「はとバス」 観光ツアーの再開に向けて準備進める 東京

「はとバス」 観光ツアーの再開に向けて準備進める 東京
緊急事態宣言が解除される見通しとなる中、バスツアーを休止していた「はとバス」が、ツアーの再開に向けて車両の点検など準備を進めています。
東京の観光バス会社「はとバス」は、先月、緊急事態宣言が出てから、都内の観光地をめぐるすべてのバスツアーを休止しています。

緊急事態宣言がすべて解除される見通しとなる中、東京 大田区にある車庫ではツアーの再開に向けて、観光バスおよそ130台の点検が順次、始められています。

25日は運転手がタイヤやオイルなどの確認や車両を洗車したほか、車庫の周辺を走行して運転の感覚を取り戻していました。

会社によりますと、新型コロナウイルスの影響で、ことし2月から先月までの観光バスの売り上げは、前の年の同じ時期と比べておよそ23億円、率にしておよそ80%落ち込んでいるということです。

会社では来月13日から、都内をめぐるツアーの再開を予定していますが、当面は屋根のないオープン型のバスを使用し、座席数をこれまでの半分に減らすなど、感染防止対策を徹底することにしています。

運転手の原田大輔さんは「1か月以上ハンドルを握っていなかったので不思議な感覚でした。しっかりと準備したい」と話していました。

広報室の石川祐成室長は「売り上げへの被害は深刻。再開してもすぐに多くの利用者が戻るとは考えにくく、厳しい状況が続くが、少しずつでも回復するよう取り組みます」と話していました。

貸し切りバス業界 厳しさ続く

貸し切りバス業界では、当面は観光の需要が戻らず、今後も厳しい経営が続く見込みで、経営者からは収入の減少が長く続き、このままでは事業を廃止せざるをえないなどという声が相次いでいます。

国土交通省が4月末に全国の貸切バス会社64社を調査したところ、9割を超える59社が、5月の運送収入が前年の同じ月と比べて70%以上減収する見込みだと回答しています。

また、6月についても、8割を超える54社で収入が70%以上減る見込みと答えたほか、バスの稼働率もわずか5.9%と、ほとんどの車両が動かない見込みだと回答しています。

国土交通省では、こうした状況から、貸し切りバス業界全体の1か月当たりの運送収入は、前年のおよそ480億円のうち9割の430億円減少していると推計しています。

また、新型コロナウイルスの影響で4月に、国土交通省に貸し切りバス事業の廃止を届け出た会社は9社、休止を届け出た会社は10社で、これまでに廃止や休止を届け出た会社は合わせて43社に上っています。

首都圏のバス会社の経営者からは「国の支援策でなんとか確保できた資金も収入ゼロが長期間続き、あと1か月で底をつく。負債ばかりが膨らみ、このままでは倒産せざるをえない」といった声や「外国人旅行客の見通しが全くたっていないため、運転手など20人以上解雇した。最終手段として自己破産も検討している。自分自身の家族のためにアルバイトを始めた」などの悲痛の声が上がっています。

また、資金を捻出するため、バスの売却を検討したという経営者は「全国でバスの売却依頼が殺到していて、価格がこれまでの半値以下になっている。バスでの新たな事業は考えにくく、八方ふさがりだ」と話していました。

全国のバス会社でつくる日本バス協会は「観光バスは、新型コロナウイルスの影響が最も早く表れ、戻りは最も遅い。観光需要が戻るのを待つしかなく、緊急事態宣言は解除されても、引き続き厳しい状況だ」としています。