新型コロナで社会の目届かず どう気付く「家庭内の異変」

新型コロナで社会の目届かず どう気付く「家庭内の異変」
緊急事態宣言が解除されても新型コロナウイルスの感染が収束しない、いわば「ウィズ・コロナ」の状況では、人との接触を避けて自宅で過ごす時間が長くなると見込まれ、DVや虐待など、“家庭内の異変”にどう気付けばいいのか、課題になっています。
都内では、毎日必要な食事を支援する中で家庭の状況を把握しようという取り組みが始まっています。

東京 葛飾区では、食事の支援が必要な家庭と日頃から接している「子ども食堂」を運営するNPOと連携し、家庭内の異変を把握しようとしています。

NPO「レインボーリボン」は感染への懸念から、今は「子ども食堂」を開けない代わりに、飲食店の協力を得て、生活が苦しく見守りが必要な家庭に、弁当を届けるサービスを始めました。

飲食店のスタッフが、ほぼ毎日、昼食の弁当を届ける際に子どもや親の食欲や表情、それに体調に変化がないか確認し、異変があれば伝えてもらいます。

各自治体では、虐待のおそれがあるなど支援や見守りが必要な家庭は、直接、親や子どもと面会して状況を確認していましたが、今は感染への懸念から面会を断られるケースも相次いでいます。

このため、毎日の生活に欠かせない食事を提供する中で、家庭の状況を把握しようとしています。

感染拡大の影響で、派遣の仕事がほとんどなくなったという46歳のシングルマザーの女性は貯金を取り崩しながら小学生の娘2人を食べさせていますが、先月、NPOに助けを求め、支援を受けるようになりました。

先行きに不安は尽きませんが、弁当が届く安心感やスタッフと顔を合わせることが救いになっているということで「食べるものもない状況だったので、助けを求めていなければ誰にも気付かれず、イライラを募らせて悩み、虐待とかをしてしまったかもしれません。感謝の気持ちでいっぱいです」と話していました。

葛飾区では「子ども食堂」の運営団体だけでなく、生活が困窮する家庭の子どもに学習の場を提供する「学習支援団体」とも連携し、見守りの輪を広げたいとしています。

葛飾区子ども家庭支援課の川上義幸課長は「NPOは日頃から支援が必要な家庭と身近に接し、状況を把握しているので、いただいた情報を参考に支援につなげたい」と話していました。

厚労省「見守り強化策を指示」

厚生労働省によりますと、ことし3月中に各地の児童相談所で、虐待として対応した件数は、去年の同じ月より12%増加し、2万2503件でした。虐待の対応件数は毎年増加傾向にあり、新型コロナウイルスとの関連はわからないとしていますが、厚生労働省は、先月、虐待のリスクが高い家庭への見守り強化策を全国の自治体に示しました。

具体的には、地域のネットワークを活用し、食事や遊びの場を提供する「子ども食堂」や、「子育てひろば」を運営する民間団体とも連携してほしいとしています。

東京都によりますと、都内で開かれている「子ども食堂」は、去年8月時点で59の自治体で508か所あるということです。

新型コロナウイルスの影響で活動を中止するところも出ていますが、弁当を作って受け取りに来てもらったり、料理の食材を届けたりして、支援を続けているところもあります。

DVについては、内閣府によりますと先月、配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談は1万3272件で、去年の同じ月よりも30%近く増加しているということです。

夫のテレワークの間は家の外に出されたとか、経済的な不安から夫がイライラして暴力を振るわれたといった相談が寄せられているということです。