コロナの感染拡大で「非正規公務員」は…

コロナの感染拡大で「非正規公務員」は…
「給付金の申請が殺到し残業は増えたが、時間外手当は一切なかった」
「公立病院の看護師で感染リスクに恐怖心はあるが懸命に働いている」
「非正規公務員」は1年の契約を更新しながら働き続けるケースが多く、正規職員と仕事の内容が同じでも毎月の給料が低いなど待遇改善が課題となっています。住民の命や暮らしを守るためにその最前線で働き続ける「非正規公務員」に話を聞きました。
(「非正規公務員」取材班 横浜放送局記者 寺島光海)

給付金手続きで残業増加 しかし…

新型コロナウイルスの感染拡大で全国の自治体で働く「非正規公務員」の現状はどうなっているのか。中国地方の自治体で働く60代の婦人相談員に電話で話を聞きました。

DVの被害に遭った女性や子どもの支援を行う仕事で、10万円の「特別定額給付金」の給付に関連する業務も担当しました。

夫から暴力を受けシェルターなどで暮らす女性が住まいがわからないようにあえて住民票を移していない場合もあります。このため、給付金がきちんと女性に届くように手続きを行う必要がありました。

同じく非正規の同僚2人と中心になって、これまでにおよそ50人の手続きを行いました。給付金を受けるために今の生活状況などについて一人一人、聞き取りなどを行い書類を作成しました。

手続きに伴う相談員の残業や休日出勤はおよそ20時間でしたが、その分の時間外手当は一切なかったといいます。

「公務員だから安定」住民からの苦情に…

新型コロナウイルスの影響で収入が激減するなど経済的に困窮している被害者も多いだけにできるだけ早く対応したといいます。

しかし、「申請書がいつになったら届くのか」とか、「何を相談しても事務的な対応だ」などという苦情があったといいます。
60代の婦人相談員
「正規職員と勘違いをしたのか、住民から『公務員だから安定していて相談者に寄り添った対応していなくても給料がもらえると思っているんだろう』と言われました。一生懸命やっているつもりでしたが、反省しました」
困っている人がいるからこそ、苦情もでるのだと思い、改めて自分の仕事に使命感を感じたといいます。

その一方で自分の仕事が正当に評価されていないのではないかという思いも強くしました。

非正規で働く相談員の1か月の給料は額面で17万円。自治体に新型コロナの対応に伴う時間外手当の支払いを要望しましたが、返事はないといいます。

“現場は対応ができる人が少ない”

別の自治体で同じく婦人相談員として働く50代女性にも電話で話を聞きました。

女性は婦人相談員としても5年以上のキャリアがありますが、1年ごとに契約を更新します。週5日働いて月給は額面でおよそ13万円。自身がDV被害者だった経験もあり、この仕事に使命感を感じていたことから、ほかにもアルバイトをしながら生計を維持してきました。

しかし、新型コロナウイルスの影響でアルバイト先が休業。生活をしていくことが困難になり、国の融資制度を使って4月と5月の生活費として20万円を借りることを余儀なくされました。

苦しい生活の中で、女性は10人ほどのDV被害者の「特別定額給付金」の手続きを1人で担当しました。これまで行政で把握できていなかった被害者がいることもわかり、休日出勤もして対応しました。行政の支援の大切さを感じるとともに人手不足を痛感したといいます。
50代の婦人相談員
「本当に困っている人はスピード感のある支援を求めていると改めて感じました。しかし、現場にはその対応ができる人が少ないんです。生活が成り立たない給料では人は集まりませんし、今のままでは緊急時の対応も難しいです」

地域医療を支えるために

地域医療を支える公立病院で非正規の看護師として働く50代の女性にも話を聞くことができました。この病院では新型コロナウイルスの感染者を受け入れているということです。週5日、一般外来で正規職員とほぼ変わらない業務を担当していますが、正規職員と給料などの待遇の差は大きいといいます。

この春の国の制度の見直しに伴い、待遇が悪化した非正規の看護師がやめたと話します。この病院でも人手が足りないといいます。

感染拡大に対応するため女性が働く一般外来から発熱外来に看護師を派遣。通常よりも少ない人数で対応しないといけないのでギリギリだといいます。現在は少し落ち着いたといいますが、これまで受診を控えていた人たちが病院に診察に訪れるケースが増えていて、人手が足りない状態は依然として続いているといいます。

また女性が働く一般外来では、患者を診察する際に着用する「サージカルマスク」は1日1枚とされています。「サージカルマスク」は感染症対策上、これまでは休憩などで一度外したらすぐに捨てるという対応を取っていたと話します。

感染拡大の第2波、第3波の可能性もあるなかで見えない感染リスクに恐怖心を感じながらも懸命に働き続けています。
非正規の50代看護師
「外来は、患者さんからきちんとお話を聞くために顔を向かい合わせて問診をします。誰が感染しているかも分からない中、見えない不安と戦っています。もし私が感染して、親や家族にうつしてしまったらという気持ちを持ちながらみんな働いています」

現場の声は…

東京のNPO法人「官製ワーキングプア研究会」が今月31日まで新型コロナウイルス対応の最前線で働く「非正規公務員」などを対象にアンケート調査を行っています。
これまでに現場から寄せられた声です。
(介護・福祉)
「相談電話が増えて業務量が増えても待遇は変わらない。残業をすることも認められていないので、一層ハードな仕事を強いられている」

(学童保育)
「毎日、感染リスクの不安と勤務超過で疲れがたまっている」

(保育所)
「仕事柄、近接や接触が避けられないところに感染防止の難しさを感じる。自分もかかるリスクを負いながら、勤務しなければならないところの心理的負担は避けられない」

(保健所)
「他の部署では待機の正規職員がいる中、不公平感を感じる。毎日不特定多数の人を対面で手続きし、家族にうつらないか心配だ」

住民の命と暮らしを守るためには

3年前から「非正規公務員」の取材を始め、これまでも現場で働く人たちの声や制度上の課題などについて伝えてきました。今回の取材でも「住民の命や暮らしを守るという使命感があり、今の仕事を選んだ」と話す人が多く、そうした人たちの存在があるからこそ私たちの生活が支えられているのだと感じました。

これまで全国の自治体では「非正規公務員」の割合を増やしコストの削減や業務の効率化を進めてきました。背景には人口減少に伴う自治体の財政難があります。

そうした流れの中で起きた新型コロナウイルスの感染拡大。自治体は住民の命や暮らしを守るために十分な対応ができるのか。緊急時のいま、そのことが問われていると取材を通じて感じています。