withコロナ withマスクの時代に

withコロナ withマスクの時代に
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、私たちの暮らしに一気に浸透したマスク。マスク不足が深刻になったなかで最近は多様なデザインや素材のマスクも続々と登場しています。一方、マスクを着けることが“常識”となることに違和感や苦しさを覚える人たちもいます。

続々登場 “おしゃれ”マスク

まずは各地で登場するさまざまなマスクから。
こちらは、俳優の香川照之さんが先日、東京 渋谷区の国立青少年教育振興機構に寄贈した子ども用の布製マスク。デザインされているのはてんとう虫やかまきりなど。
昆虫好きで知られる香川さんのもとに、「子どもがマスクを着けるのを嫌がるのでかわいいマスクを作ってほしい」という声が相次ぎ、みずからがプロデュースするブランドで作ったそうです。さすが、カマキリ先生。子どもの心をくすぐりますね。

一方、こちらは繊細なレースに縁取られた大胆なデザインが話題のマスク。富山県氷見市の縫製メーカーが手がけました。
ブラジャーのカップに使う、繊維を織らずにシート状に加工した「不織布」を使っています。

この会社では、新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが不足する中、地元の氷見市役所から相談を受けてマスクの製造に乗り出し、3000枚を納品。さらに一般向けにレース付きのデザインのものなどを販売したところ、SNSで話題となり、これまでに販売したマスクの累計はおよそ4万枚に上るそうです。
縫製メーカー「あつみファッション」の担当者
「使った人からは『使い心地がいい』『苦しくない』といった声が寄せられています。男性も自分用かプレゼント用かわかりませんが、購入してくれています」
マスクをファッションの一部として、暮らしに取り入れてもらおうという動きもあります。

海外のコレクションブランドで経験を積み、現在、東京を拠点に活動しているファッションデザイナーの江角泰俊さんはマスク不足をなんとかしたいと自身のブランド「EZUMi」でマスクを制作・販売しています。
2020年の春夏コレクションで使ったチェック柄の生地を使ってネットで販売したところ、すぐに100枚が売り切れ、さらに追加注文が入ってるといいます。価格は1枚3300円と決して安い値段ではありませんが…。
ファッションデザイナー 江角泰俊さん
「その日の洋服や気分に合わせて着用できるマスクを求めている人が多いんだと思います。外出自粛できちんとした服を着たり、おしゃれをしたりする機会が減ったことでストレスを抱える人も多いと思いますが、マスクをファッションの一部として楽しむことで前向きに日常を送れるようになればと思います」

マスクと日本人 長い歴史

マスクと日本人。今回の新型コロナウイルスの感染対策によってその関係が新しい段階にきていると指摘する専門家もいます。
秀明大学 堀井光俊教授
「そもそも日本ではマスクは医療的な面だけでなく、儀礼(エチケット)という意味を含んでいるのではないでしょうか。『仕事でスーツを着る』ように新しい生活習慣として根付いていくかもしれません」
こう指摘するのは「マスクと日本人」の著者でマスクの歴史などに詳しい秀明大学の堀井光俊教授です。

堀井教授によると日本人とマスクの歴史は明治初期には始まっていたそうです。その後、大正時代にスペインでインフルエンザが流行したことで予防対策として日本でも多くの人がマスクを着用し、戦後も世界でインフルエンザの大流行があるたびに白いガーゼマスクが使われるようになっていったということです。

1960年代になると花粉症が社会問題化し、当時は薬の副作用への懸念があったことから感染症だけでなく花粉症対策としても活用され、市場規模が拡大していきました。

目的は変化 今では「責任回避」の意味合いも

2011年ごろになるとさらにそれまでの医療的な意味とは離れて、使われ始めます。「だてマスク」です。周囲からの視線を気にしなくてすむなどの目的で使われ始めたそうです。
そして、今の新型コロナウイルスの感染拡大の中では、手洗いなどの予防対策と違い、マスクを着用していれば、誰から見ても感染予防に注意を払っているとわかるので責任回避の意味も含んでいると指摘しています。

強烈な同調圧力に疑問の声も

「マスク着用は当たり前」の世の中に違和感を持つ人の意見もSNS上では少なくありません。
「夕刻、買い物に出た。マスクを忘れたことにはすぐ気付いたけれど、取りに戻らなかった。すれ違う人はすべてマスク、何だか、パンツを履き忘れたような気分、強烈な同調圧力を感じた」
「飛行機だけじゃなく、電車や新幹線なんかも全部マスク必須とか言い出しそう…最悪です。素顔で出歩ける日はもう来ないのか…」
「そのうち、マスクをしてないだけで、テレビとかネットとかで叩かれそうですね。息苦しい世の中になりましたね」

