4月の有効求人倍率1.32倍 新型コロナ影響で求人が大幅減

4月の有効求人倍率1.32倍 新型コロナ影響で求人が大幅減
仕事を求めている人1人に対して企業から何人の求人があるかを示す有効求人倍率は、先月は1.32倍で、4か月連続で前の月を下回りました。先月は新型コロナウイルスの感染拡大で全国に緊急事態宣言が出され経済活動が大きく制限されたことなどから、新規の求人が大幅に減少しています。
厚生労働省によりますと、先月の有効求人倍率は季節による変動要因を除いて1.32倍となり、前の月から0.07ポイント低下し、4か月連続で前の月を下回りました。

都道府県別にみますと、最も高かったのは福井で1.88倍、次いで岡山が1.76倍、東京が1.73倍、広島が1.64倍、香川が1.59倍などとなっています。一方、最も低かったのは沖縄の0.91倍で、次いで青森が1倍、神奈川が1.03倍、長崎が1.04倍、高知が1.07倍などとなっています。

有効求人倍率はすべての都道府県で1倍を超える状態が続いていましたが、平成28年9月以来、3年7か月ぶりに沖縄県で下回りました。

また、企業から出された新規の求人は去年の同じ時期と比べて31.9%減少しました。これはリーマンショックの影響で新規求人が34.5%減少した2009年5月以来、10年11か月ぶりの落ち込みです。

産業別にみますと、減少率がもっとも大きかったのは宿泊・飲食サービス業で47.9%、次いで生活サービス関連・娯楽業で44%、製造業で40.3%それぞれ減少しました。一方、新たに職を求める人も10.2%減少しています。

厚生労働省は「緊急事態宣言で営業の自粛を求められた飲食業などに加えて自粛の対象とならなかった人手不足の業界でも新規求人を控える動きが見られ、新型コロナウイルスの影響が幅広く出ている」としています。

専門家「コロナショックで雇用の潮目変わる」

新規求人の落ち込みについて、第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは「アベノミクスが始まって以降、雇用の改善が続いてきたが、今回のコロナショックによって潮目が変わってきていると捉えるべきだ。有効求人倍率は今は1倍を超えているが、先を見据えると悪化する可能性が高い」と話しています。

また、総務省の労働力調査を踏まえ「休業者が増加するのは過去にはあまりなかったことで、新型コロナウイルスの特有の影響だ。しっかり仕事に戻っていければよいが、仕事がないままの状態が続けば、失業してしまうような『失業予備軍』の人たちも含まれており、この数字を重く受け止めなければならない」としています。

そのうえで、今後の対策について「支援のためのお金が行き届いていない現状があり、これまでの対策のスピードが遅かったと言わざるをえない。企業が助成金を受けるための申請の在り方などを改善し、お金がしっかりと行き渡るようにするべきだ」と話しています。

新規求人の落ち込み 東京は45年前の「石油危機」以来

新規求人の落ち込みが特に大きいのが東京都です。

先月、企業などから出された新規の求人は6万8961人で、去年の同じ月に比べて5万1112人、率にして42.6%減少しました。

東京労働局によりますと、減少率が40%を超えたのはオイルショックの影響を受けた1975年5月以来だということです。

また、求人数が6万人台に落ち込んだのはリーマンショック後の2010年12月以来です。

産業別にみますと、
▽もっとも減少率が大きかったのは生活関連サービス業・娯楽業で55%、
▽次いで宿泊業・飲食サービス業が54.8%、
▽製造業が52.9%などとなっていて、
▽このほか建設業や医療・福祉なども含め主要産業のすべてで減少率が30%を超えました。

東京労働局は「感染防止の観点から採用を自粛する動きに加え、緊急事態宣言を受けて休業する企業が増え、採用活動を止める企業が多くなっている。リーマンショックのときは製造業を中心に求人を控える動きが目立った一方、サービス業などが逆に受け皿となったが、今回は全産業で求人が大きく減少しており、新型コロナウイルスの影響の特徴といえる。今後もさらに求人が減るおそれもあり注視していく」としています。

雇用情勢 4か月連続での下方修正

厚生労働省は先月の雇用情勢の判断について「求人が求職を上回って推移しているものの、求人が大幅に減少しており弱さがみられる」としました。

前回はなかった「弱さがみられる」などという表現を加えて4か月連続での下方修正で、厚生労働省によりますと、平成元年8月に雇用情勢の判断を示すようになって以降初めてだということです。

加藤厚労相「雇用情勢が厳しい状況になってきている」

先月の有効求人倍率について加藤厚生労働大臣は、「求人が求職を上回って推移しているものの、求人が大幅に減少しており、雇用情勢には弱さがみられる。新型コロナウイルスの影響により一層注意する必要がある」と述べました。

そのうえで、29日公表された総務省の先月の労働力調査で非正規雇用で働く人が減っていることなどを踏まえ、「非正規で働いている方が大きく減少しているほか、休業している方も400万人を超えており、雇用情勢が厳しい状況になってきている。雇用調整助成金の申請も決して多いとは言えないので、制度の活用を強く働きかけるなど必要な対策をとっていきたい」と述べました。