、スイッチ、ドアノブ、水道蛇口栓、机、共用パソコンのキーボードやマウス、共用の教材や器具、スポーツ用品、掃除道具、トイレ便座のふた、水洗流水レバー、トイレの床と便器まわり」など多くの場所が示されています。
本来業務である授業についても負担が増えます。休校による学習の遅れを取り戻すため1週間に1コマずつ授業時間数を増やすほか、夏休みも短縮して授業に充てるとしています。

さらに授業のやり方にも工夫が求められます。音楽では合唱は、心の中で歌うかハミングをさせること、鍵盤ハーモニカやリコーダーは教える時期を先送りすることを提案しています。

体育では、接触のあるバスケットボールなどの種目は、ドリブルなどの個人練習を先に行い、集団でのゲームは時期をずらして行うことを提案していて、教員は、カリキュラムを組み直す必要がありそうです。
また、通知では、すべての児童生徒と話して心の状態を確認したり、心身の変化をチェックリストで継続的に見守ったりするなど、教員に児童生徒の心のケアを求めているほか、登校したら手洗いをするよう指導し体温や体調を確認することも求めています。

さらに学校ごとに独自対策も…

名古屋市教育委員会の通知について市内の小中学校で働く教員からは、感染防止策をとることで業務量が増えることに不安の声が上がっています。

名古屋市内の中学校で働く教員はNHKの電話インタビューに対し、「市教委の指示どおりに机やいす、ロッカーなどを消毒したら、1時間半かかったという教員もいる。また、朝に体温を測ってこなかった生徒には保健室で検温を行う決まりだが、体温計が学校に1台しかなくて混乱も予想される。再開後は3か月間の休みの遅れを取り戻すために授業時間が増えてただでさえ忙しい上に、子どもたちの心のケアにも時間を割きたいのでこれだけの対策がとれるか不安だ。ウイルスとの闘いは長期間にわたるものなので、新たに人を配置してもらわないと、学校現場がパンクしそうです」と話しています。

このほか、NHKが取材したところ、市内の小中学校では、学校ごとに独自の感染防止策をとるところも相次いでいます。

たとえば、給食の配膳を教員が1人で行うことや、職員室や教室からごみ箱が撤去され、落ちているごみを子どもが拾ってはならないほか、掃除は教員が授業後に1人で行うことなどがルール化された学校もあるということです。

さらに、学級文庫や遊具の使用禁止を決めた学校もあるということです。