非常時に顔出す「厳しい世間」には注意

九州工業大学の名誉教授で「世間」評論家の佐藤直樹さんは、現在の状況をどのようにみているのでしょうか。
九州工業大学名誉教授 佐藤直樹さん
「日本には、3人以上の日本人が集まって空気や雰囲気でルールが作られる『世間』が昔から存在します。各家庭では『世間に迷惑をかけない人間になれ』と教えられ、“自粛”や“要請”ということばだけで、多くの人がきちんとルールを守るという『優しい世間』がいい効果をもたらすこともあります。一方で、コロナ禍という非常時において平常時には表面化しない『厳しい世間』が顔を出してしまうと同調圧力が肥大化し、マスクをしない人に向かうこともあります。厳しく、細かくなり過ぎる世間のルールを緩めていくことも大切だと思います」
確かに、自分はマスクをしているのに他の人が着けていない、といらだった経験がある人も少なくないと思います。

病気でマスクをつけるとつらいという人も…

さまざまな理由で長時間にわたってマスクを着けて外出するのは、難しいという人もいます。
もぐぱくさん
「使い捨てマスク。布マスク。皮膚に何かが触れているだけでもかゆくなるのです。マスクを1日していて、外したらマスクの形に赤くなっているのです。赤くなるぐらいならいいけど、かゆみが半端ない。顔全部がかゆくなります」
自身のブログにそのように書いていたもぐぱくさんとメールでやり取りしました。もぐぱくさんは、先天性の魚りんせんという皮膚の病気があり、ふだんからマスクのままでいるのはつらいといいます。

「マスクをしていて、いちばんつらいのがかゆみです。また、病気の特性で体温調節が難しく、身体に熱がこもりやすいので、夏場はマスクなくても平熱が37度、つけると37.5度にあっという間に到達してしまいます。のぼせてしまって鼻血が出ることもあるので大変なんです」と話しています。

そのうえで、今、外に出るときなどはどうしているか聞くと。
もぐぱくさん
「だからといって現状ではマスクを着けない訳にいかないので、『耳が痛くなりにくい』『やわらかい』といった表記のあるマスクを選んで購入しています。でも、気に入るマスクは正直ありません。手作りマスクであっても、どれを着けてもかゆみはなくならないんです。口だけ覆えるようなマスクや、扇風機の機能がついたマスクがあると楽になると思うのですが…」

マスクを外してともいえない

さらに、多くの人がマスクを着けるのが“当たり前”になったことで、日頃の生活に支障をきたしているという人もいます。口の動きや表情などから話している内容を推測しながらコミュニケーションをとっている聴覚に障害のある人たちもそうです。

自身も、聴覚に障害のあるとらっこさんは、みんながマスクをしていることの不便さや、そうした中でも周囲の人がしてくれる工夫への感謝などの思いをまとめた漫画をインターネット上に公開、反響を呼びました。
とらっこさんは漫画を書いた理由について、「今の状況ではマスクを外してもらうことを気軽にお願いするのは難しいと感じています。大切な情報ツールを失うのは聴覚障害者にとってはつらいものですが、『こういう実情がある』と知っていると、その当事者と関わることになったときに、お互いが少し楽になれるのでは思い、描いてみました」と話しています。

先日も、とらっこさんがコンビニに行ったときに、ポイントカードをトレイに置いたのに読み取ってもらえず、何かを言われたのですが店員さんがマスクをしていて、内容が分からなかったといいます。

そして店員さんが手をひっくり返すしぐさをして初めて、コロナ対策でカードに触れないようバーコード面が見えるように置くという意味だと気付いたそうです。

そのうえで、とらっこさんは「マスクを外してもらうのは難しいと思うので、日常の会話に、指差しや身ぶり手ぶりを少し入れたり、文字情報を提示したりすることで助かる人もきっとたくさんいらっしゃると思います。お互いが安心して生活できるような方法を一緒に考えていきたいです」と話していました。

他人を思う気持ちも…

「withコロナ」の生活の一部になりつつあるマスク。感染拡大の第2波、3波が懸念される中、今後もその必要性は変わりませんが、コロナ後の社会では感染を広げないことに加え、他人を思う気持ちも同時に根付いていってほしいと思います。
(ネットワーク報道部記者 大石理恵・高橋大地・松井晋太郎・目見田健・和田麻子)