アメリカで死者10万人超える 世界全体の3割 新型コロナ

アメリカで死者10万人超える 世界全体の3割 新型コロナ
アメリカで、新型コロナウイルスに感染して死亡した人が10万人を超えました。1日当たりの死者数は減少する傾向にありますが、専門家は感染は今も広がっており、予防対策を怠れば死者の増加ペースが再び上昇するおそれがあると警鐘を鳴らしています。
アメリカでは、日本時間の26日午前7時の時点で、新型コロナウイルスの感染で亡くなった人が10万人を超えました。

世界全体の死者数のおよそ3割がアメリカに集中しています。

一時は2000人前後だった1日当たりの死者数は、ここ数日は500人前後に減っていますが、ジョンズ・ホプキンス・メディカル・センターのパナギス・ガリアツァトス医師は、NHKの取材に対し「感染は今も収まっていない。再び増加しても不思議ではない」と述べ、マスクをするなど予防対策をとり続けなければ、死者の増加ペースが再び上昇するおそれがあると指摘しました。

また、アメリカの民間の調査団体によりますと、今月26日の時点で、全米の40州と首都ワシントンの人口10万人当たりの死者数は、白人が22人、アジア系が24人、ヒスパニック系が24人であるのに対し、黒人が54人と、ほかの人種と比べて黒人の死亡率が2倍以上になっています。

この原因についてガリアツァトス医師は、在宅勤務ができない人が多く、感染するリスクが高い人が多いためだとしたうえで「黒人は高血圧や糖尿病などの病気の人も多く、感染した場合に重症化しやすい」と分析しました。

アメリカでは長年、人種の違いによる格差が大きな課題となってきましたが、新型コロナウイルスへの感染をめぐって、改めて人種間の格差が浮き彫りになっています。

死亡率 人種間の格差が浮き彫りに

アメリカで新型コロナウイルスに感染して死亡した人の内訳を見ますと、黒人の割合が際立って高く、人種間の格差が浮き彫りになっています。

専門家は、宅配業務やスーパーの店員など、在宅勤務ができない、いわゆる“エッセンシャル・ワーカー”が多いことが原因の1つだと分析しています。

アメリカの民間の調査団体によりますと、今月26日の時点で、全米の40州と首都ワシントンでは、人口10万人当たりの死者は、白人が22人、アジア系が24人、ヒスパニック系が24人であるのに対し、黒人が54人と、ほかの人種と比べて黒人の死亡率が2倍以上になっています。

また、感染がもっとも深刻なニューヨーク市が発表した調査によりますと、人口10万人当たりの死者数は、アジア系が100人、白人が106人なのに対し、黒人は214人、ヒスパニック系は225人と黒人やヒスパニック系の死亡率が白人の2倍に上っています。

この背景について、人種問題の専門家は「外に出て働く人が多く、その結果、高いリスクにさらされている」と述べ、スーパーの店員や宅配業者など、人々の生活を支える上で欠かせないいわゆる“エッセンシャル・ワーカー”と呼ばれる人たちが多いことが原因の1つだと分析しています。

また、医療保険に加入していない人の割合も高いと言われ、治療を受けづらいことや、糖尿病や心疾患などの病気の人も比較的多く、重症化しやすいという指摘もあります。

さらに、白人と比べて平均所得が低いことも関係しているとみられています。

黒人のあいだでは、すでに感染した人の割合が高いこともわかりつつあります。

ニューヨーク市で新型コロナウイルスの抗体検査を行ったところ、抗体が検出されたのは、市全体では19.9%だったのに対し、平均所得の低い人が多く住む地域では27%にのぼりました。

とりわけ住民の9割以上が黒人とヒスパニック系である市北部、ブロンクスのモリサニアでは、43%の人から、市の南部、ブルックリンのブラウンズビルでは41%の人から抗体が検出され、過去に感染していたことがわかったということです。

検査の結果について、ニューヨーク州のクオモ知事は、今月20日の記者会見で「低所得者向けの公営住宅に住む人は、人との距離を取るのが難しい」と述べ、人との距離がとれない狭い場所で生活していることが、感染が広がっている原因だという見方を示しました。

人種の違いによる格差は、アメリカ社会で長年、大きな課題となってきましたが、新型コロナウイルスへの感染をめぐって、人種間の格差が改めて浮き彫りになっています。

米の死亡率 世界各国と比べてみると

人口10万人当たりの死者数では、アメリカは世界で9番目に多く、最も多いのはベルギーとなっています。

ジョンズ・ホプキンス大学によりますと、26日時点の人口10万人当たりのアメリカの死者数は30.23人で、世界で9番目に多くなっています。

最も多いのは
▽ベルギーで81.72人、
次いで
▽スペインが58.04人、
▽イギリスが55.84人、
▽イタリアが54.53人、
▽フランスが42.59人、
▽スウェーデンが40.51人などとなっています。

また、日本の10万人当たりの死者数は、アメリカの45分の1にあたる0.67人、中国の死者数は0.33人です。

アメリカでここまで死者が増えた要因については、さまざまな指摘がありますが、感染症の専門家は初期の段階で、検査キットに問題が生じるなどして感染の広がりが十分に把握されず、隔離措置などの対策が徹底されなかったことも影響していると分析しています。

さらにアメリカ国内では、トランプ大統領が感染拡大を過小評価してきたことが、感染拡大を招く要因となったという批判も出ています。

ニューヨーク・タイムズなどは、コロンビア大学の公衆衛生の研究者チームによる初期段階の分析結果として、3月中旬に各地で始まった外出などの制限が、もし1週間早く始まっていれば、およそ3万6000人の死亡が防げた可能性があると伝えています。