帰国した留学生 アメリカの大学が支援 新型コロナ

帰国した留学生 アメリカの大学が支援 新型コロナ
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新型コロナウイルスの影響で海外から帰国を余儀なくされた日本の留学生に学ぶ機会を提供しようと、今週からアメリカの大学の日本校が帰国した学生たちにも門戸を開き授業を受けられるようにしました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外務省は海外への渡航中止を勧告したり、自粛を要請したりしていて、海外の大学などで学んでいた日本の留学生たちが相次いで帰国を余儀なくされています。

こうした中、東京 世田谷区にあるアメリカのテンプル大学の日本校は、今週からオンラインで再開した授業を帰国した留学生たちも特別に受けられるようにしました。

大学では学部生の6割近くが海外出身で、授業は英語で行われ、取得した単位はほかの大学の単位としても認められる場合があります。

初日の授業を受けた貞永真友子さんは、去年9月からアメリカ中西部のオハイオ州の大学で心理学を学んでいましたが、寮が閉鎖されたため、ことし3月、いったん日本に戻りました。

帰国してからもオンラインで現地の授業を受けていましたが、時差のため昼夜逆転の生活を強いられたということです。

来週以降、校舎での授業が始まる予定で、貞永さんは「留学を中断しなければならなかった学生にとって、英語力を保つことができ、救済措置になるいい環境だと思います」と話していました。

テンプル大学ジャパンキャンパスのブルース・ストロナク学長は「私たちの多様な授業や環境はふだんアメリカで学ぶ日本の学生にとってなじみやすく、有意義なものになると思う」と話しています。

帰国後 経済的に困難する留学生も

日本学生支援機構によりますと、「海外留学支援制度」で国の奨学金で留学していたおよそ3300人の学生のうち、7割以上に当たるおよそ2400人が新型コロナウイルスの影響で帰国、または今後、帰国予定だとしました。

このほか、留学の相談に乗っているNPO法人が先月、事業者を対象に行ったアンケートの結果、およそ1250人が途中帰国や留学の解約を余儀なくされたということです。

中には帰国後、経済的に困難な状況に追い込まれている留学生もいます。ことし2月からドイツの大学に留学していた20歳の女子学生は現地で授業が始まってわずか5日後に休校となり、3月末に帰国を余儀なくされました。

帰国のための航空券代が12万円かかったほか、荷物を残してきた現地のシェアハウスの家賃は7月の契約分までおよそ20万円に上るということです。

再び渡航できる時期が見通せない中、いったん日本の大学に復学したため、留学していれば支払う必要がなかったおよそ50万円の学費もかかり、この1か月間はほぼ毎日、スーパーなどでアルバイトを続けています。

女子学生は「ドイツにいれば語学の勉強をはじめいろいろなことができたのに、憧れていた未来とは全く違うものになってしまいました。事態が収束してからまた留学しようと思っても、その分の学費をどうするかなど今までの想定がすべて崩れてしまいました」と苦しい胸の内を明かしました。

留学生支援の動きは

帰国後の留学生たちを経済的に支援するため日本学生支援機構は文部科学省などの留学支援制度の奨学金で留学していた学生を対象に10万円の災害支援金を支給することを決めました。

ただし、留学先の国や地域が検疫強化対象地域として指定された日以降に帰国したことが支給の条件となっていて、新型コロナウイルスの感染者が去年から確認されていた中国でも、ことし3月9日以降に帰国した学生しか対象になりません。

学生たちからは条件の見直しを求める声が上がっていますが、日本学生支援機構は「検討の上で条件を設定している」として、今のところ見直す予定はないとしています。

一方、私費などで留学し、帰国した学生たちを民間で支える動きもあります。奨学金を紹介するウェブサイトの運営などをしている都内の企業はクラウドファンディングで一般から支援金を募り、27万円余りが集まりました。

企業のもとには航空運賃の高騰で帰国できない留学生など25人から支援の希望が寄せられ、書類選考や出資者との話し合いの末、今月、4人に最大で10万円を支給し、今後、2回目のクラウドファンディングも検討しているということです。

留学の相談に乗っているNPO法人「留学協会」の津吹一晴理事長は「現在、国の支援は文部科学省などの奨学金で留学していた学生だけが対象になっているが、今や留学の形は多岐にわたっている。国にはすべての留学生に対し、留学に再挑戦する費用も含め、支援をお願いしたい」と話していました。